178話・俺と妹がクエスト
俺は購買部に設置されているクエストボードの前に立って、
ある依頼がないか探していた。
【ゴブリン討伐】
場所は東の森
討伐数...5匹
報酬...大銀貨1枚、銀貨2枚
「お、ゴブリン討伐クエスト!今日もあった♪」
俺はそのクエスト依頼書を、喜び勇んで剥ぎ取った。
「ふふふ...今日こそ、究極のゴブリンの棍棒を手に入れる...
その後は頼んだぞ、ミル!」
「うん、私にまっかせてよ~♪必ず、コウにぃの為のコウにぃによる、
コウにぃだけの究極のゴブリンの棍棒...通称【ゴブさんの棍棒】を
作って見せますよ!」
コウからサムズアップされると、ミルもドヤ顔でサムズアップを返す。
「そう言えば、ナユユちゃん達はどうしたんだい?」
「ん...あの二人は学園の用事があって、そっちをすませなきゃいけないん
だってさ!」
コウの素朴な問いに、ミルがナユユ達は学園事情の用事でいないと答える。
「そっか。お前達って、トルエ学園の使者としてきているんだったっけ?
......あれ?じゃ、なんでお前はここにいるんだ?」
「ギクッ!?そ、それはその...あはは...さ、さぁ!ゴブさんの棍棒を
パワーアップさせたいんでしょう!なら、早く行って多くを狩らなきゃ!」
「お、おい!?そ、そんな強引に引っ張るなって...転んじゃうだろう!?」
いきなり図星を突かれ慌てたミルが、俺の肩をポンポンと何回も叩いて
作り笑いで誤魔化すと、そのまま俺の腕を引っ張って、東の森へと
急ぎ移動して行く。
東の森...
「ふう...やっと、東の森についたな!さてさて...今日こそ、究極の
ゴブさんの棍棒を求めて...ゴブリン討伐をしますか!」
そして今度こそ、誰の目をも魅了し、誰にも嫌われる事のない、
究極最強のゴブさんの棍棒を作ってやるっ!
『はぁ...まだあの汚らしい棍棒を忘れてなかったとは......』
「汚らしいって言うな!大体、またゴブさんの棍棒を作る羽目に
なったのはお前のせいだろうが!お前のっ!」
俺は持っていたカタナに向かって、目を見開いて激おこする。
『だって、あんなしょうもないクソみたいな武器を私の依り代にしようと
するからですよ!』
「お、お前...自分の立場を棚にあげて、凄い言い方だな...」
「あ、あの...コウにぃ、な、何をそんなに大きな声でひとり事を言って
いるの?」
大きな声でひとり事をしているコウを見て、ミルが若干引き気味に
眉をひくつかせている。
「あ...す、すまん、すまん!ちょっとゴブリンの棍棒をどうキレイに
手に入れようかと画策していた!」
「ああ...あいつらって、棍棒を結構乱暴に扱うもんね!」
コウの説明を聞いて、ミルがなるほどとポンと手のひらを叩き、
その事を思い出す。
「そうそう...だからさ、それをどうすべきかと、シミュレートをして
いたんだよ、あは...ははは!」
俺は何とかセティとの会話を誤魔化し、その口からニガ笑いを
洩らすのだった。




