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姫様転生 -運命の歯車をぶち壊せ-  作者: ねこねここねこ
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8本足の悪魔(激突・決着)

タコ退治

 「逃げろー!!」


 海から男達の雄叫びや悲鳴が微かに聞こえる。

 だいぶ近くまで連れて来たらしい。


 (あ、一隻沈んだ。)


 海が盛り上がると灰色のような鞭のようにしなるそれに直撃し一隻が沈没する。残り二隻。


 本体を守る様に二隻がその後ろを盾となるようにタコの邪魔をしていたのだが・・・・


 非常に不味い。思ったよりも本日のタコは絶好調のようで素早い。もしくは、腹ペコで今日食べないとまずいからなのか、とにかく前回よりも動きがいいのだ。


 「あともうちょっとで私達の出番てとこね。あ、惜しい。もうちょっとでシルフィーが・・・これもつかしら?お。合図ね。」


 ウェルチが段々と近づいてくる船から信号団が放たれるのを見ると崖を飛び降り持ち場へと向かう。


 「じゃあ、メアリさんは私の合図で例の水魔術を放ってください。街の皆さんは・・・バケツリレーと届く範囲にあれば水をタコに向かってかけてください。くれぐれも無茶はしないように。」


 おびき寄せる海岸沿いの崖の上、メアリのみを当初配置する予定だったのだが・・・ウェルチのように崖を飛び降りれない私は迂回しながら砂浜へと向かうのだが、その度にマリア様頑張って下さいだの街をお救い下さいだのという人々に声援をかけられることとなる。


 今朝

 「はあっ!!街の人たちが急に倒すのに参加したいって!?しかも無報酬でもいいからって!」


 目を覚まして、いざ戦場にと向かった私を出迎えたのはレイドチームの5倍はいる人垣だった。


 「いやいやいやいや、あまりに人が多いと相手に警戒されるでしょ!雰囲気や空気でバレるって!」


 「まーそう言ったんだがな・・・街の連中が参加したいって集まってきてな・・・」


 ドンもうんざりしたような顔をしている。話によると、誰かが今日ここで長年の宿敵を打ち倒す話をしたらしい。


 「あー・・・決行30分前に言わないで欲しいわね。」


 頭が痛い。


 「ならこうしましょう。無理矢理に役割を与えて人を分散させる。崖の上に20人程集めてそこから等間隔で人を配置、街や近くの川からバケツで水を受け渡していく。」


 「火災の時のようにだな?ああ、確かにそれなら参加している気分にさせられるし、メアリさんも魔術を撃った後にある水を魔術で飛ばせばいいだけになるから負担も減る。いちいち水を生成する手間が省けるしな。」


 「残りは街のお偉いさんや、ギルドへの伝書鳩的な役割をしてもらいましょうか。」


 「あ~でも。街の一番のお偉いさんの代表は既にあそこの浜辺で剣を持って待機しているがな。」


 「・・・・まじですか。」


 「ああ、元冒険者だったらしくてな。昔の血が騒ぐんだとよ。で、散々街の業務や繁栄を邪魔されたっていうのでハラワタが煮えくり返る思いをしていたらしいんだよな。昨日、一応街の近くでドンパチやるわけだから筋を通しに行ってマリアの名前を出したらあいつ飛んできやがった。」


 案外、あの街の代表が皆に情報を流したのかもしれない。とにかく、時間がないのだ。町長を含めた冒険者ギルドからも派遣されているという人達で6人程のチームを作ってもらおう。


 そして大慌てて皆に指示を出し、役に立たない子供や老人やはなから見学だけの関係ない人達を街へと帰らせ今に至るわけである。


 ザザザーっと音を立て砂浜に到着すると船が直接浅瀬に突っ込み座礁するところであった。


 シルフィーの縄をウェルチが切る。


 その後ろではタコがザパーッという音を立てながら海面から姿を現し陸へと向かってくる所であった。

 

 シルフィーは慌てて船から降りようとするも種族イメージと違いどんくさい。タコとの距離はどんどん縮められて危うく捕まりかける。タコは陸上には直接上がりたがらない様子で船の上にその巨体をミシミシと船体を壊しながら撒きつけ上がり込むとマストをへし折りそれを串のようにしてシルフィーに船の上から突き刺そうとする。


 タコに串で狙われるとか真逆で滑稽ではあるがいつまでも傍観しているわけにはいかないだろう。


 「シルフィーこっちへ!」


 「は、はわわわ!へぶっ!」


 転んで頭から砂浜に頭から突っ込んだことでシルフィーはタコの串攻撃を回避するも、タコは相手が鈍いとみると躊躇していた陸への上陸を決めたようにシルフィーに向かいヌルヌルとした動きで歩き始める。


 ある意味ではナイスだがこうしてまじまじと見ると気持ちが悪い!二階建てのビルくらいあるのではないか?


 「よし!タコが陸上に上がったぞ!」


 私が大声で叫ぶ。タコの正面にいる私から見て左側で待機していた土の魔術師たちが魔術を練り始める。


 魔力に反応したタコが二人の魔術師とフィルフィ―を見くらべるようにその黒目がギョロリっと視線が魔術師に移動する。

 

 「ヒッ!」

 

 土の魔術師の一名がみっともない声をあげ、腰を抜かしそうになるが詠唱だけはなんとか続けているようで青い顔をしながらも杖をかざしている。けれどもまずは目の前のご馳走を先に頂くことにしたらしい。タコの視線が魔術師からこちらに・・・・


 「ん?」


 「!!」


 タコの視線に合わせて魔術師を見ていた私がタコに視線を戻すと同じよう視線を戻しシルフィーを見ようとしていたその視線と見つめ合うような形でピタリと合う。


 「♡」


 「へ?」


 タコは砂に埋もれているシルフィーをなんとその足で払いのけると、ぐにゅっという表現があうかはわからないが8本足を同じように身体に寄せてバネのように全身を丸めると次の瞬間にビヨーンという音が出そうな勢いで空に舞った。・・・・そうこちらに向かって飛びやがったのだ。


 「ひゃ~!」


 シルフィーが目をまわしながら右の方に飛ばされていく。


 街の代表が巻き添えになって吹っ飛ばされているがそれどころではない。


 「ば、馬鹿なー!」


 私は全力で目的地まで逃げていく。何故私が追われなければならんのだ!


 私が先程までいた場所に着地すると砂がタコを起点に円形に舞い上がる。


 砂の津波が押し寄せてくる。


 巻き込まれずにすんだが私の行く手をタコの手が塞ぐ。


 まるで壁ドン。


 けれどタコの触手。


 そしてタコはクネクネしながら一本の触手をぐにゅぐにゅと動かしながら身もだえしていた。


 「・・・・ひっ!」


 さすがにキモい。


 目が♡からキリリとした?感じに見える表情をすると食べようとしているのか口を尖せ近づいてくる。なんとなく違う気がするけどこれは食事の行為だと思いたい。その方がマシだ。なんで一気に来ない!もじもじしている!


 「う・・・うそでしょ!・・・い・・・いや・・・・」


 「放てー!」


 ルークの大声が聞こえると頭上から大量の水が降り注いだ。


 スローモーションのように水が滝のようにタコの中心に叩き込まれる。


 「うわっぷ!」


 その水量に流されかけながら頭上の崖の上に立つメアリを見上げる。


 「あ、あんた!なに人の獲物をかっさろうとしているのよ!このタコが!」


 「・・・・獲物?」


 タコは怒りで頭上に向けて墨を吐こうとするがまたしてもやってきた滝のような水に押し負け後退させられる。


 どうやら二発目は街の人たちがバケツリレーのように今なお運ばれている水に直接魔力を働きかけて放っているようだ。


 タコは近くの岩を掴むと力に任せて粉砕しかけらを数本の足で掴むと崖の上のメアリに向けて投擲する。


 「きゃー!」


 「ギャー!」


 何人かに被害があったようだがメアリは負けじと水弾を返す。タコは水にあたるのが嫌らしく徐々に後退していく。


 『ロックウォール!』


 予定外の動きに呆然としていた土の魔術師二人がタコが逃走を考えていると判断し慌てて背後に土の壁を作り逃げ場を塞ぐ。


 それを合図に突撃隊がなだれ込む。


 「くらえ!」


 ルークが動かしていない足を攻撃し始めるとそれに続くように剣士と斧の二人組が同じくルークの後に続く。


 逆側にいたゴントのメンバーや復活したらしい街の代表などがタコに群がる。


 しかし、敵は巨大でありその鞭のような一撃をくらえば即死しないまでも一撃でこの場から退場させられるほどの力を持つ。何人かはその鞭のような足を受け吹き飛んでいく。


 ようやく一本目の足がルークにより断ち切られる。


 タコは痛みを感じていないのか動きを止めずに残りの足を回転させ取りついていた男達を煩わしそうに振り払う。


 「ゴントさん!」


 「うおっ!」


 ゴントに向けられた一本の足にメアリが水弾をあてる。


 ピタリと動きが止まった隙にゴントが逃れる。


 「サンキュー!メアリ!」


 「油断しないでください。墨を吐く準備をしています!」


 タコは大きく膨れると墨を剣士の男と斧の男へと吹きかける。


 「おあー!」


 無言で吹き飛ぶ剣士の男と間抜けな声を出す斧の男。


 その威力は砂を大きく削り穴をあけるほどである。無事であるといいが、数十メートルは吹き飛ばされているようだからあの水圧だと骨折は免れないだろう。


 3本目の足が切断される。


 メアリの水弾が当たって硬直した足をウェルチとゴントがそれぞれ一本づつ切り取ったらしい。


 「よし!行ける!残り5本!」


 「ウインドカッター!!」


 私の声に合わせるようにシルフィーの魔術がタコの足をスパッと切り裂く。よくやった!残り四本だ!


 タコが再び墨を吐く用意をし始める。


 「ん?手が一本見当たらない?」


 いつの間にか手が3本になっている。誰かが切り飛ばしたのだろうか?私は様子を見ながら海の側へと距離を取りながら迂回する。この後の展開的にアイツは逃げようと海側に行くはずと予想したのだ。


 タコが3本の手を垂直に回転させると上を向き墨を勢いよく吹き飛ばす。


 「はっ!単なる墨をかけられても!」


 ゴントの手下が残り3本の手の一つを狙う。


 「あ・・・れ?」


 墨が当たった瞬間、墨が身体を貫通していた。


 「な、なんだと!」


 ゴントはその光景に驚いていたが、その背後より悲鳴が聞こえた事で事態を把握する。


 「ちっくしょ!墨に何か紛れ込ませてるぞ!」


 「やっかいね・・・頭上を気にしながら叩かないといけないなんて。」


 ウェルチは降り注ぐ墨の塊を避けながらタコの背後に回り込む。


 「危ない!」


 ルークが叫ぶが気にせずウェルチはタコにナイフを押し当てる。


 「雷光!」


 ビクリッと一瞬タコの本体が跳ねる。


 「ちっ、しぶとい!」


 背後から迫っていた足と頭上から迫っていた墨の塊を難なく避ける。


 「・・・あれを避けますか。さすがですね。」


 「当然。」


 ルークの賛辞にも当然のように答えウェルチは一本の腰から短刀を取り出す。


 「・・・久しぶりね、この歯ごたえ。ふふふ。こんな大勢の前で使いたくないんだけどね。勝つためよね。多少犠牲が出てもショウガナイヨネ?」


 ルークは横から感じる今までとは比較にならない殺気に身震いをする。


 (これが、最上級のレベルの人の本気の力・・・・。アイツのいる場所。)


 「あっ!逃げるな久しぶりの実験台!」


 タコもウェルチから発せられる異常な殺気を感じたらしくこの場で一番手薄な壁に向かい逃げていく。


 土の壁に体当たりして砕きそのまま海に逃げるのだろう。


 ウェルチは逃がさないと自身の短刀に力を込め始める。


 「くらえ!ウォーターブレイド!」


 ウェルチが技を放つよりも早く壁が真っ二つに割れその刃がタコをも巻き込み裁断する。


 「なっ!!」


 「・・・・へえ。」


 異なる二人の反応。


 崖の上からは歓声が聞こえ始める。


 壁が割れた間からその巨大な水色の刃を担いだ少女があらわれる。


 「タコのくせに中々真水かけても弱って死なないし、自分の腕を砲弾にするとかありえないでしょ。しかも、シルフィーじゃなく私に向かってくるし寿命が縮んだわ!しかも、この墨取れなさそうだし。わざわざ汚い布また買わないといけないし・・・せっかくこの布にも慣れてきたのに最悪!」


 物凄い不機嫌な顔をしたマリアが全身を真っ黒に染めながら現れたのだった。





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