177話・俺と妹が哀愁に浸っていた頃
コウとミルがナナの事で哀愁に漂っている頃...
コウの家から少し離れた場所にある広場へ、ドリルの巻nき髪を
なびかせながら走ってくる少女がいた。
「す、すいません...!少しいざこざがありまして、遅れしまいました!」
広場中央にあるベンチで寛いでいた、一本の大きなみつあみをしている
女性に、遅れてきたドリル髪の女性が、慌てた口調で謝罪する。
「気にしないで下さい。私もそんなに待ってはいませんでしたので。
それにミルさんがお相手では、遅れるのもいたしかたない事です」
「ハッ!ありがたきお言葉、痛み入ります!」
みつあみの少女が、自分のみつあみを触りながらニコリと微笑み
それを許すと、ドリル髪の少女が素早く片膝をついて感謝する。
「それで今日のミルさんを見て、貴女的にどこか変わったと思う所は
ございましたか?」
「そう...ですね。私が見た感じでは、恐らく...異常はないと...思うの...
ですが......」
「ですが...?」
「ミルさんがお兄...コウ様にいつもはどの様な接し方をなさっていたのか、
正直あまりよく知りませんので、あれが本当に二人の普段のやり取りなのかと、
多少の疑念が生じています...」
ドリル髪の少女が、今日のコウに対するミルのイチャイチャ加減を思い出すと、
かなり困惑した表情に変わる。
「はは...やっぱり、あんたもそう思っちゃうか!あそこまでいっちゃうと、
兄妹と異常の線引きが難しいよね...って、コホン!難しいですよね...」
「それで、これからどうなさいますか?今日の出来事をそのまま国へ、
ご連絡いたしますか?」
みつあみの少女へドリル髪の少女が、神妙な面持ちでそう問いかける。
「流石に今日だけの結果で決めてしまうのは、いささか早計でしょうね。
なので、ギリギリまでこの現状維持でいきたいと思います...それでいい
ですね......ナユユ!」
「ハハッ!女皇帝様の仰せのままに!」
ドリル髪の少女...ナユユが頭を下げ、女皇帝にかしずいた。
「ハァ...しかし、ミルさんも飛んでも行動に出ましたよね...」
「はは...そうですね。突如、「今から、お兄ちゃんに愛の告白を言ってくる!」
...ですものね!」
ナユユが深いため息を吐くと、それに同調するように女皇帝がニガ笑いをこぼす。
「しかも神具LVの転位移動のマジックアイテムをいつの間にか作っていて、
しかも作った理由が「そのお兄ちゃんに速攻で会いに行く手段の為」ですものね。
ビックリを通り越して、呆れてしまいます...」
その時の様子を思い出している、ナユユが頭を抱えてやれやれのポーズを取る。
「クスクス...そうだよね。ミルのあの一直線な行動力は、一体どこからくるん
だろうね♪」
「笑いごとではありませんよ、女皇帝様!そのミルさんの突拍子もない行動の
せいで、帝国のどれだけの偉い方々が連続徹夜で軌道修正を行ったと
思うですか!」
悪気のない笑顔で微笑むロイエに、ナユユが膨れっ面でプンプンと怒っている。
「とにかくこの数日間、今の体を守りつつ、ミルさんが危険に巻き込まれない様、
しっかりと見張って下さいね、ナユユ!」
「ハハッ!私の全てをかけてその任を全うし、そして必ずやミルさんを
お守りする事を誓いますっ!」
女皇帝の勅命的な言葉に再びナユユが片膝を突いて、頭を深く垂れるのだった。




