皇宮の日常(3)
「切り替えて、荷解きを始めましょうか」
「……っそう言えば、"あの双子"はどうしたんだ!」
持ってきた荷物に手をつけた時、淑栄さんが血相を変えて私の肩を掴んで振り向かせた。
「ふふ……っ淑栄さん、そんな心配なさらないで大丈夫ですわ。双子なら荷物の中に……」
私が荷物を開けると、中から子供が2人顔を出す。
「葭煠、皇霞、長い間こんな狭いところにごめんなさい。もう大丈夫よ」
「「かあしゃま……!」」
中から飛び出してきたのは幼い双子の姉弟で、正真正銘わたくしの子供。
真紅の瞳を持つ姉の方は汀 霞煠で、瑠璃色の瞳を持つ弟の方は汀 皇霞だ。
「相変わらず、本当に可愛い双子だな」
それは可愛いに決まってますわ。
何故ならこの双子の父親は……
「さすが、煌架様の血を受け継ぐ子だ」
煌架様なのですから。
「かあしゃま、かやいーこ?」
「えぇ、もちろんですわ」
「おーかは?」
「皇霞もいい子に決まっていますわ」
私はふふっと笑みを浮かべた。
「かあしゃま、このねーねは?」
葭煠が淑栄さんを指差しで首を傾げる。
「私は淑栄と言う。葭煠と皇霞のお母様の友人だ」
淑栄さんと葭煠達は何度か会ったことがあるけれど生まれて間もない頃でしたから覚えていなくて当然ですわね。
「しくえい……?」
「はは……っ言いづらい名前だったかな。しーって呼んでくれ」
「しー?」
「あぁ」
「しー!」
葭煠と皇霞は楽しそうに淑栄さんにへばりつく。
私は思わず笑いがこみ上げる。
淑栄さんは元々子供が産めない体だと昔聞いたことがある。
実際、淑栄さんと桐吾さんの間に子供はいない。
誰もその事には触れないけれど、彼女は子供が大好きだと言っていた。
だから、葭煠と皇霞が生まれたとき一番に喜んで下さったのは淑栄さんでしたわ。
「そう言えば、夜夜。葭煠と皇霞はどうやって面倒見るつもりだ」
「あ……っ考えていませんでしたわ」
「私がずっと面倒を見れたらよかったのだが、夜夜の専属になってしまったからな……。まぁ、殿下の側には玖苑もいるから大丈夫か」
「そうでしたわね……。あ、濘音さんはまだ現役皇宮料理人ですか?」
玖苑の奥さんである采 濘音さんは2児の母親であるが、皇宮料理人長(桐吾さん)の右腕だ。
「濘音……?あぁ、濘音なら妊娠中で産休してるって言ってたぞ」
「ちなみに何ヶ月です?」
「まだ3ヶ月で安定してると言っていたな……。あ、濘音にお願いするか」
「……っえ、そんな!妊娠中の濘音さんに葭煠と皇霞の面倒は大変ですわ」
葭煠と皇霞は今は大人しいけれど、一度泣き始めたらどうにもならない。
まだ、産まれたばかりの頃は1人で2人をみるのは大変でしたわ。
「大丈夫だ。もう3人目となると結構慣れてきてるみたいだからな。今から行こうか」
「えぇぇぇぇっ」
私の抵抗も虚しく、葭煠と皇霞を抱き上げると淑栄さんは私を連れて東宮を出た。




