115話・俺のもうひとつの得意武器
「さぁ...次を...おね...がい、次の武器、カモ~ン...うう......!?」
真っ青な顔をしたセティがヨロヨロと起き上がり、肩でゼーゼーと
息をしながら、懸命にコウへ心願する。
「ちょ!?マジで死にかけてるじゃないかっ!そこまでの否定だったのか、
俺の元相棒さんをっ!?」
哀れな姿で地面に錯破している元相棒を見た後、俺の目の前でフラフラ状況に
なっているセティへ、思わず苦言が洩れる。
「はあ...でも次の武器と言われましても...後はこのカノン先輩から頂いた
あの武器しかないんだよなぁ...」
俺はそう呟くと、前に貰った刀が入ってあるマジカルリュックの方へ目線を
チラッと向ける。
「おお...そ、それを早く出して下さいな!」
「断るっ!」
「ええぇぇっ!な、なんでですかぁっ!?」
自分の頼みをあっさり却下されたセティが、目を丸くして喫驚する。
「そんなの当たり前じゃないか!カノン先輩から頂いた、大切で大事な武器を
こんな無惨な姿にされでもしたら、たまったもんじゃないからねっ!」
セティへ強く否定の言葉を発すると、俺は地面に砕け散って錯破している元相棒、
ゴブさんの棍棒に人差し指をビシッと突きつける!
「だ、大丈夫ですって...もう、私の魔力は完全にそ、底をついて...ますし...
...っと言いますか、もうそろそろ死にそうです...ので......ううう...ぐふっ!?」
「ちょ、セティ!?」
「うう...お、お願いします......これ以上は...ハァハァ...も、持ちそうにない
感じなので...ハァハァ」
セティが力ない口調でそう述べると、立っているのも限界な身体がガクッと
なって、地面に片膝をつける。
ど...どうしようかな...。
た、確かに、もうさっきみたいな事にはならないと思うのだけど......
でも、改めて考えて、本当にこの自称・精霊と契約してもいいのだろうか?
こんな可愛い姿をしてても、悪霊も類いの可能性も否めないしなぁ。
だが、しかぁぁぁぁしっ!!
その可能性を構わないと補う程に、セティのあれが...二つの山が...
デカイのだっ!!
俺は心の中でそう叫声を上げると、静かにマジカルリュックの中に手を突っ込み、
カノン先輩から頂いた刀を取り出した。
「おお...そ、それは勇者の故郷の技術で作られたと言われる、ロスト・アイテム...
『刀』じゃないですか!?」
カノンから頂戴した刀がよほど気に入ったのか、先程のダメージはどこにという
興奮状態で、セティがその瞳をキラキラさせている。
「もう、コウったら...なんでその刀さんを先に出さなかったんですか?あぁ!
ハハ~ン、さては私をからかったんですねぇっ♪」
「え...?別にそういう意図は......」
「皆まで言わないで下さい、皆まで!考えてみればそうですよね~。でないと、
あんな削っただけのクソださいゴブリンの棍棒なんて、とても恥ずかしくて
人様の前になんて、出せやしませんよねぇ~~はははのはっ!」
「.........」
目の前でケラケラと笑うセティを見て、俺は刀を静かにマジカルリュックの中へ
無言でしまい込んだ......。




