114話・俺、ゴブさんの棍棒を自慢をする!
「ちちち...これはただの棍棒ではないんですよ、セティさんっ!
この棍棒はですね、数あるゴブリンが持つ棍棒の1つ、1つを選定し、
暗過ぎず、明る過ぎず...この角度から見えるきらびやかな輝きと色の光沢!
こだわりを越えた先にある棍棒している形と、こいつを振った時に出る
森で小鳥が奏でる様な耳に心地良い音...そして、手に持った時にズシッと
かかるこの安定な重さ...それら全てを集合させた完璧な棍棒...その名も......」
『ゴブさんの棍棒っ!!』
俺は目をランランと輝かせて、普通なら絶対噛んでいるであろう早口で、
セティにゴブさんの棍棒の素晴らしさを、情熱の込もった口調で
延々と語って聞かせてあげた。
「...と、言うわけなので、さぁ...!いつでも、このゴブさんの棍棒へ
憑依カモン~ッ!」
「.........却下!」
セティの目の前にゴブさんの棍棒を突きつけて、いつでもオッケーと
準備を整えるコウだったが、セティが即座に拒否してきた。
「えぇぇ!?な、何でぇぇぇぇ―――っ!?」
「当たり前です!何が悲しくて精霊のこの私が、そんな棍棒なんかと
契約の儀を結ばなきゃいけないんですかっ!」
即座の拒否を受けてかなりのショックで驚くコウに、更に追い打ちを
かける様に、セティが絶対嫌だという表情を見せてくる。
「うう...何故なんだ!なんでこんなにカッコいい棍棒を拒否してくるんだ!?
お願い、もう一度考えなおし―――」
『私は嫌だと言いました!砕け!コールド・クラッシュッ!!』
「へっ!?」
俺が驚くよりも早く、セティが氷魔法を詠唱し、ゴブさんの棍棒へ向けて
魔法を放ってきた!
すると、俺の手の中のゴブさんの棍棒が、ピキッと音を立て凍りついた瞬間、
粉々に砕け散り、無惨な姿となる。
「ち、ちょっとぉぉぉぉぉ――――――――――ッ!!!!」
ハッと我に返ったコウが、目の前で起こった事に頭が理解してくれたその時、
喉が潰れそうな絶叫が口から発射される!
「うう...あ、頭が痛い...。そ、そんなに叫ばないで下さい...。い、今の魔法で
完全に...ハァ...ハァ...MPがすっからかんなんですから...うう、し、死ぬぅぅ...
ガハッ!?」
精霊の魔力が切れたという事は、生命力が切れたのと同じなセティの顔から
一気に色が抜け落ち、その場にバタンッと崩れ落ちる。
「そんな死にそうになってまでも、俺の大事な元相棒ゴブさんの棍棒を否定して
破壊したかったのか、この精霊さんはぁぁぁぁ―――――っ!?」
今にも死にそうな表情でフラフラしているセティに、俺は地面で粉々になって
砕け散っているゴブさんの棍棒を見ながら、納得のいかない魂の嘆声を荒らげる。




