19話・俺に二人の立候補
「ん...?所でその子は誰なんだい?もしかして、コウの恋人さん...かな?」
「ここ、恋人っ!?ちち、違います、違います!私とコウ君はただの
パートナーってだけですっ!」
カノンの彼女発言に、クーナがアワアワしながらそれを否定する。
「うう...そこまで力強く、否定しなくても...。そりゃ俺と恋人に見られるのが
嫌なのはわかるけどさ...」
クーナのハッキリと否定する言葉を聞いて、コウが頭を垂れる。
「違います!それも違うんです!嫌って言うか、寧ろその逆で...ゴニョゴニョ」
コウのガッカリ表情を見たクーナが、今言った言葉を慌てて修正しようとするが、
恥ずかしさから、最後の語尾が尻窄みになる。
「そっか...キミは恋人さんじゃないんだ...。うむ...それじゃあ、私がコウの恋人に
立候補...するぞ!」
「へっ!?」
カノン先輩が挙手するように手を天にビシッと上げて、恋人候補宣言を口にする。
「い、イヤだな...カノン先輩ったら、そんな冗談を言って...本気にしちゃうじゃ
ないですか...はは」
「ん...冗談?私は真剣な話の時に冗談は言わない...タチ。だから、今の言葉は
めっちゃ...本気!」
カノンが真面目な表情でコウの顔をジィィッと見ると、コウの言葉を
否定する。
「ほ、本気...!?」
あの憧れの存在、カノン先輩が俺の恋人に...っ!?
う、嘘だろ...。だって、あのカノン先輩だぞ...引く手あまたの存在の
あの白銀の魔法騎士の!?
そ、それが、お、俺の恋人に...しかも、あっちの方からだぞ!?
「それで...どうなの?恋人にしてくれる?それとも...ごめんなさい?」
「ええ...!もう、決定しなきゃいけないんですか!?」
参ったな...。恋人になろうっていう重大な選択をこんな短い時間で
決めちゃうのは、優柔不断の俺では中々決められないと言うか......。
「ん...その決定はそんなに時間がかかるものなのか...?あ...やはり、私じゃ、
恋人としては充たないと?」
コウの言葉を聞いて、カノンがトボトボした表情して落ち込んでしまう。
「そ、そんな事はありません!」
あるわけがないじゃないですかぁぁっ!
お、おのれ...ヘタレ心のやつめ、俺の即決定を邪魔しやがってっ!
クソォォッ!負けてたまるかぁぁぁ―――っ!!
俺はそんな心を奮いたたせるかの様に、気合いを注入しいく。
よ、よし...決めたぁぁぁぁ―――――っ!!!
「そ、それじゃ...カノン先輩!俺と恋人になっ――」
「ち、ちょっと待ったぁぁぁっ!その恋人候補に、わ、私も参加しますっ!!」
コウの決断の言葉を遮って、クーナがビシッと天を突く様に手を上げると、
自分も恋人候補にと、立候補の名乗りをあげるのだった。