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8話 予言者、リーダー就任

隔日更新と言っておきながらかなり間隔を空けてしまい申し訳ありません

「俺が冒険者に……?しかも、リーダー?」


  シェリアの言葉が信じられずフェータは思わず聞き返した。聞き間違えであって欲しかったが、シェリアは真面目な顔で肯定する。


  「ええ。心配しなくともあなたなら出来ますよ」


  他の三人もその決定に納得しているような様子だ。


  「いや、待ってくれ!後で言おうと思ったんだが、シェリアは勇者なんだ!あー、もちろん勇者は他にいるって思ってるだろうが実は俺は予言者で……」


  慌てて事情を話すフェータだが、三人の反応は薄かった。


  「フェータ、シェリアからそのことは聞いたにゃ」


  「ああ、私たちは勇者とか予言者だとかは全て聞いた上で判断した」


  百歩譲ってこいつらがヤバい奴らでもいい。だから、自分は巻き込まないでくれ……。

  そんな思いのままフェータは何とか自分がパーティーに入らないで済むように言葉を考える。


  「でも、こういうのって勇者がリーダーになった方がいいんじゃないか?世間体的にさ。あと本当に俺足手まといだから絶対前線に出さない方がいい」


  そう言ってみたものの三人の反応は芳しくない。シェリアもどこか不満げだ。

  言葉で攻めても無駄なようなので、フェータはちょっとした芝居を打つことにした。


  「おい、ホネホネ。ちょっと手伝え」


  フェータはシェリア達に背を向け手元の杖にこっそりと耳打ちをした。


  『おい!せめてボーンって言ってくれ。ホネホネはマジで嫌だ』


  シェリアに名前をつけさせたのを彼は心底後悔している。


  「とにかくお前使ってあいつら驚かしてパーティー結成妨害作戦発動だ。打ち合わせしてる時間はないからぶっつけで行くぞ」


  『そう上手くいくか……?』


  「マリナあたりは絶対ビビるって!いいからやるぞ!」


  『……しょうがねえな』


  大層な剣幕で言うフェータに押されボーンは了承した。割と彼はフェータのことを気に入っている。


  しばらくしてフェータが振り返ると、彼は急に胸を押さえ苦しみ始めた。


  「は、離れろ……。ヤツが来る……!」


  そう言うや否やフェータの瞳が怪しく光り始めた。

  短期予知をしているだけだが、事情をあまり知らないメル達からしたらこの光景は不気味に見えるだろう。

  シェリアには彼女達を追っ払った後に説明したら良い。


  『クカカカカ!久し振りの外界だ!フェータの奴め、俺様を封印なんぞしおって生意気な奴だ!ああ、イライラしたら腹が減ってきた。てめえらを喰ってやろうか!?』


  ボーンのセリフに合わせ、フェータが口パクと身振りを付ける。この杖が喋るなんて知らない者からすれば、急にフェータの声が変わり豹変したと思うだろう。アドリブにしては息のあった二人だ。

  設定は封印されていた化物に乗っ取られた哀れな予言者といったところか。若干、無理矢理な気もするが。


  さて、メル達の反応はどうか。

  メルはいつも通りニコニコしていた。アリエルも厳しい表情のままだ。そして、ビビると思っていたマリナは何故か目を輝かせていた。


  「それがボーンさんですか!?すごい本当に喋ってる!どういう仕組みで動いているんでしょうか?何らかの魔術を介してるのでしょうかね。ちょっと調べてみても良いですか!?あ、あとフェータさんは何をしているのです?」


  先程の自己紹介ではあれほど詰まっていたのに、マリナは一息でそう言った。

 

  (コイツの事も聞いていたのか……!)


  四人のコイツ急に何してんだという視線にフェータは耐えられず、穴があったら入りたい気分だった。

  仕方ない、こうなればもう本心を言うしかない。


  「……俺は弱い。だから、戦いたくない。それだけだ」


  何とも情けない告白だ。だが、これで面倒くさい物全てから解放されるかと思えばフェータはどこか楽な気持ちになった。

  そんなフェータをシェリアは悲しい目で見つめる。

 


  「フェータさん?何を弱気になっているのです。大体、あなたは私を補佐する義務があると言っていたのに私を見捨てるのですか?」


  シェリアはそうフェータに詰め寄った。

  仮にもシェリアは美少女である。そんな美少女が不安げに瞳を揺らし今のセリフを言えば、側から見れば完全にフェータが悪者だ。

  ギルド内に若干いたギャラリーはフェータに誠意を見せろ!と言いたげな視線をぶつけている。


  「そ、そういうわけじゃない……。俺が側にいたらシェリアの邪魔になるかと思って……」


  「そんなことありません!」

 

  シェリアはフェータの言葉を即座に否定した。あまりの勢いで少し前のめりになっている。


  「シェリア……」

 

 そんな彼女を見てフェータはこの一ヶ月を振り返った。

  彼女との出会いから様々なことがあった。ボーンとの戦いもう懐かしい記憶だ。それからも竜が住むという山にシェリアが殴り込んだり、凶悪な盗賊団のアジトにシェリアが殴り込んだり、もうひたすらシェリアが殴り込んだりした。しかも、シェリアはそんな時フェータも無理やり連れて行くのだ。

  フェータからしたら散々な思い出たちだ。しかし、その中で自分たちは信頼を築けたのかもしれない。


  予言者が勇者の信頼に応えずにどうする。

  フェータは覚悟を決めて顔を上げた。


  「すまない、シェリア。俺は弱気になっていたようだな。……俺にパーティーのリーダー、任せてくれないか?」


  シェリアは優しく微笑んだ。


  「ええ、もちろんです。ですが……」


  シェリアは続ける。


  「フェータさんはちょっと精神面が弱いので鍛えないといけませんね。ああ、心配なさらずとも私が一から鍛えて差し上げますよ?」


  先程の聖母のような笑顔と打って変わって妖しい笑みを浮かべるシェリア。

  それを見てフェータの決意は大きく揺らいだ。俺、何されるんだ!?、と。


  「にゃー、二人ともなんだか良い雰囲気だけど、ボク達のこと忘れてもらっちゃ困るにゃ」


  いや、ホント最後のが無かったら良い雰囲気だったんだけど。


  「何はともあれよろしく頼む、フェータ」


  アリエルがフェータに手を差し出した。握手、ということだろう。

  もう言質も取られてしまったし引き受けるしかない。フェータはアリエルの手を握った。

  スベスベしてるなぁなどと役得を感じたのも束の間、信じられない力で握り返された。


  (コイツバケモンか……!)


  右手がもげるのではと思うほどの激痛の後、フェータは解放された。


  「どうした?」


  当のアリエルの方は涼しい顔だ。文句も言いたくなるが、やっぱり怖いのでやめた。


  「あ、あの……、フェータさん……、ひ、ひとつ、お願いがあるのですが」


  フェータの手からボーンを引ったくり、あれこれ調べていたマリナがフェータに恐る恐ると言った様子で話しかけてきた。

  こうして見るとそんな魔術にのめり込んだヤバい奴には見えないものだ。


  「ふぇ、フェータさんの予知って魔術の一種、なんですよね?ぜ、ぜひ見せてくれませんか?」


  「ああ、いいぞ。じゃ、今後の俺たちでも見てみるか」


  シェリアが魔力の反応からフェータが予知をしていることを勘付けたことからも分かるが、フェータの予知の力は魔術の一種だ。

  最もそれは特別な才能を必要とし、一般的な魔術とは根本的にかけ離れているため今のところフェータ以外は使えるものはいない。と、あのカミサマは言っていた。

 

  そういえば最近あの耳障りな声を聞いていないと思いながらフェータは準備をする。とは言っても返してもらったボーンを床に突き立て目を閉じただけだ。

  トット村でジャックにやったようなある程度先の未来を見るときは触媒を必要とする。以前は水晶を使っていたもののどうやら(ボーン)が使えるらしいということが分かってからはフェータはこれを使っている。


  「予言官フェータ・フォロードの名に於いて汝らが未来を示そう。その定めが汝らを蝕む禍であれども後悔はあるまいな?」


  「はい!」


  マリナはすごい勢いで頷いた。

  ……まあ、口調を突っ込まれないのはやりやすいことだ。


  フェータが杖に力を込めると、フェータを中心として床に魔法陣が浮かび上がった。

  そして、フェータは瞼の裏の暗闇で未来を覗き込む……。


  沈黙の後、フェータは口を開いた。


  「この都に魔王が遣わし天地を揺るがす程のた魔物共の大軍勢が押し寄せるであろう。王の命にて戦士は平原に集う。今こそが汝らが力を示す刻である」


  自分で言っていて頭を抱えたくなるような未来だ。王都に魔物が押し寄せてくるなんて信じられない大問題だ。でも、そう出てしまったからには仕方がない。

  ただ何よりもフェータが気になるのは今こそがという部分だ。今こそなんて言われれば正に今この瞬間に戦いは始まるような……。


  バンっ!


  ギルドの入り口のドアが勢い良く開いた。そうして、入ってきた伝令は一言叫んだ。


「 現在、正門方向から魔物が王都に侵攻しようとしております!南ギルドにも応援を求みます!」


  何で嫌なことってこう覚悟する暇もなく突然やってくるんだろうな。


  臨戦態勢なシェリアを横目にフェータは憂鬱な気分になった。


 



 





 

 


 


 


 


 

 


 


 

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