8本足の悪魔 (対面、そして全力で・・・)
まずは様子見!
快晴の朝、私たちは二隻の船に乗り海へと出ていた。
乗船割りはこうである。
第一隻目に、泳ぎが一番得意とする船の持ち主である斧の男、剣の男、ゴントとその仲間達
二隻の小型手漕ぎボートあり。
第二隻目に、私達メンバー
そして役割はこうである。
第一隻目が目的地に到達すると魔力回復薬と呼ばれる小瓶の中身を少しづつ海に流しながら後退する。
魔力回復薬とは魔力を失った人間が飲むとある程度の回復ができるというようは魔力の源が入った小瓶である。初めはとあるモノを海に浮かべておびき寄せようとしたのだが、浅瀬でおこなった作戦会議の際にそういう物があると知ってからはこの作戦でいくことを決めたのだ。
皆初めは半信半疑だったが、過去の状況と生き残ったメンバーの話の中に魔力を持つものが居なかった事からならば試してみようという話になったのである。
そして、第二隻目の私たちの目的は観察である。そして、余裕があれば少し攻撃を入れてみる事。
大きめの帆を用意したのは、シルフィーの風の魔術を使い逃げる為である。若干船の耐久性が不安であるが。
(帆柱がもてばいいのだけれども。)
「野郎どもいくぞ!」
『おおー!』
気合の声とともに、第一陣が目的の海上へと向かう。
ある程度の距離を取り第二陣の私達が出発する。一番緊張しているのはタイミングを外すとパーティーが全滅しかねない責任がかかっているシルフィーである。
「あのバカが余計な事を言うから・・・もうここからなら狙撃しても誰がやったかわからないかしら?」
25メートル程であればウェルチはナイフを当てる自身があるらしい。
そうこうしているうちに船は目的地の海上近くに到達する。
(こうしていると、サメはでそうだけれどもタコが出てくるとは思えないのだが・・・そういえば、魔物が食われたとか言っていたけれども海には魔物はいないのだろうか?)
「よし、やるぞ!いいかい嬢ちゃん!」
「ええ!やってください!くれぐれも慎重に!もし海底に違和感を感じたら即紐を切って逃げて下さい!」
「あいよー!」
ゴントの声があげると海底に向け紐付きの瓶が放り投げられる。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
「来ないわね。」
ウェルチが第一隻のまわりを慎重に見ている。
「来ないな・・・」
「来ないわね・・」
ルークとエレナも海を覗き込むようにして見ているがなんの異変も起きていない。
「・・・これはここら辺にいないのか、もしかして私の推測は外れていたのかなー。」
私が肩を落としがっかりしているとシルフィーが恐る恐る私の肩を叩いている。
「あ、あの~・・・そのタコさんて物凄い大きいですか?」
第一隻の周りに違和感がないか注意深く見ていた私にシルフィーが問いかける。
「そうね、きっと人間の3倍くらいは大きいんじゃない?人間が食べられちゃうくらいだから。」
そういうと、一息つこうと竹の水筒に入った飲み水を口にあてようとした所、シルフィーは落ち着いた声でこんなことをいう。
「なーんだ。だったらもっと全然大きいタコさんは今回の討伐対象とは違うんですね?」
そういうと背筋をスウッと悪戯をするかのように指を這わせてくる。
「いや、見た事がないからわからないけど・・・そんな大きいタコは想像したくな・・そういえばサイズまでは聞いていなかったな。ルークにでも聞いて・・・ええい!しつこいよ!シルフィー遊びはあ・・・・と・・・に・・・」
ぬるんというかつるんというか灰色のそれが私のへそから上へと昇り顔を確かめるようにペチペチッとたたくと私が正気を取り戻したタイミングと合わせたかのように水が海面から持ち上がるとザバッという音とともに私の前髪を重力に逆らうかのように持ち上げる。
当然持ち上がった髪と水は重力にいつまでも逆らう事ができるわけがなく。
滝の水を浴びるかのように私とシルフィーに降りかかる。二階建ての家ほどの大きさのそれと目が合う。
「はっ、シルフィー全力で風魔術!全員!後ろをみずに持ち場に動け!全力退散!しがみつけー!!」
私の悲鳴に気づいた皆がこちらを見て絶句する。
「魔力に反応するのよね!あの化物!なんでこっちに来てるわけ!」
ウェルチが私を捕まえようとして伸びるその足を切りつける。
「ちっ、効いてない。」
ナイフは奥まで刺さっているもののまるで痛みを感じていないかのように足はウネウネと動きを止めずに襲ってくる。
「シルフィー!さっさと魔術を発動しろ!固まってるな!喰われたいのか!」
つい男口調が戻ってしまうが勘弁してほしい。男生活の方が長かったんだ、こんな時くらいは大目に見てもらいたい。
慌ててシルフィーが帆に風の魔術をあてると船が加速して動き出す。
船はタコと水平に逃げながら少しづつタコの周りを左に旋回し陸へと進路を向ける。
「向こうの船も逃げ始めたみたいだ!」
ルークが状況を報告しながらウェルチと共に進路を調整している。
「・・・・何でこうなる!?で、タコは!」
私は絶叫するがエレナから聞こえた叫びに振り返る。
「危ない!シルフィー!」
エレナの叫びに反応してシルフィーが魔術を一時カットしてその足を避けようとしているがギリギリのところで間に合わない。
(なにかないか!)
手に持っていた竹の水筒をダメもとで投げつける。ダメか!水筒は中身の水を撒きながらタコの足に直撃する。
その一瞬ではあるが、足が少し遅くなった気がした。
気がしただけでまだシルフィーを襲おうとしているのに変わりはなかったがこの一瞬があったおかげでシルフィーは足を避け全力で再度魔術を放つことができた。
「ウィンドブレス!!」
その全力過ぎる風に吹き飛ばされながら船はバラバラになりながらも私達を顔や足やら背面から砂場へダイブさせるところまで届けてくれる。
「・・・辛うじてだが助かったのか?」
ルークが周りをみるが、ウェルチ以外の女性陣は私を含め気絶をしていた為にそれに答えられるものはいなかった。




