皇宮の日常(2)
「煌架が、笑った……?」
玖苑が唖然として、煌架様の出ていった後ろ姿を見つめる。
それって、煌架様はいつも笑わないということ?
元々そんなにいつも笑っているわけでは無かったのだけれど、たまに見せる笑顔がわたくしは好きでしたわ。
「煌架様、笑わなくなってしまったのですか」
「あぁ、全っ然笑わないですね」
無表情で怖いくらい、と肩をすくめる。
「それはそれで、いいのかもしれませんわ」
「は?何でですか!?」
「何でって、誰も煌架様の笑顔を見ないで済むからに決まってますわ」
「夜夜はどうしてそう思うんですか」
「一言で言えば、独占欲でしょうね」
煌架様の笑顔はわたくしのもの。
他の人に見られたくなんてありませんわ。
「……夜夜って、たまにとんでもない事いいますよね」
「女なら誰でもそうではないか?好きな男のことは他の人に見られたくないって、私だって思うぞ」
気が付かないうちに部屋の入口に立っていたのは、荷物を持って帰ってきた淑栄さんと彼女の旦那さんである、霖 桐吾さんだった。
彼の手には重そうな荷物。
きっと、淑栄さんの荷物を持ってここまで彼女を送ってきたんだと思う。
「淑栄さん、お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」
「ねぇ淑栄、何も知らない人が見たら君が主人かと思われるような光景だよ」
桐吾さんが苦笑して私達に一礼した。
「桐吾さん、お久しぶりですわ」
「夜夜ちゃん、久しぶりだね」
桐吾さんは淑栄さんとは違って、物腰柔らかで穏やかな人だ。
確か、ここ(皇宮)で料理人長をしていると前に淑栄さんが言っていた。
「姉さん、後は頼みます。私は殿下の元へ行ってきますから」
「分かった、任せておけ」
相変わらず男より男前な話し方で、声だけ聞いたらどっちが男か分からない。
まぁ、淑栄さんのお母様もわたくしの母も似たようなものでしたけど。
「淑栄、僕はもう戻らないと」
「あぁ、そうだったな。わざわざ手伝ってくれてありがとう」
淑栄さんが照れくさそうに笑うと、「僕は淑栄に会えたからよかったよ」とにっこり笑って彼女に口付け、桐吾さんは東宮を出て行った。
「……っ人前でこんなこと!//////」
「相変わらず、仲睦まじい夫婦ですわね」
羨ましいですわ、と私は彼女をからかう。
だけど、私の心情は複雑。
私だって、本当なら今頃煌架様と婚姻して……。
「……っそう、だな。だが、いつもあんなじゃ調子が狂う」
淑栄さんは私の心情を読み取ったのか一瞬表情を曇らせるが、すぐに笑みを浮かべ肩をすくめた。




