106話・俺の知らない所で誰かの悪巧み
屋上で謎の人物が、ジィィーッとナナの事を観察していると...
「お、そんな所にいましたか、探しましたよ♪」
そこへ翼を羽ばたかせながら飛んできた何者かが、屋上にいる人物へと
話かけてくる。
「ん...この声はテラですか。それで...そちらの方はどうなりましたか?」
「えへへ...失敗しました♪...っていうか、あれが成功する筈ないじゃ
ありませんか!」
空を飛んできた人物...テラがプンプンと怒って、抗議の言葉を投げ掛ける。
「ま...それもそうだろうね...。テラには何となくって気分で頼んだだけ
だから...」
「うわ!ひっど~~い!それに付き合わされたわたしの気持ちを少しは
考えて下さいよ!」
テラが屋上にいる人物の近くに降りてきて、目の前で文句を述べてくる。
「そうムクれないでよ、テラ。後でいつものお礼をするからさ♪」
屋上にいた人物が、文句を言ってきたテラの耳元に口を持っていくと、
囁く様にそう呟く。
「うう...わかりました。但し、いつものお礼の倍を所望しますよ!
倍ですからねっ!」
屋上にいた人物にテラがギュッと抱きながら、ご褒美の追加を
お願いする。
「はい、はい、了解しました♪それで...彼女はどうでした?」
「あ、あの子ですか...。シチュエーションを似た感じに組んだんだけど、
でも、その相手がショボショボで...ハァ」
先程の情けない戦いを思い出して、テラが深い嘆息を吐いた。
「レッド貴族の狡猾さを、ちょっとだけ期待したのですが...やはり
駄目なものは駄目でしたか...」
テラの落胆している姿を見て、屋上にいた人物がニガ笑いをこぼす。
「まぁ...それもいいでしょう。それでは、テラ。そろそろ時間ですし、
帰路につきましょうか...」
屋上にいた人物がテラにニコッと笑みを見せると、ゆっくり空中に
浮いていく。
「しかし...不快な矛盾...か。あれを見るに、完全な記憶を覚醒をするには
まだまだ不安定で時間がかかるみたいだね...」
「ったく...さっさと目覚めてくれれば、次の段階へ進めるっていうのに...。
あのジジイめ!本当、余計な手間をかけてくれるよね!」
テラがジジイと呼ぶ人物に対し、露骨に嫌な顔をしてムスッとしている。
「ふふ...こればっかりはしょうがないよ...。『絆の楔』の目覚め...その時が
くるまで、ボクはいつまでも待っているからね......ナナちゃん♪」
屋上にいた人物がナナに目線を合わせ、ニヤッと口角を上げた瞬間、
その場から遠くの空へと一気に飛んで消えていく。
 




