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姫様転生 -運命の歯車をぶち壊せ-  作者: ねこねここねこ
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剣聖と魔女

 「ここよ。お疲れ様。」

 

 ウェルチが汗を拭うと荷物を下ろす。

 エドラムの街を出てから目の前に見える家にたどり着くまで4日間が経っていた。

 冒険者として旅になれたウェルチとルークと元々森などが住処のエルフのシルフィとは違い、部屋にいる事が多く頭脳担当?のメアリと元貴族のエレナを連れての歩きの旅は思っていたよりも進みが遅かったのだ。


 「短期間だったけ面白かった。後はあなた達次第。」


 ウェルチの話によるとここに例の目的の二人がいるのだそうだ。


 「ここに剣聖が・・・」


 私はきっと少年のように目を輝かせていただろう。


 「マリアこれでお別れね。また機会があれば仲間として会えることを・・・。」


 仕事は終わったというと旅費の精算をきっちりと行いウェルチは物凄いスピードで一人下山していく。

 

 「・・・化物。」


 エレナは呆然として見送り、シルフィは手を振り続けている。

 残りの二人はこの手の別れは慣れているのだろうか先程一言何かを話しただけで少し見送ったあとはさっさと置いた荷物の整理をし始めていた。


 私は正直一緒に王都から旅した仲間として、またタコの化物を倒した仲間して皆ともう少し別れを惜しむものだと思っていただけに物悲しい感じではあったがウェルチの性格と仕事の時の割り切る態度を思い出しこの方がウェルチらしいかと視界から消えるまで見送った。


 「で、どうしましょう?留守みたいですが。」


 さっさと荷物を整理し別れを惜しんでいる私とシルフィを他所にもう家に誰かいないかノックをし終えていたメアリが判断を仰いでくる。

 

 改めて目の前の家を見る。街のような固い岩や石や木を組み合わせたような家というよりも元の世界でも目にしたことのあるコテージに近いそれは少し年季が入っているものの、奥にある湖や静けさなどから金持ちの隠れた避暑地にある別荘にしか見えない。

  

 「どうでも・・・いいけど、目的地に着いたと思ったらどっと疲れましたわ。お願いだから休ませて・・・」


 元貴族のエレナが倒れるように座り込む。

 魔物に会うたびキャーキャー騒いでは逃げてとある意味大はしゃぎしていたのだ無理もない。

 その度に、ルークとウェルチが活躍し魔物を撃破していったのだが。


 「エレナさんはまだご主人様と同じで子供なのですからね・・・最年少のご主人様が堂々とし過ぎてる事が異常なんです。けれど引きこもりで体力がなく少し歩くだけで座り込むようなメアリさんのように一部が無駄にでかいだけの大人になりたくなければこれから鍛えないといけませんね。」


 「そうね・・・それはそう思いますわ。」


 「それってどういう意味ですか?エレナさん、シルフィさん。」


 腰に手を当て前かがみに文句を言うメアリの弾む胸に対して二人から舌打ちが聞こえてきた。


  うん。怪物討伐の時から一週間近く共にしてきたパーティーのはずなんだけど・・・将来が不安でしかない。

 

 「どうやら家の方はいないようですね・・・少し辺りを見回ってきますね。」


 家の少し向こうに見える湖の方にルークは行くのであろう。私もそれについて行くことにする。

 

 「抜けるのに慣れていますね。」


 「まあ、冒険の中ではたまにある事だよ。特に女性が多いパーティーの時は色々と大変なんだよね。」


 男性パーティーで固まった中に女性がいるとそれもそれでトラブルが多々あるようだ。人間、どこの世界に居ようがどうしてもそういう方向に話を持っていきたがる傾向に違いはないらしい。


 ギャーギャーと言い合っている三人を残してルークと二人で湖のほとりまでやってくる。

 

 「うわーすごい湖。魚が見えるし、そのまま水が飲めそうなくらい澄んでいるよ。」


 フードを上げ湖を覗き込むと顔をそのままつけてみる。


 「冷たい!でもさっぱりする。」


 「ははは、本当に気持ちよさそうだね。じゃあ僕も真似する事にしよう。」


 ルークは手で水を救うと顔を洗う。沢山歩いたからね、と笑いかけてくる。

 

 おや、兄と妹みたいなフラグが立っている。もしくは、若い父親とその子供か?


 「よく見るとそんな可愛らしい顔をしていたんだね。」


 しかめっ面や緊張感を浮かべた顔しか見ていなかったしフードを被っている事が多かったからとルークは言う。


 (そんなに眉間に皴ばっかり寄せていただろうか?)


 「はははっ、またそんな風にむくれて。さっきの方が歳相応の表情をしてて可愛かったよ。」


 ルークの顔は整っているが冒険者であり剣士でもある彼の顔は戦いで追ったのであろう傷などがよく見るとチラホラとある。そしてルークの顔には顎のラインに一筋のよく見ないと見落としそうな薄い線が入っている。

 

 服を捲って水をすくっていたその腕にも無数の切り傷の痕が残っている。


 「こうして君と二人になるのは4日前のあの丘以来だね。」


 「日数で言われるとたった4日前のような気はするけど・・・こうしているともっと時間がたっている気はする。」


 たしかにここ四日間は共に旅をしていた事からほぼ皆と一緒に居ることが多く、こうしてそのうちの誰かと二人きりで話すことなどは少なかった。

 

 「こうしてみると普通の少女なのにね。何故?盗みをしたんだい?」


 正義感の塊のようなルークはまだ奴隷商での売買の件に思う所があるようだ。助けてあげたのにそれはとも思うのだが。


 「盗んだわけじゃないよ。貰ってきたが正しいのだけれどもどうせ納得しないでしょ。元々あれは私の宝石になる予定だったものだった(はず)と言っても信用してくれないでしょ?」


 「そうだね、君みたいな少女があんな大金や宝石を普通の手段で持っているとは思えないからね。かと言ってどこかの貴族の娘にも見えない。」


 それはちょっとプライドが傷つく。一応一年は姫としての生活をあの王城でしていたのだ。


 「これでも全然貴族の女には見えない?」

 

 ワザとらしく習った仕草をして見せる。スカートの代わりに汚れたフードの裾を広げて膝を曲げてみる。


 「姿勢は綺麗だけどその汚れた服装でされても・・・貴族の令嬢はもう少し男性をたたせるように話をするよ。社交場では女性は男性に自分を弱く見せるしね。」


 (ムッ、本気でそれっぽくして見たのに効果がないだと?)


 悔しくなりエレナを引き合いに出してみる。


 「でも、エレナだってそうは見えないよ?」


 「彼女の一族はプライドが高かったからね。でも、社交界などでは別人のようにエレナさんはおしとやかだったらしいよ。」


 あのエレナがおしとやか・・・・。


 想像し噴き出しそうになるのをこらえる。エレナは今だに自分は貴族だという誇りを捨てていない。ある意味でその精神的なタフさには尊敬させられるものがある。逆に、周りのメンバー、環境に合わせる努力もしてもらいたいとも思うのだがこれはおいおい考える事としよう。

 

 「話を変えようか。元剣聖様・・・本当に存在していてここに住んでいるんだね。噂では聞いれいたけれど。僕にとっては手の届かない雲の上のようなおとぎ話に近い存在だったから本当に会えるかもしれないなんて。」


 「いいですよね!剣聖って響きよくないですか?憧れます。」


 「はは、わかるよ。僕も昔はそうだったからね。でも、僕には無理だったけど」


 「無理だった?ルークもなろとしてたの?」

 

 「まー・・・・ね。」


 「どんだけ凄いんですかね?ここにいる元剣聖って。アシラッド国にもいますよね?クライムとかいう。」


 ふと王城にいたクライムもそう呼ばれていた事を思い出したので知っているか聞いてみる。


 「クライムか。アイツは強いよ。僕では三合くらいしか持たないんじゃないかな。」


 三合?よくわからないがそんなに強いのかクライムって。


 「ん?ああ、もしかして三合がわからなかったのかい?すれ違い様の切り合いで三回までしか相手にならないってことだよ。」


 基準がわからないから何とも言えません。

 剣道で言うと区大会の優勝者が全国大会のホンモノと戦って開始直後の奇襲は捌けるけど試合としては二本連取をされて負けるような感じだろうか?


 「僕も相当剣の練習をしたんだけどね。見ててご覧。」


 腰の剣を抜くと目を閉じる。シンッと辺りが静まり返った気がする。

 ゴクリッと唾をのむ。

 殺気がない。ないけれども、次の一撃が想像できる。

 動いたら胴体が切断されるというイメージが送られてくる。

 

 チャポンっと池から魚が跳ねたと思うとカシャンという音がして剣がしまわれている。


 「あの魚を切った。見ててご覧?」


 湖面には切断された魚が浮いていた。

 

 「この距離で魚を切った?」


 「居合系の秘儀の一つさ。トップレベルの冒険者なら使えるものは結構いるよ。もっとも、風圧と剣気の二つを飛ばすから距離は2・3メートル先が限界。同じレベルの人だったら防がれるけどね。」


 「・・・・」

 

 現実離れしすぎじゃないか?この力。ああ、ここは異世界か。そうだった。


 「ふ、ふーん。なかなやるわね。」


 「ありがとう、剣聖様に教わることが本当にできるのならば君にもこれくらいは可能になるだろうね。」


 見栄を張る私にルークは頭を撫でそんなことを言ってくる。完全に子供扱いだな。

 

 「残念だけどそりゃ無理だわさ。そいつに剣の才能は全くないわさ。」


 いつの間にか背後に老人がいる。

 ルークも驚き剣を抜こうとするが動けなくなる。老人に剣の柄を足で押さえられている。


 「やめときな・・・坊主。お前さんの今の腕前じゃワシには傷一つつけられんわさ。」


 「あの・・・貴方は?」


 私が恐る恐る尋ねるとワシかい?と小さくウインクすると人の尻を触ってくる。

 

 「ひゃっ!」


 小さく悲鳴をあげてしまう。


 「うむ。よいの。よいの。話を聞いてやろうかの~。可愛い悲鳴のお礼じゃよ。萌えじゃわさ。」


 老人を睨むとカッカッカッと笑う。


 「いいのかの?そんな睨みつけとって、ワシがお前さんらの探し人の剣聖様だわさ」


 「剣聖様!?」


 ルークは驚いている、当然私もなのだが・・・私の中では剣聖のイメージが音を立てて崩れていく。


 ・・・・こんなエロジジイが剣聖・・・思っていたより小さいし・・・頭が・・・・


 「あ、婆さんには今の内緒で頼むわさ。」


 爺さんは人差し指を立て、元剣聖とは思えぬお茶目な仕草をするのだった。


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