12話・俺の幼馴染の実力
「し、しまった!?つい、感情が乱れて魔力の配分を間違えちゃった!?」
ナナは配分の失敗に気づくも既に遅く、ファイヤーの魔法がラールの目の前近くに
接近していた。
「ひゃあ!デ、デカイ...!今までの見た中で、中々の大きさのファイヤーだよ!
うん、流石はナナちゃんだね!」
感情が乱れて、魔力を込め過ぎたナナのファイヤーに対し、ラールがビックリ
するものの、その魔力の強さに感心してしまう。
『んじゃ、ボクもやるか...。ハァァァ―――ッ!ボクを魔法から守って!
マジックシールドォォッ!!』
轟音響く炎の塊に、冷静沈着な態度のラールが両手を前に突き出して魔法を
詠唱すると、目の前にマジックシールドが現れて、ラールの身体を包み込む!
そしてラールの発動したマジックシールドが、ナナの凄まじいファイヤーを
完全に弾き飛ばした!
「ふう...やっぱりこの大きさは、結構ビビっちゃうね...」
「試験終了ォォッ!ラール・マクスタに、ナナ・アイシュード!
無事、共に合格だ!」
試験官が試験終了と試験の合格をラールとナナへ伝えてくる。
「ご、ゴメンね、ラール君!ちょっと、魔力の込めを間違ってしまって......」
試験終了の声とともに、慌ててラールの元へと謝りながら駆けて行く。
「いいよ、いいよ、気にしないでナナちゃん!こうやって無事に合格も
できた事だしね...♪」
慌て謝罪を入れてくるナナに、ラールが気にするなと爽やかな笑顔を
浮かべて返す。
「み、見たか...今のナナのファイヤーの威力...!?」
「ああ、すげぇな!なんちゅう威力だよ!」
「あれに比べたら、俺のファイヤーなんて松明LVだぜ...」
男子生徒達が自分の魔法との差を肌に感じ、へこんだ姿を見せる。
「それを言うなら、私のマジックシールドだってラール君のと比べると
土壁と鉄壁くらいの差があるよ......」
「それは、ここにいるマジックシールド担当のみんなの意見だよ......」
女子生徒達も男子生徒達と同様、ラールに自分達との魔力の差を見せつけられ、
ガクッと項垂れる。
「でもナナの奴、よく逆の魔法でここまでの威力と余裕で合格できたよね...」
「う、うん...。ナナってどっちらかっていうと、防御や回復が得意な娘だ
もんね...」
「でも今のを見るに、攻撃魔法もイケちゃうって事か......」
「そして、それをまた逆の魔法が得意なラールの奴が悠々と受ける...か」
「練習の時の逆をやる...これがトップエースの余裕と実力なんだろうな!」
「皮肉や嗟嘆の念を越えて、羨望の眼差ししか出てこないよ...」
「だね、本当に才能ってある人にはあるよね...。コウ君には悪いけど、
この二人は、完璧なベストパートナーだよ......」
「だな...」
「だね...」
ラールとナナの魔法の攻防を見ていた、男子生徒と女子生徒達が二人の才能に
嫉妬したり、羨んだりといった視線を投げかけている。
「スゴいなラールの奴......それにナナの奴も......」
やっぱり、みんなやクーナさんの言う様に二人はお似合いだよな......。
ラールとナナの物凄い魔法の攻防を見せつけられた俺は、あるはずのない
敗北感に打ちのめされるのだった。




