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姫様転生 -運命の歯車をぶち壊せ-  作者: ねこねここねこ
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ようやく始まる異世界生活 -出発の時2ー

「まさか段取りを飛ばして店に来るとは・・・。」

 

 スレンダーで身長が高く、筋肉質であるのが見て取れる。

 それは無駄な筋肉ではなく、つくべくしてついた必要な筋肉であり、しなやかでバネもありそうなアスリート顔負けの体をしている。


 「貴方たちは私と事を構える気はありますか?」


 その女は腰から二本の短刀を抜くと構える。

 飛び出しかけていた男の仲間達は首を振る。


 「冗談だろ、この街でアンタに手を出すやつはいないよ。なんでアンタみたいな上級の・・・」


 「どうでもいいでしょう。口を紡ぎなさい。」


 「勘弁してくれ。アンタのツレだと思わなかったんだ。そいつは俺達が後で連れて帰るから。」


 「そ。」


 女は短刀をしまうと細長いナイフのような物を仲間であろう男に投げつける。

 

 ストッ


 見事なコントロール。男のこめかみを掠り壁にナイフが突き刺さる。


 「今からこの下男さんと話があるのです。後でと言わずにこのゴミを即片付けてください。」


 壁に寄り添ったままズルズルと腰から落ちていく男の左右にいた男たちが慌てて目の前で倒れている男を回収していく。


 女は店を見渡す。こちらをチラチラと見ている人たちが相当多い。

 僕が彼女に何の依頼をしているのかが気になるようだ。下男の男が彼女(有名人?)を雇ってどうしたいのか。

 暗殺の依頼なのだろうか。それとも、逃亡の依頼だろうか。儲け話か?あの下男は金持ちなのか?貴族の使いだろう。キナ臭いな。など憶測も飛び交っているようだ。

 

 「・・・うるさいですね。黙らない方にはナイフを一本プレゼントする事に致しましょう。」

 

 彼女の呆れた呟きに酒場が静まり返る。どうやら彼女は相当の腕利きで皆に恐れられているようだ。


 「失礼。ここいいかしら?」


 彼女は僕が先程座っていた場所を指さす。


 「え、ええ。」


 僕は仕方がなくその正面に座る。何でわざわざ僕の席にすわるのだろうか。


 「何故わざわざ僕の席にと思ったのかしら?」


 心を読まれてる!?


 「心を読まれてる!って驚いているわね、ふふ表情を読んでるだけよ。貴方わかりやすいから。」


 そんなにわかりやすい顔をしているのだろうか?しているのだろう。

 彼女は僕を見てふふふっと笑っている所をみるとまた表情にでていたのだろう。

 (ふふふっと棒読みで笑っているが口元しか笑っていないのが少し怖い。)


 「さて、短刀直入に。私がモナから受けた依頼は二つ。」


 そういうと人差し指を一本立てる。


 「一つ目は奴隷の契約書の破棄。これは正規の奴隷商に行って取り消しをしないとならない。呪いが消えないから。ちなみに契約書を盗んできたので金貨3枚。仲介手数料とかかった経費を上乗せして金貨5枚。」


 「はあ。今お支払いした方がいいですか?」


 「・・・旅の終わりに纏めてでいいですが。貴方・・・いや、いいです。」


 不思議そうにこちらを見ている。


 何か変な事でも言ったのか?また表情に出ているといけないので会話を振ることにする。


 「でも、よく手に入りましたね。たしか、騎士団長のクライムの実家にあったんですよね?」


 「ええ、まー蛇の道は蛇というか。たまたま隙があったからなのだけれど。追っても来ないようだし不思議。私が優秀だからとか?」


 「へー・・・」


 凄い?凄い?と聞いてくるが、そもそもこの世界の奴隷制度をしらない僕には何の事だかさっぱりわからないのだ。前世の日本には奴隷制度はなかったのだから。なので無難に相槌をしておく。


 「へー・・・て、つまらない反応ね。私を知らないようだし。」


 「そう言われても。」


 「・・・まーあの妹がお金の心配はないと言っているから大丈夫でしょうけど。」


 「妹?」


 「モナの事よ。本当の妹というわけではないのだけれど。元ギルドの同じメンバーで可愛がってあげてたのよ。仕事でしくじって奴隷契約を結ばされたみたい。まあこれで自由になってもメイドは続けるみたいなのが気になるのだけれど。メイドなんてあの娘には似合わないのに。まあ何かあった時に逃げても大丈夫なように保険で奴隷契約を何とかしておきたかったみたい。偵察のスキルが高かったからもったいない。」


 懐かしそうに目を細める。

 モナって冒険者だったのだろうか。ドジで普通なイメージしかないのだが。

 むしろ、どじっ娘メイドとして貴重な適職ではないだろうか。


 「ところで、もう一つの依頼って?」


 「貴方のことよ。モナに依頼したのでしょう?遠くの街とかで剣とか魔法を教えてくれそうな凄い強い化物みたいな人の所に捨ててきてっていうなんともアバウトな依頼。まー報酬がよかったから受けたけれど。変わってて面白い世間知らずの下男て見てみたかったし。」


 ・・・モナよ、次に会う機会があったら覚えておれよ。


 「僕はどこに連れていかれるのですか?」


 「ちょっと遠い所。国で言うと隣国のエメラルダ国。まー国境の近く。そこに、元エメラルダの剣聖と呼ばれていた引退したオジサンがいるのよ。で、妻がサファリア国の魔女と呼ばれていた人でね。剣と魔法を習うには持って来いよ。もっとも・・・貴方があの二人を説得できればだけれども。」


 凄い事になりそうだ。剣聖とか魔女とか。魔法は補助として使えるようになればいいだろう。剣に炎とかやどしちゃって魔法剣とか。それにやはり剣聖という言葉には惹かれる物がある。剣道と真剣の殺しの技では全然違うのだろうが。全国大会優勝もできそうなくらいの実力を前世では持っていたのだ。

 それが覚醒して剣士の力に目覚めて勇者とか剣聖とかになってしまったらどうしよう。


 「ねえ、聞いている?下男さん。」


 呼ばれてますよ下男さん。


 「そうかー剣聖か~、いや~まいったな~」


 「・・・たしかに変な子。大丈夫かな。」


 ため息交じりに呟き、説明を放棄した女がビールを注文しはじめる。

 

 が、妄想の世界に入り込んでいる僕には全く聞こえていなかった。

 

 剣聖に僕はなる!





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