駆け落ちversion2
※キチガイです。
「どこに行った?」
誰かを探す声が辺りに木霊していた。
「こっちにはいないぞ」
「あっちだ、探せぇ」
誰かを探していた者達はそれがいないことを確認すると他の場所に探しに行ってしまった。
「ふぅ、行ったか」
路地に置いてあった青いゴミ箱の中から声がした。
ゴミ箱の蓋が開くと中から二十代前半の男が出て来た。
男は辺りを見渡し、誰も居ないことを確認するともう一つのゴミ箱の蓋を開けた。
「出てこいよ、明美」
男はゴミ箱の中の可憐な乙女に手を伸ばした。
「ありがとう、淳一郎さん」
明美と呼ばれた乙女は微笑みながら淳一郎の手を取った。
淳一郎はもう一度辺りを見渡して、それから地図をだし、自分達の居場所を確認した。
「今の内に、早く」
「はい」
家の孫娘、淳一郎は極一般な家庭の長男だった。
ある時、明美と淳一郎は禁断の恋に堕ちてしまう。
しかし、明美の結婚が決まったと聞いたとき、淳一郎は明美を我が物にする為に駆け落ちし、外国に行き、何物にも拘束されない幸せな家庭を築き上げようと思い今に至る。尚、これについては勿論、明美の同意の元である。
二人が大使館まで数百メートルを切った時、目の前に五人のサングラスにスーツという如何にも役人らしい服装をした男達が現れた。
「さぁ、帰りますよ」
男の一人が明美に手を伸ばした。
が、その手は届かずに地に落ちた。
「武道立ち技、跳躍+キック即ち、マーシャルアーツ」
淳一郎が放った蹴りは男の急所を捕え天高く吹き飛ばし、明美と淳一郎の後ろに落とした。男は死んでいない様だが病院送りは回避できないだろう。
「さて、次は誰かな?」
淳一郎がそう言った時、明美が抱きしめて来た。
「きゃー。淳一郎さん、カッコイイ。私一生、淳一郎さんに付いてく」
「ははは、嬉しいな」
そのラブラブ度にイラついた役人Bが懐から銃を取り出した。
「調子に乗ってんじゃねぇぞ」
役人Bはそう言うと持っていた銃の引金に指を掛けた。
「死ねコラボケナスがァァァァァァァァァ」
淳一郎は明美を庇い、前に出た。
甲高い銃声と鈍い音が同時になった。
「ぐっうぅぅ」
役人Bの銃からは何も発射されておらず、代わりに役人BからEまでが地に伏せていた。
倒れた役人の後ろには数十人の人影があった。
「待たせたな、相棒」
「間に合って良かった」
「ふふふ」
彼らはそれぞれ違った格好をしており個性も違うように見えたが一つだけ同じ意志があった。それは、人様の一生に一度きりの恋愛活動を妨害する輩には天罰をである。
「おまえら」
淳一郎はそいつらと抱き合うが直ぐに状況が変わった。
キャタピラと大きいタイヤの音、それから連なる足音が後ろからして来た。
淳一郎達が後ろを向くと、大量の戦車や装甲車、並びに火器で武装した軍隊がゾロゾロ現れた。
淳一郎と明美が驚愕していると彼らが前に出た。
「行け。ここは俺達が喰い止める」
淳一郎はその言葉に反し、声を上げた。
「いや、でも……お前達は」
淳一郎が言いかけたが彼らの意志は変わらなかった。
「大丈夫だ。俺達の事は気にするな」
「二人が幸せになれば俺らはそれで十分だ」
「主ハスターの元、淳一郎と明美に御加護が有らんことを、あいあいはすたー」
「お幸せに」
「結婚式には呼んでくれよ。司会をやってやるから」
「信愛なる我らの同志、雛菊淳一郎と光明院明美殿の幸せを願って乾杯」
「「「乾杯」」」
その掛け声を合図に彼らは軍隊に向かって行った。
その直後に爆発音がし、戦闘が開始された。
「行こう明美、幸せの為に」
「はい、淳一郎さん」
目尻に涙を浮かべていたがそれ拭って明美は未来を見詰めていた。
二人はまた走り出した。
大使館はあと数十メートルを切った所で今度は先程より大勢の人々が待ち構えていた。
「ちぃ、またか」
淳一郎がそう言いながら、構えたが今度は違ったようだ。
「きゃー、二人ともラブラブねぇ」
「ほらほら、これ持って、幸福屋さんのケーキよ」
「おめでとう」
「幸せになってね」
などの二人を囲む歓喜の声の群勢……一般市民がそこにはいた。
そこに居た一般市民は二人が邪魔されないように人で出来た通路を作り、役人などを二人に近付けさせないようにしていてくれた。
「みんな、ありがとう」
明美は嬉しそうにしていたが淳一郎は軽く会釈をしながら大使館に向かった。
大使館の前に付くと警備員がにこにこしながら近づいて来た。
「明美様と淳一郎様だね。中で外交官がビザの発行手続きと亡命の用意をしています。さぁ、早く中に」
二人は警備員に言われるが儘に大使館の中に連れて行かれた。
「待っておりました。さぁ、こちらへ」
中に入るとメイドのような人達が待っており、案内をしてくれた。
案内された場所に付くと、書類が机の上に並べてあり、それにサインする事で亡命が決まった。
二人は丁寧に、一文字一文字に愛をこめて書いた。
書き終わると中庭に配備してあったオスプレイに乗り込むように指示された。
「やっと、ここまで来たね」
「はい、もう少しで淳一郎さんと自由になれます」
二人は意気揚々と乗り込んだ。
それから二年後……。
青く綺麗な海が広がる丘の上で鐘を囲みながら結婚式を挙げた。
そこには、友人や両親、そして彼らが招待され幸せなひと時を送った。
「えー、淳一郎殿、明美殿、二人はどんな苦難にも立ち向かい二人で乗り切り、幸せな家庭を築くことを誓いますか?」
「「はい、誓います」」
「では、誓いの印を」
二人は寄り合い、唇を重ね合った
ここから、二人の長い愛の物語りが始まる。
version2となりました今回の駆け落ち。
前回よりキチガイ度が増し、作者の暴走具合が良く分かる一品。
コンセプトというか内容的にはほぼ一緒の展開なのに何故、斜め左上の方向に進んでしまうのか?
分けが分からない。