14話・俺を癒やす
そう...何故かフリーグランドにいたナナがこちらに近づいて、プンプン怒って
いるのだ。
「イチャイチャだなんて...ただ、クーナさんが試験の事で俺を慰めてくれてた
だけだよ...」
「な、慰められるにしても、それはいくらなんでも大袈裟過ぎるんじゃ......って、
何を枕にしているのよ、あんたはぁぁぁっ!」
クドクドと文句を言ってくるナナが、突如、目を見開いて叫声を荒らげてくる。
「はぁ...枕?何を言っているんだ、お前は...。突然、怒ってきたかと思えば...
なにをワケのわかんない事を...言って...きて......」
ん......なにこれっ!?
後頭部全体に、幸福の感触がめっちゃ広がっていくんですけど......!?
この幸福の感触は一体......?
ん...そう言えばナナの奴...何を枕にしているんだ...とか、言っていた様な...?
俺はこの感触がなんなのか気になってしまい、幸せに充ちている後頭部へ
ゆっくりと目線をおくる......
「...て!こここ、これは!?」
クク、クーナさんのおぱ、おぱ、おぱ―――――っ!?
「ゴゴ、ゴメンなさい、クーナさんっ!幸せの感触だったから、つい...
違う、違う!そそ、そうじゃなくて...最高で最強のこのフワフワ枕を
堪能していたかったから...イヤイヤイヤ!?これも違うぅぅっ!!」
俺は幸福の感触の正体を知るや否や、自分の行っていた事に慌てふためき、
言い訳をしようとするが、言い訳をすればする程、心の本音がだだもれして
しまう。
「わ、私は別に構いませんよ!コ、コウ君の心のケアができれば、私も嬉しい
ですし!ほら~コウ君、よしよしよし~♪」
クーナがそう言うとコウを自分の懐へ引き寄せて、再びコウの頭をわしゃわしゃと
撫で回す。
うひぁっ!
ちょっと、クーナさん!何か大胆さを感じる、激しい撫で撫でなんですけど!?
でも...いいなぁ、この感じ...。
ここ最近、心が疲れていたせいもあるのか、この身体に伝わるクーナさんの
温かい体温...
それに加え、更に頭へ伝わってくる先程よりも深い思愛の感触...
本当、心を癒やしてくれるわぁ...。
「どうですかコウ君?私の撫で撫では、コウ君の心を落ち着かせていますか?」
クーナがコウの顔を覗き込み、頬を赤くし照れながら頭を撫で続ける。
「ク、クーナさん...何か性格変わっていない?そ、それよりコー!その顔...
いい加減みっともないからやめなさい!」
「ええぇ...無茶言うなよ。胸にギュッ!&頭を撫で撫で...これを食らって
冷静沈着になれる男なんているもんか...。お前の彼氏のラールも、こいつを
食らえば絶対にイチコロだって言うの!」
ほら...向こうにいるラールも、肯定するかの様な顔をしているじゃないか...。
「ラ、ラール君はそんなドスケベじゃないもん!それにそんな事をされて
嬉しがったら、めちゃくちゃ引いちゃうって言うの!」
ハァ...こいつ、男心をわかっていないな...。
まぁ、でもよく考えたら、今までこいつに恩愛を感じるイベントなんて
生まれてこのかた、一度もあった記憶がなかったよな.....
「それにしても、引いちゃうか......」
俺はこの言葉を吐きながら、ラールのいる方へ目線をチラッとおくる...。
あいつ...ナナと付き合い始めて、少し痩せたんじゃね?
俺の幼馴染が苦労かけて、マジすまん...!
俺はニガ笑いを浮かべると、心の中でラールに幼馴染として両手をついて
謝るのだった...。




