128話・俺と彼女二人と妹と幼馴染
「ふ...甘いな、幼馴染ちゃん。私も前に言ったぞ、彼女と彼氏がイチャ
イチャしていて、何が悪いのかと!」
「むうぅぅ!わ、私も言いましたよね!が、学園での、不純異性行為は
ご法度だとっ!」
冷静な表情のカノンが、人差し指をビシッと突きつけてナナの言葉を否定すると、
ナナも頬を膨らませながら人差し指をビシッとカノンに突きつけて、その言葉を
否定してくる。
「ん...そんな校則はここには載っていない。つまり...幼馴染ちゃんが勝手に
叫んでいるだけの事...!」
カノンがポケットから取り出した、自分の生徒手帳を見せつけて、ナナの否定を
更に否定してくる。
「グヌヌ...」
「ふふふ...」
カノンとナナ...その二人が視線と視線を合わせて、バチバチさせていると......
「ハァ...この変態ストーカー。相も変わらず、コウにぃにつきまとっているん
ですか...」
目の前に現れたいつもと変わらぬナナに、ミルが呆れてしまい、思わず嘆息を
洩らしてしまう。
「ん...?あれ...あ、あなたは、よく見なくてもコーの妹...ミルじゃないの!?」
「ふふ...お久しぶりですね、変態ストーカーさん♪」
自分を見て喫驚しているナナに、ニコッと微笑みを見せながら、嫌味の
込もった挨拶を述べる。
「だ、誰が変態ストーカーだ!ブラコン娘が!」
「ちっちっちっ...ブラコンの何が悪いんでしょうか?寧ろ私はそれを誇りに
思って、我が兄を激愛していますけど...それが何か?」
目を見開いて激昂するナナを、ミルが物ともせずに窘め、自分の持論を
誇らしげに言い放つ。
「げ、激愛していますって...普通に駄目でしょう!普通にっ!血が繋がった
兄妹なのに!」
「甘いですわね、ナナさん。血の繋がりなど...ふ、些細なものですよ!」
ジト目をしてミルの考えを咎めるナナだったが、当の本人は冷静な表情を
浮かべてながら、それを全く気にもしていなかった。
「イヤ...些細はあると思いますよ...コウ君の妹さん...」
「ん...?誰です、あなたは?そこの自称・コウにぃの彼女と仲がいい感じで
したけど?」
自分とナナの会話に入ってきたクーナを、ミルが誰だと言わんばかりに
ジィィーと見てくる。
「ほえ、わ、私ですか!?えっと...私は、そ、そこの...コウ君の...かか、
彼女をやらせてもらっている『クーナ・ネクサス』って言います!」
ミルの問いにクーナが慌てて、自分が誰なのか、自己紹介する。
「ハァ...わ、私の聞き間違えですかね?今、この人...自分もコウにぃの
か、彼女って、のたまわった事を抜かしたような...??」
クーナが述べる意味不明な言葉を聞いて、ミルが戸惑いを隠しきれずにいた。
「ね、ねぇ...そこの銀髪のあなた。えっと、カノン...とか言いましたか?」
「ん...なんだ、コウの妹ちゃん?」
「認めていません...認めてはいませんが、あなたがコウにぃの、かかか...か、
彼...女ぉぉぉ...な、なんですよ...ね?」
ミルが口にしたくない単語を無理矢理に口から捻り出して、カノンにその事を
確認してくる。
「私がコウの彼女かどうかだと...。ふっ!見紛うことなき、私がこのコウの
彼女さんだぞっ!」
ミルの問いに対し、高らかにそう言い放つと、カノンがぬいぐるみを抱く様に、
コウをギュッと後ろから抱きしめるのだった。




