鏡よ鏡、107
「順調」という言葉が産婦人科医の口から出てきた。
「わたしは無を有に、ゼロをイチにするのだ」
「鉢替えを繰り返しての植樹とかじゃないぞ。一粒の種をわたしのからだひとつで人間の完成品を産み出すのだ」
「神になるのだ」
病院を出るとひとみはスーパーでアボカドと枝豆とアーモンド、それにキムチと紙パックの甘酒を買って帰宅した。よっこらせっとソファーに座るとお腹を両手でなで回しながら
「それにしても…」
「秀は…あいつは何をしとるんだ?」
「わたしはもうすぐ神になるんだぞ?信心が足らん。忠誠心が足らん!」
「わたしから連絡すんの?あいつが連絡するって言って帰ったんじゃん」 「まあ…でも…このまま連絡なくても電話しないな、わたし」
「でも、自分の子どもなんだから一回くらいは抱いといても損はないよ、うん」