11話・俺の幼馴染の試験
「むむむ...あの撫で撫では私の...あの撫で撫では私の......」
ナナが自分の爪を噛みながら、クーナを撫でているコウの姿を見て
ムキムキしている。
「ねぇ...ナナちゃん、ナナちゃん!」
「大体、コーもコーよ!そんなに親しくもないクーナさんに私だけの
ものだった撫で撫でを、何でおくびもなくやっちゃうかな!」
「ねぇ!ナナちゃんってば!」
何かをブツブツと呟いているナナへラールが声をかけるも、全く気づいて
くれないので、ラールは少し声の大きさを上げて、再び声をかける......
「ねぇっ!ナナちゃ~んってばぁぁ――っ!!」
「はひぃ~っ!?」
すると、その声にビックリしたナナが目を見開いて驚き、思わず身体が
ピョンッと飛び上がる。
「ひゃ~ビックリしたぁ!な、何?なにか私に用かな、ラール君?」
「何か用かなじゃないよ、ナナちゃん...。テストだよ、今から試験の...!」
やっと気づいてくれたナナに、困惑した表情のラールが今から行う試験の
場所を指差す。
「たはは...ゴメン、ゴメン!つい、ボォーッとしちゃって...じ、じゃあ早速、
試験を始めちゃおうか!」
上の空状態だったナナが、エヘヘ...と笑って言い訳を口にした後、
慌てる様に自分の試験場所配置へと移動する。
「それでは、これより試験を開始します!二人とも準備はいいですか!」
「はい...!先生、ボクはいつでもいけます!」
「こっちも準備はできました!」
試験官の確認声にラールとナナが返事を返すと、それぞれが試験の
準備を終えて身構える。
「では、試験開始ぃぃ―――っ!」
試験官が腕を上へ垂直に上げて、試験開始を告げる!
「おい...始まったぞ、ラールとナナの試験が...!」
「ん...でも、二人の配置が何かおかしくないか?」
「え...?あ、ラールの奴がマジックシールド担当の場所、ナナがファイヤー
担当の場所に立っているな?」
「この間の練習時間には、ラールはファイヤーを、ナナの奴はマジックシールドを
練習していたはずだが......」
「じゃ...二人は担当の違う魔法の試験を受けようとしているの!?」
「才能のある者の余裕か......ハァ、腹が立つけど、羨ましい限りだぜ!」
ラールとナナの試験を見学していた他のクラスメイトの生徒達が、
いつもと違う魔法で試験を受けようとする二人に、ビックリした表情を
浮かべて見ている。
「へえ...あいつがファイヤーの方をやるんだ?」
「そうみたいですね?なんででしょう?」
「さあ?クラス連中が言ってた様に、余裕の表れなんじゃない?」
コウがクーナの頭をゆっくりと撫でながら、ナナ達の試験を観察する。
「な!まだ撫でてや――」
「さぁ!いつでもいいよ、ナナちゃん!」
「己...あれは私の...私の...」
ラールがマジックシールドの詠唱準備に入り、ナナへファイヤーを
撃つ様に声をかける。
「.........いくよ、ラール君!」
「うん、いつでもいいよ...!?...って、ちょっとナナ...ちゃんっ!?
そのファイヤーの魔法...す、少し魔力が強い様な気が...?」
『ハァァァ―――――ッ!全てをやきつくせぇぇぇ―――――ッ!!
炎の魔法...ファイヤァァァ――――ッ!!!』
ナナが手のひらを前に突き出してファイヤーの魔法を詠唱すると、メラメラと
轟音が響き渡る大きな炎の塊がラール目掛けて撃ち出された!




