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9話 勇者&勇者

  マスターは南のギルドの責任者らしく伝令を応対していた。というか彼以外に職員が見当たらないのだが、このギルド本当に大丈夫か。


  「……なるほど。騎士団だけでは対応できない数なのか。だが、ウチは知っての通り戦力にはならないと思うぞ……」


  マスターがギルドを見渡すと僅かにいた冒険者達が一人もいなくなっている。

  知らせを聞いてから立ち去るまでがもの凄いスピードだった。その内の一人は働いたら負けとかほざいており、側から見ていたフェータはマスターの気苦労を察した。


  「ウチから出せるのはコイツらだけだな……」


  マスターはフェータ達の方を見た。言葉とは裏腹に頼むから辞退してくれという思いが視線に込められていた。集団戦になると面倒臭いことになるのは目に見えているからだろう。

  フェータはその思いを受け取ったものの、彼女達を止める力は彼には無かった。


  「私達だけで十分ですよ、マスターさん。早く参りましょう」


  「そうにゃ〜、早く戦わせるにゃ〜」


  「魔物どもに正義の鉄槌を下してやろう」


  「わ、私、新しい魔法の威力を試してみたい、です」


  全員闘志は十分のようである。……殺気立っているという表現の方が正しいかもしれないが。


  「そ、それは頼もしいですね!とにかく正門前の草原にお集まりください!」


  見た目だけなら花も恥じらう乙女達な彼女らを伝令の彼は実力者だとは思わなかったようだ。

  それでも数の足しにはなると考えたのかフェータ達に集合場所を教え足早に去っていった。


  マスターは大きくため息を吐くと、フェータに一言呟いた。


  「大事にならんよう頼んだぞ……」


  その頼みは無茶だと思ったフェータだが、一応頷き仲間達に振り返った。


  「じゃあ、行くか……」


  結成ホヤホヤのパーティーは意気揚々とギルドを出発した。まあ、一人は心底嫌そうな顔なんだが。



 __

 


  ギルドを出て入り組んだ裏路地を抜けたフェータ達は大通りを北へと進んでいく。王都の正門は北に面しているからだ。

  自信満々にシェリアを案内して迷子になった前科があるフェータは大人しく後ろから四人についていった。

  ただ女子四人の後ろをついて行くローブ姿の男という光景は怪しいことこの上ない。住民達に衛兵に突き出されかけ、怪しまれることに慣れているフェータも辟易とした。


  色々ありながらも一行が進んでいくと、正門に向かうにつれ武装した人が多くなってきた。彼らも魔物の迎撃に参加するのだろう。

  アリエルと同じ鎧を纏った騎士団達や、思い思いの装備をした冒険者達。そして、思わずそんな装備で大丈夫か?と言いたくなるような町の自警団が今回の迎撃の主な戦力のようだ。


  「ああ、憂鬱になってきた……」


  魔物が攻めてくると聞き我先にと逃げ出す人や戦いの準備をする人がごった返しており場は喧騒に包まれている。そんな光景がフェータに戦いが近づいているという実感を持たせた。


 


  しばらくして住民の避難が完了し、正門前には戦士達のみが残された。

  騎士団の幹部らしき男が前に出て声を張り上げる。


  「さあ、同志達よ!進軍するぞ!」


  張り詰めた空気の中、号令通り戦士達は正門を抜け決戦の舞台となる平原へと歩を進める。

 

  魔物の群れは北から真っ直ぐ王都に向かっているらしい。騎士団がそれに対して打ち出した作戦は王都中からかき集めた戦力を以って平原で真っ向から迎え撃つというものだ。……本当に作戦なのか。


  騎士団の上層部は絶対に脳筋だと愚痴りながらもフェータは配置につく。しかし、配置といっても色々な集団が集まった混成軍であるせいで情報の伝達が上手くいっておらず思い思い好きな位置にいる感じだ。

  だから、なるべく後方にいたかったフェータだが、シェリア達のせいで最前線にいる。


  「早く来ないかにゃ〜?ボク、暇だにゃ」


  戦いを前にメルはそんな事を言いながら欠伸をしてる。空気の読めない奴だと呆れを通り越して感心していたフェータだが、そんな中もっと空気が読めない奴がやってきた。


  「お前ら、本当に戦えんのか?ま、俺の背に隠れておけよ。守ってやるから」


  そんな事を言いながら珍しい黒髪をした男がシェリア達に話しかけていた。自信あふれる顔をしたイケメンだ。

  何口説こうとしてんだと思ったフェータだが、彼はひっそりと息を潜めた。巻き込まれるのが嫌だからだ。

  黒髪のイケメンも美少女達に注目して後ろの不審者には気づいていないようである。


  「はて、守ってやる?あなたが私よりも強いとは到底思えませんが」


  イケメンのセリフはシェリア的に気に食わなかったようだ。シェリアの強者センサーに彼は引っかからなかったらしい。


  「あ?何だと?」


  沸点低いな、コイツ。

  ボーッとしながらそう評価を下したフェータ。戦闘前に要らぬ諍いはやめてほしいと思うが、止めるのは面倒臭いので勝手にやってくれというスタンスだ。


  「大体、あなたならフェータさん程度にも勝てそうにありませんがね」


  話がおかしな方向に進んだ。何で俺を巻き込むんだとフェータは顔を青ざめる。「フェータさん程度」と言われたのはこの際どうでもよかった。


  「フェータ!?誰だそいつは!?」


  「この男だ。私たちのパーティーのリーダーでもある」


  逃げようとしたフェータをアリエルが男の前に押し出した。


  今初めてフェータの存在に気づいた男は、フェータの身なりを見て嘲笑した。


  「ふん、ドクロの杖なんて持って趣味の悪い野郎だ。こんなのが俺より強いって?」


  「試してみますか?」


  俺抜きに話を進めんなとフェータは叫びたくなった。


  そんな中、男のパーティーメンバーであろう男女が走ってきた。彼らも黒髪をしていた。


  「ちょっと、優輝!またナンパみたいなことしてんの!?って、何この剣呑な空気?」


  長い黒髪をポニーテールにした女が来るなりそう言った。彼女の後に遅れてやってきた柔和な顔付きをした男もそれに続く。


  「ほんと、優輝はトラブルメーカーだよね……。勇者の自覚を持ったら?」


  ユウキとやらに振り回されて災難だなと彼らを憐れみつつも、フェータの耳は聞き捨てならない言葉をキャッチした。


  「え!?これが勇者!?マジかよ!?」


  思わず言葉に出してしまったのは失敗だな……。

  自分を怒りの形相で睨むユウキを見ながらフェータは後悔した。


  「何だと、テメエ!……なら良いぜ。テメエの方が俺より強いのか今すぐ確かめてやろうじゃねえか!」


  ユウキはフェータに今すぐ殴りかかってきそうな勢いだった。

  フェータはビビった。しかし、それと同時に彼はトット村でジャックに因縁を付けられた時のことを思い出していた。あの時は最後どうなったのか……。


  フェータは恐る恐る背後のシェリアを振り返った。


  「大丈夫、私はあなたを信じていますから」


  シェリアは優しい笑顔をしていた。一応安心したフェータは頷きユウキと向かい合った。

  ……でも、シェリアだしなぁと不安は感じていたが。


  一方、ユウキは二人の信頼を見せつけられたのが気に食わなかったのかさらに怒りを膨れ上がらせていた。


  「女の前でボコボコにしてやるよ……!」


  シェリアもシェリアだけどコイツも全然勇者っぽくないな。そんな事を考えながらフェータは彼の怒りを受け止める。


  「あんたも勇者なら俺達にじゃなくて魔物に力を向けるべきじゃないか? ……俺達とあんたのパーティー、どっちがより多くの戦果を挙げるかで勝敗をつけようじゃないか」


  フェータは皮肉めいた笑みを浮かべながらそう吹っかけた。


  「上等だ!」


  ユウキの後ろの二人は頭を抱えていたが、謎の勝負が始まってしまった。


  (真の勇者パーティーの力見せつけてやるわ!)


  珍しくフェータが乗り気なのはあくまで彼自身が戦う気は無いからだ。

  ……ま、そうフェータの思惑通り行くかは分からないが。


 

 

 


 

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