9/23
再会(8)
「主上?!」
その名前が聞こえていたのか、玖苑が目を見開いて驚いた。
紅焔様は私が羽織っている外套に手をかけると、顔を近づけて来た。
「……っえ、」
唇が重なりそうになった直前、後ろからグイッと強い力に引っ張られ、紅焔様から離れた。
「……っ主上!!あなた気は確かですか?!」
私を引っ張ったのは、玖苑だった。
玖苑が引き離してくださらなければ、わたくしは今頃、紅焔様と口付けを交わしていたでしょうね。
でもそれはわたくしではなく、わたくしとそっくりな母と間違えてのこと。
「鈴鳴様はもうこの世にはいないお方です。彼女は鈴鳴様の愛娘、夜夜ですよ?!」
玖苑の焦った表情に、紅焔様が私の顔を見てハッと我に返った。
「……っ夜、夜?!」
口元に手を当て驚いているところを見ると、どうやら本当にわたくしが母にしか見えていなかったようだった。
「悪かった、夜夜。あまりにも鈴鳴に声がそっくりで……。」
「わたくしは母様の娘ですもの。似ているに決まっていますわ」
私がそう答えると、紅焔様はバツが悪そうな表情で私から視線をそらす。
「……あの、主上。中へお入りください」
「夜は冷えます故、お体に障っては大変ですよ」
紅焔様が現れてからというもの、1度も口を挟まなかった近衛が口を開いた。




