142話・俺の家に妹の友達も泊まろうとする
「あ...それでしたら、わたくしもお兄様の家に泊まる事にいたしますわ!
いいですよね、お兄様?」
「うむ...二人がそうするのなら、ねぇねぇ、お兄さん!だったらボクも
お兄さんのお家にお泊まりさせてもらってもいいよね♪お断りなんて
しませんよねぇ?勿論、オッケーですよねぇ~お兄さぁ~ん♪」
ミルの言葉に続いて、ナユユとロイエもコウの家に泊めてもらおうと、
キラキラ笑顔を振り撒いてお願いをしてくる。
「ち、ちょっと待て、ナユユちゃんにロイエちゃん!二人とも本当に
コウにぃの家に泊まるつもりなの!?」
「ええ!」
「はい!」
あっさりした理由で自分の兄の家に泊まろうとする二人に、ミルが目を
丸くして驚いてしまう。
「ふう...やれやれ、二人とも空気は読んでもらいたいな......」
「はい!?く、空気を読めとは?」
「そのまんまの意味よ!折角のコウにぃと二人っきりのお泊まりだというのに、
それを邪魔するでないわぁぁっ!」
空気を読まない自分の友達に対し、ミルが呆れ口調の嘆息をこぼし、そして
おくびにも隠さない本音を二人にぶちまける。
「そんな事を言われてもなぁ~。お兄さんの家にごやっかいになれなかったら、
ボク達今から宿等を探さなきゃいけなくなっちゃうじゃん!」
「そうですわ。正直、今から宿屋探しなんて、面倒くさいこの上なしですわ!」
「知るか!そんな事っ!こっちは、コウにぃをこの銀髪お姉さんと、
そこのオレンジ髪のお姉さんから奪還できるかどうかの、瀬戸際なんだぞ!」
ロイエとナユユの愚痴を聞いたミルが、逆ギレに近いキレっぷりでナユユとロイエに
自分の追い詰められた事情を懸命な表情で説明していく。
「だ、奪還って...あんた、一体何をするつもりなの?」
「ふ...そんなの決まっているじゃないのさ!今夜こそ...今夜こそ、コウにぃに
夜――うにゃっ!!」
ロイエの問いに、ドヤ顔のミルが人差し指をビシッっと突きつけて、自分の
決意を口にしようとした瞬間、誰かのゲンコツがミルの頭上に落ちる。
「ったく...それはやめてくれと常々、前から言っているよね、ミル!」
「ふふん...私も前から言っていますよね!私の力と能力は、この世に生まれ落ちた
その瞬間から、コウにぃの為に存在すると...!」
殴られた箇所を撫でながら、ミルがコウに向けて不適な笑いをあげる。
「そして!その力の全力を以て、絶対にコウにぃの全てを手――ギャンッ!!」
「だ~か~ら~、そういうのを人前で堂々と言うじゃないって言っているの!」
再び、ドヤ顔で自分の思いの熱を方便しようとしたミルの頭上へ、俺はさっきより
重いゲンコツを叩き落とす!
「まぁ...いい。三人が泊まる部屋くらいは余っているから、俺は別にキミ達が
家に泊まっても問題はないよ!」
「おお!ありがと、お兄さん!よ!太っ腹っ♪」
「わたくしからもお礼を言わせて下さい、お兄様。このお礼のお返しは、
わたくしの手料理を振る舞うとう形で返させてもらいますわね♪」
コウから泊まる許可を貰ったロイエとナユユが、お日様の様な笑顔を見せて、
感謝の言葉を伝えるのだった。




