116話・俺と精霊の契約
「ちょ、なんでしまい込むんですかぁぁっ!?」
「イヤ...俺の元相棒をせせら笑うキミを見て、やっぱ邪神の類いの
可能性が出てきたもので......」
「じゃ、邪神!?よりにもよって、あんな女と同じ...渾名で呼ばれる
なんて...。ひ......ひどい...ひどすぎ...る...ぅぅ......ハァハァ」
邪神と呼ばれたのがよっぽど無念だったのか、セティの意識がいっぺんに
持っていかれ、倒れる寸前になっている。
「おねがい...します...契約...の儀...カモン...プリー......ズゥゥ!」
そう言ったセティが静かに...それは静かにコウに向かって土下座をしてきた。
キャァァァ――――ッ!?やめてぇぇぇ―――――ッ!?
そんな女神様の様な見た目の女性に、土下座をさせるだなんて...これじゃ、
まるで俺が外道な男にしか見えないじゃないかぁぁぁぁっ!!
「はあ...もう、わかった、わかりましたよ!やります、契約の儀をやりますから、
その土下座だけはマジでやめてっ!!」
俺は深い溜め息を洩らすと、セティと契約の儀を受ける事を承諾する。
「おお...ありがとう、コウ!そ...それでは...早速、契約の儀をちゃちゃと
行いますので...この指輪を指にはめてから、その刀を私の前で構えて下さい!」
「う、うん、わかった。...こうでいいのか...な?」
俺はセティに言われるままに指輪を指にはめた後、刀をセティの前へと構えた。
「ええ...それでいいです......それじゃ、いきますよ!」
『わたくしこと...水人族が女神...セティーナの名の元に、この儀を以て、
この者...コウ・ラーディスとの契約の儀を今ここに交わさんっ!
さぁ!わたくしを受け入れろ!さぁ!わたくしを相応するのだぁぁぁっ!!』
セティが最後の力を振り絞って契約の儀を唱えると、刀とセティ自身が
眩しいばかりの光を放ち、どんどんと輝いていく......
「うわ!?ま、眩しいっ!?」
俺の目がその眩しい輝きに耐えられなくなり、目を両腕で必死に被う。
「.........ん?眩しく...なくなった...??」
腕で被ってしばらくすると、先程まで眩しかった光が消えているのが
わかり、被っていた腕を退かす。
「あ、あれ?セ、セティが...いない??」
『私なら、ここにいますよ~♪』
「え...ここ?」
『ここですって、ここっ!』
「え...声はするども、姿が見えないんですけど!?」
あきらかに聞こえてくるセティの声...しかしその姿が目線に入って
こないので、キョロキョロと周りを見渡すが、やはりセティの姿が
目線には入ってこなかった。




