182話・俺の交渉術
精霊のギフト技...『精霊憑依』
これは精霊であるセティと俺がシンクロをする事で、俺とセティの
能力が融合し、身体能力...即ち、ステータスが何倍にも跳ね上って
くれる技なのだ。
シンクロが高くなればなる程、このステータス上昇値はどんどんアップして
いくらしい。
「そ、それで...どうかな?」
『どうかなって...つまり、スタンピードで進行してくるゴブリンの
大軍勢に対し、私の精霊憑依を使えば勝てるか、どうかって事だよね?』
セティがハテナ顔をして、コウの述べた問いを聞きなおす。
「はは...お、俺のステータスじゃ、流石に無理―――」
『―――勝てますよ?』
「あはは...や、やっぱりか。だよよなぁ~♪俺のステータス如きじゃ、
脅威とされるスタンピードに、勝てるわけがないかぁ!」
「いやいや!私は勝てるって、言ったんですけど!」
できると宣言したのに、全く人の話を聞いていないコウに、慌てて
セティが言いなおす。
「ええぇぇ!勝てるの!?」
『はい。勝てますよ!』
信じられんと言わんばかりにビックリしているコウへ、セティが...
『コウの隠しステータスをベースにすれば、十分いけると思います♪』と
述べる。
「そっか!やれるんだ、俺の力でも!」
『はい。精霊憑依を使用すれば、恐らくコウが前に死にかけたという、
あのユニークモンスターのポイズンベアを軽く凌駕できる程には、
パワーアップすると思うよ♪』
「ええぇぇっ!?あ、あのポイズンベアを...マ、マジでかっ!?」
『マジです!』
コウの驚きに対し、したり顔をしたセティが、鼻高々に自分の精霊憑依を
自慢してくる。
「おお、すげぇ!そ、それじゃ早速、精霊憑依を頼―――」
『でも、絶対にやりませんけどね!』
「ええぇぇぇぇ!な、何でぇぇっ!?」
喜びも束の間、あっさりやらないと断りの言葉を吐くセティに
目を丸くして喫驚する。
『何でぇぇっ!?...じゃ、ありません!妹さんを危険に巻き込む気は
私にはありませんので!』
「あ、あいつなら大丈夫だって、俺なんかより何十倍も強いんだぞ!」
『妹さんがいくら強くても、数の暴力でやられる可能性も否めません!』
コウが懸命に説得してくるが、セティは全く聞く耳を持っていなかった。
「だ、だったら、ミルを連絡係として先に返して、俺ひとりだけで
行くっていうのは!?」
『う~ん、それなら...大丈夫ですが......』
「よし!そんじゃ、早速ミルを学園に―――」
『でも、だからと言って、コウには協力しませんよ?』
「ええぇぇっ!?な、なんでだよ!?ミルがいなかったら、
大丈夫って言ったじゃんかぁぁっ!」
セティのまさかな否定的発言に、俺は納得いかないと激おこで
頬を膨らませる。
『私は大丈夫としか言っていませんよ!大体、もし精霊召喚が失敗したら、
コウに待っているには死...なんですよ。そんなの...絶対に容認できる訳が
ないでしょう!』
怒る様に文句を述べるコウに対し、セティがド正論の言葉を叩き込む。
「まぁ...一番やりたくない理由は、面倒くさいからなんですけどね!」
コウには聞こえないくらいの、か細い声でセティが本音をポロッと
洩らす。
その時!
「ふ...なら、精霊憑依の報酬に、ターニン名物高級フルーツ盛り合わせ
プリンアラモードで......どうだ?」
コウは真面目な表情を浮かべて、この言葉をセティに聞かせるのだった。




