再会(6)
「……そうでしょうね。いくらわたくしが皇宮にいなかったとはいえ、噂はどこに居ても流れてきますもの」
例えば、第二公子の後宮に1人若い女性が入った……とか私が聞きたくない噂が多い。
だが、後宮にはまだ沢山(主上の)妃嬪が暮らしいている。
だから、第二公子が即位するまではきっとあまり新しい妃嬪は入らないと思う。
「では、殿下が1人若い女性を後宮に入れたのはご存知ですね」
「えぇ、もちろん知っていますわ」
私が最近聞いた噂はまさにその話だった。
「……恵 憂恋なのでしょう?」
「はい」
恵 憂恋は私が今まで生きてきた人生の中で最も嫌う人物だった。
今では、嫌っているだけでなく恨みや憎しみもあるけれど。
だって彼女は……!
「夜夜、大丈夫ですよ」
「……え?」
大丈夫って、何がですの。
「殿下は恵 憂恋と1度も床を共にしていませんよ」
玖苑の言葉に私は思考が停止した。
後宮にいる殿下の妃嬪はたった1人……。
その1人である彼女と殿下が1度もない、と?
そんなこと、後宮でありえるの?
「夜夜、聞いていましたか?……夜夜??」
「……っわたくし、」
思わず涙がこぼれ落ちる。
正直、殿下のことは諦めかけていた。
本当に殿下が記憶喪失なら、きっともう何度も何度も彼女と夜を過ごしていたのではないかと。
でも、それは違っていた。
「うわ……っ何で泣いてるんですかッ?!もう、本当、夜夜の考えはよく分からないですね」
「だって、わたくしは……っ」
「あ〜っもう、さっさと泣き止んでくださいよ。困るんです。あなたが泣いているのは見たくないですし、あなたをちゃんと理解できるのは殿下だけなのですからね」
玖苑はそう言って私の目元に若草色の深衣の袖を寄せて、軽く拭ってくれた。
「大丈夫ですよ。私が見ている限りでは夜夜以外の女性にはまだ1度も触れていませんから。殿下は望んで妃嬪を迎えた訳ではありませんし」
「……っよかった……。」
「夜夜は、今でも殿下がお好きなのですか」
玖苑は穏やかな笑みを浮かべて問いかけてきた。
私は唇を噛み締めてコクリと頷く。
「もちろん、わたくしは今でも殿下のことをお慕いしておりますわ」
きっと、わたくしは一生殿下を愛し続ける。
例え殿下の記憶が一生戻らず、わたくしに見向きもしてくださらなかったとしても…………。




