118話・俺って優柔不断なのか...
『ふふん、よし...これで完成ですね!』
「おお!こ、これは......!?」
セティが自慢気に鼻を鳴らすと、コウの目の前に天井へと続く氷の階段が
出来あがっていた。
『この氷の階段を上がって行けば、外に出られるって寸法ですよ!』
「なるほど...でもちょっと、この長い氷の階段を上がるのは落っこちそうで
怖いんですけど......」
な、なんかさ、階段を上がっている途中で、ツルッて足を滑らせて落ちる
想像が目に浮かぶんですよ...
うん...絶対、落ちるね...だって、俺だもん。
『いいじゃん、落っこちちゃったら、また上ればいいだけなんだし♪』
「無茶言うな!この高さから落ちたら死ねるわっ!」
気楽に言ってくれるセティに対し、俺は叫声を上げて文句をこぼす。
『ったく...人間は本当にもろい生き物だなぁ...。じゃ、これなら文句は
ないでしょう!』
『アクア・グラビティーッ!』
セティが魔法を詠唱すると、コウの足が少し重くなっているのを感じた。
「こ、これは......!?」
『コウの足に水圧の重力魔法をかけたわ!これで滑る事なく歩けるわよ♪』
「おお...ほほう!これは確かに......滑るって気がまるでしない!」
俺は重くなった足を地面へガシガシと何度も踏みつけ、その状態を確認する。
でも...けっこう重いな、これ...。
俺は足に疲れる重さを感じると、目の前の階段をこれで上るかと思い、
心がドンドン、うんざりになっていく。
「ハァ...なあ、セティ。やっぱこの魔法、キャンセルできないかな?」
『もう!さっきから見ていて感じたんだけど...コウってば、本当に決断を
決めかねる性格だよね...。あ!もしかして、恋愛もそんな感じじゃないの!』
「グハァッ!!?」
セティの述べるあまりにもド正論な言葉に、コウのハートにショックのナイフが
グサリと刺さり、両手を地面にペタンと突ける。
「いいんですよ...どうせ、そのせいで、好きな子には振られ...どうせ、
そのせいで、どちらを選ぶわけでもなく、二人を選んで...どうせ、そのせいで......」
両手を地面に突きつけたまま、コウがぶつくさと何かを呟きながら頭を垂れている。
『あ...ヤベ!思いっきり図星を突いてしまったみたいっ!?』
今にもショックで倒れそうになっているコウを見て、口が滑った事を自覚した
セティの額に、大量の冷や汗が流れるのだった。