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姫様転生 -運命の歯車をぶち壊せ-  作者: ねこねここねこ
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異世界へ

飛ばされた異世界で目覚めたら?

 頭から足に電流が走るかのようにゾクゾクっとした感覚が体中を駆け巡ると次第に自分の体に体温があったのだという事を感じさせるかのように血が巡るような感覚が広がり始める。


 感覚がつながる。

 

 肌に触れている布を感じ始める。

 

 周りのざわめきが聞こえ始める。


 同時に焦げ臭いような、少しコケの生えた暗い場所にいるかのような陰湿な匂いがしてくる。


 目を開けるのが少し怖い。見知らぬ所にいるのは周りの気配から想像ができる。


 不安だがゆっくりと目を開く。


 焦点の定まらない視界に入ってくるのはローブを纏った男たち数人と派手な格好をした明らかに場違いな三人組だ。


 ・・・どうやら視界外の背後も囲まれているようだが体がうまく動かせない。


 すぐに走り回れるほどに身体機能は活動をしていないようだ。

 

 それは昔の体と今の体との差に魂なのか記憶なのかわからがいが戸惑っているのも関係しているのかもしれない。


 目線が低い。


 生まれたばかりの赤ん坊というわけではないようだが、子供の体であるのは間違いないだろう。

 腕が細いし体が軽い。


 「おお!あの人形が動いておるぞ!おっと・・・失礼致しました。」


 「よい。予言通り成功したのだ!予言にも人形と書かれていたのだ。明日からは許さんが今日は記念の日じゃ。それくらいの発言は許そうではないか。」


 「賢者様の予言の書の通りだ!」


 周りがざわめき始める。

 ・・・体が怠い。頭も痛くなってきた。


 貧血を起こしたかのように視界にノイズが走り体が崩れ落ちそうになる。


 「メリザ!さっさと我が娘を部屋に連れて行かないか!」


 「かしこまりました!」


 数名の女中らしき人が走り寄り僕の体を抱きかかえる。


 (我が娘?)


 声の主を確認したいが目が機能しない。

 古い壊れかけたテレビなら叩けば治るかもしれないが。

 壊れかけたテレビが自ら治ることはない。自分を叩けないのだからしかたがあるまい。

 自分の体の状態もしっかりと確認したいけれどもそれも無理そうである。

 視界のノイズがだんだんと黒に塗りつぶされ始める。

 体に定着して間もないから魂が馴染ませる為にも休息を望んでいるのだろうか?


 (まだ、動くのは無理だ。変なことはされそうにないと信じるしかないだろう、今は眠るとしよう。)

 


-3日後―


 目が覚めた。

 

 頭に王冠をつけた変なおじさんが顔を覗き込んでいた。目が合うとキスをしようとしている。


 気持ちが悪い。これは夢だ。もう一度寝よう。


 さっさと悪夢から目覚めて、学校の用意をしないといけない。

 今日は午後に団体戦のレギュラー決めがあるのだ。

 個人でも団体でも今年は全国優勝をしてみせるとクラスの皆にも宣言しているのだ。

 去年の剣道個人戦の県大会準優勝、全国2回戦負けの雪辱を今年こそはと燃えているのである。


 その直後、額にブチュっという音がしたかと思うほどの嫌な接触が額を襲い、現実を現実として現実に引き戻される。


 「ぎ、ギャー!」


 布団から飛び起きて部屋の隅へ逃げていく。

 ・・・隅へ・・・・隅へ・・・って、遠いな!隅っこ!


 「な、ななな何を!」


 慌てふためく僕に対して二人は真面目な顔をこちらに向け涙を流している。二人?


 「おお!見ろアフロディーテ!私達の娘が動いて喋ったぞ!」


 「ああ、なんて事でしょう。」


 二人は抱きしめ合い、涙を流しながらこちらに近寄ってくる。


 やめてください・・・お願いします・・・アフロディーテさんと呼ばれている美人さんはいいけど、むさいオジサンの抱擁は・・・二人涙流しながらとか気持ち悪い!近づくなって!アッー!


 心の叫びも虚しく両サイドから抱きしめられる。


 「く、苦しい・・・・」


 でも少し、アフロディーテさんの胸が当たって気持ちがいいので我慢する。当然顔はアフロディーテさんへ向けている。


 おっさんが少し嬉しさの中に寂しい顔をしているが男の僕に男に抱かれるそんな趣味は今の所ない。


 「私の事がわかりますか?」


 「ごめんなさい。どういう状況なのかわからないのですが・・・」


 「あ、貴方!喋りましたわ!」


 「落ち着きなさいアフロディーテ。ゆっくりとゆっくりと語りかけるのだ」


 「そ、そうね。」


 大きく深呼吸されると胸に顔が埋まって苦しいのだが。


 「自分の名前はわかる?今までの生活の事は?」


 首を斜めに傾けると少し悲しそうにしたが、それも一瞬ですぐに笑みに変わった。


 「いいの。いいのよ。愛しのマリア。こうして、話せる事になるなんて。それだけで私は幸せよ。」


 どうやら、この体の名前はマリアというらしい。・・・はて?

 

 「どうやら、賢者の予言書は本物のようだ。嬉しい事だが、同時に未来が決まっている宿命の子という事に悲しみを覚えるな。せめて幸せな家庭を作れるように相手は厳選して決めてあげねば。暗殺等にも気をつけねばなるまい。けれども予言の書の通りだとすると・・・すぐにそうか。」


 おっさんの方は、騎士のような甲冑をきた男を部屋に呼ぶ。

 

 何やら不吉なことを言っていた気がするが。すぐになんなんだ?


 「名残惜しいが政務の時間だ。アフロディーテ、夜の生誕祭までマリアといてあげなさい。夜までに可哀想だが、色々と教えなければならないこともあるだろう。」


 そういうと立ち去っていった。


 混乱しっぱなしだが、落ち着いて状況を整理しようと思う。


 この後、まずは身を清めましょうというアフロディーテの発言によりやってきたメイドに担がれながら、今の状況を第三者的な視点で考える。色々と見ないように考えないようにしながらメイドと風呂に入り、隅々まで抵抗虚しく洗われながら整理する。

 

 風呂場で初めて女性に体を洗われながら・・・自分の性別を理解する。

 

 「はっ!無いだと!」


 生まれて初めてのコルセットに悲鳴をあげながら・・・自分の容姿と体系を理解する。


 「苦し・・・あ、鏡の僕?可愛いいって・・・ギブギブっ!苦しい!」


 先のとがったヒールをいきなり履かされながら・・・自分の今後の振る舞いについて理解する。


 「足痛い・・・歩きづらい・・・はいっ!先生。背筋を曲げません。壁に手をつきません!ごめんなさいっ!」


 言葉使いをスパルタ的に注意されながら・・・自分と今後対話する相手の立場の高さについて理解させられる。


 ぐちぐちぐちぐちぐちぐち。

 

 「・・・・ぐ~。」


 バシンッ!


 「・・ひっ!寝ておりませんことよ。おほほほほほっ。」


 痛みと窮屈さと息苦しさと戦っているうちに夜になっていた。


 僕は眼下に見える大勢の人に見られ、崇められ、好色の目を向けられながら全てを悟る。


 -すまないね。先に謝っておく―


 とか色々言われたのはこういう事か!?


 18歳の日本人であった男の僕は、異世界に転生したら10歳の王女様になっていた。

 

 


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