107話・俺を呼ぶ、誰かの声
2年生達とのいざこざから幾日が経ったある日......。
俺は学園で使う道具のお金を稼ぐ為と、LV上げの特訓を兼ねて、
ここ『ロザッタ神殿跡』へクエストに来ていた...
...の、だったが......
「いてて...なんだ、いきなり地面が崩れて...一体、俺の身に何が
起きたんだ!?」
俺はズキズキと痛みだす頭を撫で、今自分に起きた惨状の原因を
思い出す為に思考を回しながら振り替える。
そうだ...思い出したぞっ!
オーク討伐中、遺跡跡の中で見つけた宝箱を開けようとした瞬間、
突然、足元の地面に亀裂が走り、それに気づいた時には既に遅く...
俺はその割れ目に飲まれて、真下へと落下しちゃったんだった...。
「あれが落ちた穴か......」
亀裂の穴へ落ちた事を思い出した俺は、その穴を確認する様に上を
見上げてその穴に目線を合わせる。
「あそこまで、登るのはちょいと無理だよな......。う~む、さて...
どうするか...」
落ちた穴からの脱出を諦めた俺は、他に外へ出る出口がないかを、
キョロキョロと見回して探す。
「ん...あっちの方に道が続いてるな......行ってみるか」
目線に入った少し広い道を見つけた俺は、取り敢えずその道の
先へ歩いて行く事にした。
それからしばらく歩く事、数十分......。
出口らしい出口を見つける事も出来ず、俺はまだ洞窟内を歩き
回っていた。
「イヤ、これは参ったな...。この洞窟、結構な道別れがあるぞ。
一応、来た道には印をつけてはきたけど、俺...無事にここを脱出する事が
出来るのか...?」
洞窟のあまりの広さに、俺の心がどんどん不安になっていき、嫌な予感が
脳内を巡っていた、その時......
「ねぇ~そこに誰かいるの~?いるのなら、返事を返してよ~!」
「な、なんだ、今の声...!あっちの方から聞こえたけど!?」
いきなり聞こえてくる、か細いながらも力強い声のする方向へ
耳を傾けると、先程の声が再び俺の耳に聞こえてきた。
「ねぇ~いるよね?今、私の耳にあなたの声がハッキリ聞こえたもん!
だったら、返事をしてよ~!しないと泣き叫ぶぞぉぉぉっ!!」
う、嘘っ!?
この聞こえてくる声の間隔では、ここからかなり離れているはずなのに、
俺の声が聞こえたっていうのっ!?
これってもしかしたら、魔物の罠の確率が高いかも......
ほら...だってこの展開って、よく聞くあの美しい女性の声で冒険者や
旅人を誘い、そして罠にかけるっていう、あの罠に何か似ているよね?
まぁ、この声には美しさの欠片もないけどさ...
でも見捨てると後味が悪くなりそうだし......
「ふう、仕方がない...行ってみますか!」
取り敢えず、この声の主のいる場所へ移動をすると決めるものの、
俺はこれが罠の可能性を視野に入れて、ゆっくりとその声の聞こえてくる
方角へ進んでいく。




