191話・俺の幼馴染と妹の排除作戦
「あ、ナナさんじゃないですか?どうしてここに?」
話かけてきた人物...コウの幼馴染のナナがその場にいる事に、
ミルがハテナ顔をして不思議がる。
「私は委員会の仕事もやっていてね、ここにはクエストでもらう報酬の
お金とアイテムを持って来た......って、そんな事はどうでもいいわ!
それより、コーの事よ!あいつがスタンピートの渦中にいるって本当なの!?」
ミルへここに来た理由を答えていると、先程のミルと購買部のお姉さんの
会話をナナが思い出し、それを問いただす。
「ええ...本当ですよ」
ナナの問いに、困惑と戸惑いの入り混じった表情のミルが静かに
頭を下げる。
「本当ですよ...って、ミルもコーと一緒にいたんでしょう?だったら、
何であいつと一緒に戻ってこなかったのよ?」
「お、落ち着いて下さい!?わ、私だってそうしたかったのは山々だったけど、
コウにぃの『例のあれ』が発動しちゃったんですよっ!?」
「いつもあれって、まさか......」
「はい、いつもあれ...ゴブリンの棍棒ですよ...」
ナナが問い詰める様にミルの両肩を掴んで前後左右に揺らすと、ミルが苦笑を
こぼしながら、コウのいつもの発作を口にすると「なるほど...あれか...」と
納得する。
「しかしだからと言って、スタンピートのゴブリンに突撃するだなんて...
これは少し洗脳が過ぎたみたいだね......」
「はは...ですね。女性受けが悪い武器、棍棒。そしてその中でも最たる
頂点に君臨する棍棒、その名は...」
『ゴブリンの棍棒』
「これを装備していれば、コーに近づく不貞の輩を排除できる...そう思って、
私とミルが毎日囁くように棍棒の素晴らしさを語って聞かせた結果が...」
「あれです...。まさか、私達までも引いちゃうLVでハマっちゃうとは...
計算外もいいところですよ...」
コウがまだ小さかった頃、ナナとミルがコウに言い寄ってくる女の子どもを
どうやって排除するか...その数ある排除作戦のひとつ...
『コウの得意武器をゴブリンの棍棒に変えちゃおう!作戦』
まさか、これがコウのインスピレーションとガッチしてしまうとは、
流石の天才の二人の想像にも追いつかず、いつの間にか後戻り出来ない
くらい、コウはゴブリンの棍棒へと、どハマりしてしまうのだった。
「本当に参りました...」
「そうだね...流石にヤバいと思い、何とか元に戻そうと躍起になったけど、
あそこまでいくと、もう後の祭りだったもんね......」
ミルとナナがそのコウのゴブリンの棍棒愛の果てを思い出すと、お互いに
目線を合わせ、ニガ笑いをこぼす。
「まぁ...慣れてしまえば、棍棒の選定は楽しいんですけどね♪」
「そういうポジティブな思考、あんた達兄妹って本当に似ているよね?」
ミルがコウと一緒になって、ゴブリンの棍棒を魔改造している光景を
ナナがふと思い出すと、その表情にニガ笑いが浮かぶのだった。




