18話・俺が想像するカノン先輩の理想像
クーナさんとの会話から数時間が経ち、カノン先輩との待ち合わせの
時間、放課後がやってきた。
そして体育館内にあるフリーグラウンドで、俺はカノン先輩が
来るのをドキドキで心待ちしていた。
「遅いな、カノン先輩...」
もしかしたら...あれって、カノン先輩のお茶目なリップサービス
だったのかな?
イヤイヤイヤ、カノン先輩に限ってそれはない...!
だって、あれだけ自信満々な顔で、指導をって言ってくれていた
じゃないか!
なのに、その約束を破るカノン先輩の想像が俺の心ではできないと
いうか......
...とは思ってみるものの...俺って、カノン先輩の内面の性格を
知っているわけじゃないしなぁ......
あのキラキラした輝きとは裏腹に、本当の性格は表とは全く程遠い
黒い性格の持ち主の可能性も否めない......
イヤイヤイヤ!それはない!多分ない!いいや、絶対にないっ!!
俺の目に映ったあのカノン先輩が、そんな邪悪な面なんぞを
持っていようはずがない!
俺は自分自身にそう言って聞かせると、再びカノン先輩が来ないかと
フリーグラウンドの出入りの方に目線を向ける。
でも...遅いな...カノン先輩。もう約束の放課後タイムから、30分くらい
経っているよ......
「早く来ないかな......」
俺がそんな不安と心の中で戦っていたその時、フリーグラウンドの
出入り口の方から、バタバタと不器用な動きと音をたてて走ってくる
カノン先輩が俺の目に映る。
「ごめん...コウ。ここに来る前に、ちょっと用事ができて...それで
時間がかかった...」
「いえいえ、俺もさっき来たばかりですから、気にしないで下さい!」
「そ、そうなの...それなら、良かった...」
コウの言葉を聞いて、カノンがホッと安堵する。
「ふ~ん、コウ君は30分以上待った事を少しって言うんだ?」
コウのカノンへ対する恍惚な態度に、少し嫉妬を含んだジト目をして
クーナが呟く様にそう述べる。
「う...社交辞令だよ、社交辞令!いくら俺でも空気は読むって!」
俺は慌ててカノン先輩に聞こえないくらいの声でクーナさんへ
必死な言い訳を述べると......
「うふふ...冗談ですよ、あんまり目を輝かせてカノン先輩を持つもの
だから、ちょっとした意地悪です♪」
クーナがクスクスと屈託のない笑顔浮かべ、冗談と言わんばかりに
可愛く舌をペロッと出してくる。