173話・俺がヒドイ目に合っていたその頃...4
「ぶう...あの子ばかりズルいですよ、主様!」
ショートボブヘアの少女が膨れっ面でプンプンと激おこして、少年に自分も
可愛がれと抗議する。
「はは...しょうがないじゃないか...少しだけど、ようやくあの子の
『絆の楔』が目覚め始めてきているんだ...これを喜ばずにはいられないん
だよ!」
「むむ...本当、主様って、昔からあの子の事をお気に入りですよね~!
それで何度、私が嫉妬狂いで死にそうになったか、わかりますか?」
少年の贔屓に対し、金髪の少女がジト目でジィィーッと睨んでくる。
「ほらほら...そんなに拗ねない、拗ねない。後でタップリと可愛いがって
あげるからさ!」
「うわ!本当ですか!言質は取りましたからね!後でなしは駄目ですからね!」
少年がそう言ってウインクをすると、ショートボブヘアの少女が屈託のない笑顔に
変わり、両手をブンブンと降って、約束は破らないようにと注意を促してくる。
「さて...2つ目の宝玉も手に入れた事で、いよいよあの子の『絆の楔』が
発動してくれるかな...?ああ...今から楽しみだな~♪」
手に持ってた先程の宝玉をジィィーッと見つめ、少年の口角がニヤリと上がる。
「あの子...?ああ、はいはい。銀髪の娘の事ですね。ったく...あの子ったら、
あれだけ主様が近くにいるというのに、全く反応がありませんですもんね...」
自分の大好きな少年を煩わしているのが気にくわないのか、その銀髪の娘の
態度を眉をしかめて怒っている。
「まぁ...あの子は昔から頑なな性格だったですからねぇ...。正直、その宝玉の
効果でも反応がするかどうか...。ったく...主様の元お仲間達は揃いも揃って、
頑固一徹が多過ぎますね...!」
「はは...ボクがそれを求めたからね...」
自分の頑固さは棚に上げる金髪の少女に...「でも、そういうキミもその頑固さを
買って仲間にしたんだけどね♪」...と、少年がニガ笑いをこぼす。
「ええぇぇ!私は全然、頑固じゃありませんよ~!めっちゃ素直さんですよ~!
こんなにも主様をお慕いしてる姿を見せているじゃありませんか~!」
少年の言葉に、ショートボブヘアの少女が納得いかないと、異義を述べて
プンプン怒ってしまう。
「はいはい...それは十分に伝わっているから、安心してよ♪」
「あ...主様...」
少年がニコッと微笑みそう言うと、ショートボブヘアの少女を抱き寄せ、
そして自分の唇を金髪の少女に唇へと重ねていく。
「それじゃ...そろそろ、ボク達も城へ帰ろうか、テラ♪」
「了解です、主様~♪」
少年が抱き寄せたショートボブヘアの少女をソッと離し、そして空高くへ
ジャンプすると、ショートボブの少女も美しい真っ白な翼を羽ばたかせて
その後を追い、城のある方角へ向かって一緒に飛んで行くのだった。