167話・俺にセティが愚痴る
「いいか、それのセリフはいつも手伝ってくれた奴が言っていいセリフだ!
お前はそれもクエスト同様、数回に1回しか手伝ってくれないだろうがっ!」
俺は人差し指をセティの宿った刀に向けて、ビシッと突きつけると、
セティのぐうたらさに激おこする。
『うう...しかしですよ!何故、水を浄化しなければいけないんですかね?
だって、せっかくの彼女さんの好意じゃないですか!だったら、この残り湯を
楽しんだ方が得策だと思うんですが?』
「お、俺はそこまで、変態さんにはなれないの!大体、これはカノン先輩と
クーナさんの冗談みたいなものなんだから!」
急に真面目トーンに変わるセティに、俺は少し慌てる口調でそう言い返す。
『本当にそうですか~?彼女さん達、結構ノリノリだったような気がするん
ですがね~?こんな事をして、逆に彼女さんから怒りません?』
う~ん、確かにセティの言うように、クーナさんはともかくカノン先輩の場合は、
そっちの可能性の方が高いか......?
だ、だとしたら...カノン先輩達の残り湯に浸かって、楽しんだ方がマシなのか?
イヤイヤ!もしも冗談だった時、あまりにも失う物は多すぎる!
と、とにかく...今は紳士な行動をするという事で...
「コホン...いいからセティ、取り敢えず水を浄化してくれよ!」
「でも...浄化するより、魔石で入れ直した方がいいんじゃないですか?」
こ、こいつは...まだ、抵抗をするつもりか!
大体、水の魔石が大量に減っていたら、後から入る...特にミルから感づかれ
ちまうだろうが!
そうなった時...絶対にカノン先輩へ告げ口するに決まっている!
イヤ、絶対にするね!あいつの性格からして...
「ふふふ...聞いて下さいな、カノンさん、クーナさん!コウにぃが風呂のお湯を
躊躇なく!アッサリと!全部、捨てていたんですよ!イヤ~やっぱり汚ならしい、
自称・恋人の残り湯になんて浸かれるわけないですよねぇ~あはははは!」
...って、こんな感じにさ!
俺はそれを想像すると顔から色がドッと抜け落ち、その後のカノン先輩や
クーナさんの冷めきった表情を思い浮かべると思わず、ゾッとする。
「と、とにかく!カノン先輩達には、入りましたよ~のていを見せたいんだよ!
だから、浄化を頼む!」
『ハァ...やれやれ...。彼女達の残り湯にたっぷり浸かりたい...けど、それをする
勇気がない...。しかし、彼女達の憤怒は絶対に避けたい...。これってつまり、
あれですよね?どスケベな癖に変に気をつかい、紳士心が発動するという...
別名、ヘタレむっつり!』
「う、うっさい!わ、悪かったな!ヘタレむっつりでっ!」
セティにジト目で述べるド正論に対し、俺は目を丸くし、そして口を尖らせて
プンプンと怒るのだった。




