10話・俺の周囲
「お、おい...見ろよ、コウがクーナさんを撫で撫でしているぞ!」
「あ、本当だ!くそ~コウの野郎、なんて羨ましいんだ!あ...クーナさん、
メッチャ幸せそうな表情をしてる...」
「でもクーナさん、よく男子であるコウに声をかけたよな...。俺が声を
かけたら、速攻で逃げ出しちゃったのに...」
「それはお前に、邪念があるからじゃねぇか!」
「ハイハイ、ありましたよ♪...て、言うかお前だって、この間クーナさんに
声をかけて逃げられていただろうが!」
「うっ!な、何故それをっ!?」
「はは...正直、あのイチャイチャを見せられて悔しいし、嫉妬もあるけど...
あいつにはナナさんの事があるからなぁ...」
「ナナさんか...。そうだった...あいつ、完璧少年ラールに大事な幼馴染を
取られたんだよな...。俺があいつの立場なら、しばらく旅に出てしまいかねん...」
「俺もだよ。しょうがない...ここは俺達、男子生徒はあいつの事を暖かく見守って
やるとしますか...」
「...だな」
コウとクーナのイチャイチャを遠くで見ていたクラスの男子生徒達が、
その様子を嫉妬を通り越して、暖かく見守る事にした。
一方、クラスの女子生徒達...。
「あ...見て、見て!クーナがコウ君に頭を撫でられているよっ!」
「嗚呼、本当だ!なんて羨ましいんだ、クーナさん!」
「え...あんたって、コウ君に好意があったの...?」
「ええ、ありましたけど、それが何か?めっちゃ狙ってましたけど、
それが何か?そう言うあなただって、狙っていたんでしょう?」
「う...そ、それは...くう~やっぱ、さっき声をかけるべきだったぁ!
ああもう、失敗したぁ!」
「だよね~!ナナの防御がない今がチャンスだったのに、二の足を
踏んじゃったよ!」
「うわ...結構、みんなコウ君に好意を持ってたんだ!まぁ...私も
だけど♪」
「あんたもかい!なんて言う私もだけどね~。だってコウ君...普段は
子どもっぽいのに、たまに大人じゃん?今クーナにやってるみたいにさ」
「あれね...。ナナにやっているのを見て、何度羨ましいと思った事か!」
「でもクーナの奴、よくコウ君って言うか、男子に声をかけられたよね?
私達、女子にもキョドッちゃうのに...!」
「だよね~クーナさん、勇気出したよね...。本当、気が弱いって思っちゃって、
ゴメン!あなたの方が勇気があります...!」
「...だね」
女子生徒達もそれぞれがコウに接触したクーナへ、嫉妬心を見せたり、先手を
打たれたと後悔したり、そして賛辞を贈ったりしている。




