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1話 世界を変える出会い……、の予定

異世界モノ描いてみました。

  ギルティア大陸の東部に位置するトット村。そこは何の変哲もない山奥の田舎だ。しかし、一週間前からその平穏が少し乱れた。奇妙なよそ者がやって来たのだ。

  それは村の入り口に小さなテントを立て一日中座っている男。

  髪色は生れながら白で、瞳は赤い。顔立ちは整ってる方だが、髪はボサボサ、目にはクマと路上生活のせいで台無しになっている。それに加えボロボロのローブを被っているので、怪しいことこの上ない。村の女の子が男に睨まれたと泣き出したほどだ。まあ、クマのせいで目つきが悪いだけで睨んだわけではないのだが。

  ただ浮浪者にしては若く、男と言うより青年と言った方が正しいかもしれない。

  とにかく何かしら曰く付きであることは間違いない。そのため少々排他的なこの村の住人は彼には関わらない。中には若くしてこんなことをしている彼に同情する者もいるが、それにしても遠くから彼を眺めるだけだ。

 

  しかし、そんな中でも空気を読まず彼に絡む物好きはいる。狩人の青年、ジャックである。


  「よう、フェータ! 乞食は上手くいってるか?」


  「俺は乞食じゃなくて予言者だ!何度言わせるんだ……」


  このトット村は若者が少ない。だから、ジャックは自分と同じくらいの友人をいつも欲しがっていた。そんな中、村にやってきた乞食フェータ(本人は否定している)と自分が同い年だと判明し、それ以来フェータに絡んでいるのだ。


  「そうだった、占い乞食だったな!じゃあ、今日の狩りの調子を占ってくれよ」


  「結局、乞食かよ……。予言者っつってんのに」


  そう言いながらもフェータは水晶を取り出した。そして、それにフェータが手をかざすと複雑な魔法陣が水晶の中に出来上がった。


  「さて、無垢なる狩人ジャックよ、汝が定めを預言官フェータ・フォロードの名に於いて示す。なれど、其の定めは汝を混沌たる運命に呑み込むことになろう。後悔はないな?」


  「そういう前置きいいから。あと、その鬱陶しい口調やめてもっと分かりやすく言ってくれ」


  水晶を覗き込んでいたフェータは無言でジャックを睨んだ。本人自身もこの芝居がかった口調を気にしているからだ。ただしルーティーンのような部分があり中々やめられない。

  またフェータは水晶に視線を下ろし、しばらくして顔を上げた。

 

  「良好、ラッシュボアがたくさん狩れるでしょう。ただし、深追いに注意。これで満足か?」


  「おう!いやー、テンション上がってきたわ!ボアの肉うめえからなー」


  「そりゃ良かった、報酬よこせ。飯でいいぞ」


  そう言うフェータを見てジャックは笑った。


  「流石、乞食だ。そういうとこはキッチリしてんな〜。そりゃ生活かかってんもんな!」


  「だから、乞食じゃねえ! 俺は自分の仕事をして、その正当な報酬をもらおうとしているだけだ。今日も飯頼む」


  「しょうがねえなあ」


  フェータは心の中でガッツポーズをした。結局、ジャックに食事を恵んでもらわないと生活が厳しいのは事実なのだ。


  「なんかフェータが占いしてる時の口調って異世界から来た勇者達が言ってる「ちゅうにびょー」ってやつじゃないか?」


  「よく分からんが多分違う! 大体、真の勇者はあいつらじゃなくて別にいるからな」


  「出たよ、それ。お前の占いはすげーけどそれだけは信じられねえわ」


  「あ!? これこそが一番大本命だわ! ていうか、何度も言ってるけど占いじゃなくて予言だから!」


  フェータが語るには、彼は予言者だという。そして、彼の「予言の書」によるとこれから世界に混乱が巻き起こる。しかし、それを収めるのは異世界から召喚された勇者達ではなく、とある新人冒険者の少女らしい。そして、その少女はいずれこのトット村に来るという。フェータは、この村でその少女に彼女が勇者であることを伝え、旅の道筋を示すためにここに来たのだという。

  自分は予言で真の勇者を支え、英雄として歴史に名を刻むのだとドヤ顔で語るフェータをジャックはまた笑った。


  「大体、予言者って何だよ?うさんくさい」


  「うっせえな! 俺だってなれるなら勇者とかになりたかったよ! でも、こうやって予言者に選ばれたんだからそれを頑張るしかねえだろ!?カミサマもガヤガヤ言ってくるしよー!」


  「何?カミサマって?」


  「なんか俺の頭の中に語りかけてあれこれ無理難題押し付けてくるんだ」


  「変な薬でもやってんのか?」


  「ちげえよ! てめえも王都の連中と一緒か? 俺が勇者を導いた英雄となった日に後悔するからな!」


  「ハハッ、何言ってるか分かんねーけどやっぱフェータはおもしれーな。じゃ、俺は狩りに行くわ。あんまり遅れたら師匠にブチ切れられるからな」


  勇者探しがんばれよーと手を振るジャックにフェータは軽く殺意を覚えた。

 

  騒がしいのが居なくなったとフェータは見張りを再開する。彼がわざわざ村の入り口にテントを立てているのは、いつ勇者が来ても見逃さないためだ。

  しかし、この辺鄙な村を訪れる人なんて滅多にいない。今日も予言の日ではなさそうだとフェータが落胆した時だった。


  「すみません、ここがトット村ですか」


  透き通った綺麗な声がフェータの耳に入った。彼がそちらに目を向けると、そこには信じられないほどの美少女がいた。

  サラサラとした金髪のロングヘアーにクリクリとした美しく大きい碧眼。顔の造形はもはや神の最高傑作なのではないだろうかと思えるほど整っている。体は細く華奢だが、女性的なラインは出ていて、男を殺すであろう大きな爆弾を二つ装備してらっしゃる。はっきり言えば巨乳だ。


  「何ですか、私の顔をジッと見て。何か付いているのですか」


  「あっ、いや……」


  君に見惚れていたなんて返せるほどフェータは女性慣れしていない。

  どう返そうか悩んでいたフェータだが、あることに気づき「預言の書」を取り出した。

  やはり、容姿が勇者の記述とピタリと一致する。それに、容姿に意識がいって気づかなかったが、彼女は剣を腰に差している。ということは彼女は戦闘を生業とする仕事、つまり、冒険者だということだろう。


  「本なんて取り出してどういうつもりです? 私と会話したくないってことですか?」


  「あなたの名前はシェリア・カインネルじゃないでしょうか?」


  「え? なぜ知ってるのです?」


  とうとうこの日がやって来たようだ。フェータは自分の体が震えているのに気づく。だが、これは武者震いだと言い聞かせ、フェータは立ち上がる。


  彼女にその運命を伝えるのだ。


  「若き冒険者、シェリア・カインネルよ!汝が運命は今、廻り始めた!汝はこの悪が蔓延る混迷の世界を救う勇者なのだ!」


  「見た目どおり頭のおかしい浮浪者だったようね。私は忙しいから話しかけないで」


  「いや、ちょ、、待っ……」


  村の方にスタスタと歩み去っていくシェリアを見て、フェータは自分の言動を振り返る。


  「俺がちゅうにびょーだからか……?」

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