7話 南のギルドの秘密
色々忙しくなったので本日から隔日投稿に切り替えさせていただきます。また余裕がでてきたら毎日投稿が出来るようにしたいと思います。
フェータとシェリアはギルドに入ってきた三人組のパーティーと向かい合っていた。
向かって左にいるのは、鎧を身にまとったいかにも女騎士といった感じの銀髪の女で右が白衣姿の青髪の少女。そして、その間にいる快活な笑みを浮かべ黒髪のショートヘアの上から同じく黒い猫耳を出しているのがフェータとシェリアに喋りかけてきた少女である。
「はじめましてにゃ。ボクはメルっていうにゃ。これからよろしくにゃ〜」
そう言って小柄な彼女はフェータとシェリアを上目遣いで覗き込む。
……すごいあざとい。が、フェータはもうほだされかけてた。 それに対して、シェリアはいつも通りの無表情だ。
「初めまして、メルさん。私はシェリア・カインネルと申します。こちらこそどうぞよろしくお願いします」
いつもながらの敬語でシェリアはそう返す。この真面目なそうな少女が、嬉々として戦闘に向かっていくとは誰も思わないだろう。
「俺はフェータ ・フォロードだ。よろしく」
フェータも顔を赤く染めながら短く自己紹介した。
「フェータとシェリアにゃ?いい名前にゃ〜」
そう言ってメルは笑う。
フェータはつい先程、「厄介そうな奴らが来た!」なんて思ったことはもう忘れていた。
「それでそっちの二人は?」
フェータはメルのパーティーメンバーの二人に目を向ける。
先に口を開いたのは凛々しい表情をした女騎士だった。
「……アリエル・プレシオンだ。よろしく頼む」
アリエルはそう言って軽く会釈した。堂々とした姿が様になっている美人だ。
「わ、わわ、私、はまま、マリナ、、トゥーラーです……」
ビクビクとしながら杖を必死に握りしめる姿は、守ってあげたくなるような可愛さがあった。
しかし、何にそれほど怯えているのだろう。聞いてみたフェータは後悔した。
「ふぇ、フェータさん怖いです……」
「……」
確かにフェータは真っ黒のローブを被っていて、そこから覗く真っ赤な赤い目はちょっと怖い。しかも、今はまんまドクロの杖を持っているのである。見た目の不気味さは相当だ。
それは自覚してるもののハッキリ言われると傷つく。
というか、この場にいる人間はシェリア含め美人、美少女が多すぎる。フェータは自分の存在が邪魔なのではと劣等感を感じた。
彼も身だしなみを整えればそれなりのものだが、それには気づかないようだった。
「大丈夫だ、マリナ。この男が変な気を起こそうものなら私が斬り伏せてやる」
そう言ってアリエルはマリナを庇うように前に立った。
「アリエル、ちょっと待ってにゃ〜。フェータはそんにゃに悪い人じゃにゃいと思うにゃ。見た目は変だけど」
思わぬ援護を受けフェータはさらにメルへの好感度を上げる。見た目が変と言われたことはスルーした。
「メルさんの言う通りですよ、マリナさん。フェータさんはそう怖い人ではありません。もしそうならそれこそ私が今に至るまでに斬ってますよ」
冗談めいて笑うシェリアだが、本当に斬られかけた覚えがあるフェータには冗談には聞こえなかった。
まあ、今言うことでもないと必死で恐怖を押し殺したが。
「そ、そうなんですね……。ごめんなさい、フェータさん」
「謝らなくてもいい。自分の見た目が不審者そのものってのは俺も分かってる」
五人はそれからも雑談を続け仲を深めていった。
こうなればある種当然というべきかメルがこんな事を言った。
「ボク、シェリアとフェータが気に入ったにゃ。二人が良かったらでいいけどボクたちのパーティーに入らにゃい?」
「メル、そんなに簡単に言っていいのか?私たちはまだ会ったばかりだぞ。まだ彼らの実力も分からない」
アリエルはメルの提案に難色を示したようだった。
しかし、メルの意思は固かった。
「いや、にゃんか勘なんだけどシェリアもフェータもすっごい特別な力を持ってる気がするのにゃ。アリエルも感じてるんじゃにゃいの?」
「しかしだな……」
図星だったようでアリエルは俯くように視線を逸らした。
「それなら一度お試しって事で組んでみたらいいんじゃないか?」
フェータはそう提案した。もう彼は彼女らが予言の書に記されていた「仲間」だと確信している。
「あ、でも、それはシェリアだけだ。俺は戦えないからみんなの足手まといになるだろうからな。そもそも俺は冒険者じゃないし」
「フェータさん……」
シェリアは何か思うところがあるようでフェータを見つめた。しかし、フェータはそれには気づかず自分に都合のいい形になるように口車を回す。
「ただ俺にはちょっとした情報力があってな。詳しくは後で教えるが、それで四人を王都からサポートしたいと思う」
思わず早口になったフェータだが、言いたいことは言えたと満足そうな表情を浮かべた。
しかし、その気持ちを邪魔するように横槍が入った。
『おい、フェータ。あっちの渋いおっさんがなんか言いたそうな顔してんぞ』
すっかり空気と化していたボーンだった。こやつは普通に声を出すことの他に頭に直接語りかけるようなこともできる。
今回は後者だった。彼なりに気を遣ったのだろう。実際、急にドクロの杖が喋ればマリナ辺りは卒倒するだろう。
(良いとこだったのに……、空気読めよ……)
フェータは同じく空気と化していたマスターを振り返る。彼はカウンターの奥で手招きをしてた。
そして、フェータは奥の方に連れてかれた。
「お前、正気か……?」
マスターがフェータにそう耳打ちをした。
「え?どういうことだ?」
「言っただろ……。この南のギルドにはロクな奴がいないって」
深刻そうな表情をしながらマスターはそう言った。
「って言うと?」
「王都のギルドは強いヤツが多い。でも、そういうやつらは得てして曲者ばっかだ……。だが、簡単に捨てるのはもったいない。そういうことでここには北で問題行動ばかりしてたやつが送られてくるんだ」
「問題行動……」
フェータは急に嫌な予感がしてきた。
「例えばマリナ。お前あいつのことどう思う?」
「どう思うって……、気弱な回復役みたいな?」
マスターは首を振る。
「気弱なのは確かだがそれは平時だけだ……。あいつは魔法の研究に熱中しててな。回復なんてもんじゃないブッとんだ規模の殲滅魔法を開発しては実験してる。その余波で森を焼き払ったり、山を崩したりしてここに送られた」
フェータはふとマリナの方を見る。とてもそんな人には見えないが……。
「で、アリエルの方はまあ真面目なんだが、その真面目さが行き過ぎてるというか……。騎士団に入っていた時に物資を着服してた上官を半殺しにして除隊された」
徐々にフェータの目が死んでいく。
「そして、メル。にゃーとか言ってるが、戦闘になったら獣の血が騒ぐとかいって敵味方問わず暴れまくる」
「……それマジっすか?」
「マジ 」
「本当に?」
「本当に」
完全に地雷引いたじゃん……。
フェータは今日一番の後悔をした。
『まあ、シェリアが四人になったみたいなもんだろ?』
「てめえ、杖折ってやろうか……」
しかし、恨み言を吐くフェータはふと思う。
あ、今日から俺、シェリアについていかなくていいんだった。
さっきシェリアの前でその意思は伝えたところだし、何も心配することはない。シェリアならどんな奴だろうが心配ないだろう。この一月、シェリアに連れられ各地で死にそうな目に合いつつフェータはそう確信していた。
何ら気負う必要はないとフェータは四人のところに戻る。
そして、シェリアは開口一番にこう言った。
「色々話し合いましたが、私はメルさんのパーティーに入ることにしました。ただし、フェータさんも冒険者になってパーティーに入ってもらいます。そして、リーダーはあなたですよ。フェータさん」
それはフェータにとって死刑宣告に等しかった。
活動報告でも書きましたが、Twitter始めました。
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