141話・俺の妹の泊まる場所
「イツツ...ったく、本当...ひどい目にあったぜ......」
「大丈夫か...コウ!」
「どこかケガしていませんかぁ、コウ君~!」
ナナより食らった怒号ビンタから、何とか回復したコウの元へ、カノンと
クーナが心配そうな顔をして近づいてくる。
「え?あ、ああ...痛みはありますが、ケガはありません...よ......ん??」
そして俺の場所に辿り着いた二人にそう言いかけた瞬間、カノン先輩が右、
クーナさんが左と、それぞれ俺の両肩をポンと叩く。
「ん...ケガはないようで安心したぞ、コウ。じゃ...次は説教タイムだ!」
「言っておきますが、今回はちょっと長くなりますから...覚悟して下さいね♪」
「へ......!?」
俺の左右に立ったカノン先輩とクーナさんが、ニコッとした笑顔で見せるものの、
その瞳は全く笑っておらず、それを見た俺の表情からドンドン色が抜けていく。
「ちょっと待って...カ、カノン先輩にクーナさん...。お、俺の話を聞いて下さい!
ナ、ナユユちゃんに反応したのは、し、仕方がない不可抗力だと思うんですよ!
お、男なら、誰だって、ああなっちゃうと思うんですっ!」
俺の必死の言い訳に対し、回りにいた男子生徒達が同意するように、ウンウンと
頭を頷いている。
「そんな言い訳...どうでもいい。取り敢えず、そこに正座する...はよしろ!」
「は、はひぃぃぃぃっ!す、すいません、今すぐいたしまぁぁぁぁすっ!!」
必死な言い訳空しく、カノン先輩が冷静沈着な表情で地面をちょんちょんと
指差してくるので、俺は慌てて二人の前に素早く正座をする。
「はは...お兄様、御愁傷様ですわ......」
「ん...?何を他人事な台詞を吐いているのかな、ナユユちゃん?あなたも
一緒にコウにぃと説教タイムなんだけど?」
カノン達から説教を受けているコウの事をナユユが気の毒そうに見ていると、
突如現れてたミルから、ポンッと後ろから肩を叩かれる。
「ミ、ミルさん!?ちょっとっ!く、首が...首がしまって...ます...よ......
首がぁぁ......うぐふぅっ!?」
そしてナユユがそれにビックリしていると、ミルから首根っこをギュッと
掴まれ、そのままコウ達の元へ連れて行かれる。
◇◇◇◇◇◇◇
「さて...そろそろ、この辺で説教タイムは終わりでいいだろう...。と言うわけだ、
今度からはマジで気をつけるんだぞ、コウ!」
「は、はい...以後、気をつけて行動いたし...ます...」
カノンとクーナのタップリ説教で身体も心が限界なコウが、渇いた返事を
返してその場に崩れる。
「ナユユちゃんもわかったかな?人のモノは、人のモノ...勝手に取っちゃ
駄目なんだから!いい、わかった!」
「はいです...。反省いたし...ますわ...」
ナユユもナユユで、ミルからクドクドと同じ事を何回も何回も聞かされて、
ボロボロになっていた。
「うむ...二人ともわかればよいのだ。わかればなっ!」
一応の反省を見せるコウ達へ、カノンがニコッとしたしたり顔で返す。
「所で...妹ちゃんとその一行。キミ達は今夜はどこへ泊まる予定なんだ?」
「いやですね。そんなの決まっているじゃないですか。この二人はどうだか
知りませんが、私はコウにぃの家に泊まる事で既に決定事項していますよ?」
「な、なんだと...!?」
カノンの問いに対し、ミルが当然と言わんばかりにコウの家へ泊まる事を
宣言すると、カノンの表情がドンドン険しくなってくる。