8本足の悪魔
8本足と言えばタコ 海と言えばタコ オクトパスと言ってもそれはタコ
「8本足の悪魔・・・・」
ゴクリッとエレナが唾を飲み込む。
ルークはフォークをテーブルに置くと肘をつき、両手を握りると口元へ持って行く。
「僕が奴隷になった原因のこの街の酒場で受けた討伐依頼モンスターのクエストだよ。」
シルフィーは足が8本???と自分の手で何かを表現しようと不思議な踊りを踊っている。エレナが止めなさい!とシルフィーの頭を叩き大人しくさせていた。
ルークは気にせず私とウェルチの二人に話し続ける。
「先月のことになるが、僕は悪魔が現れたから助けて欲しいという依頼を受けたんだ。」
苦い表情を浮かべるとルークは少しづつ思い出すように話始める。
「僕たちパーティー・・・もう僕だけになってしまったけど。あの日僕たちはこの街の外れにある酒場でダンジョン攻略の成功を仲間とともに祝っていたんだ。ルーキーでは難しいと言われていた上級レベルのそのダンジョンはとても大変だったけど仲間の一人も失わずに成功できた。それはとても凄い事で誇らしい事だった。ルーキーの中でも注目されていた。だから、他のルーキーたちよりもこれで一つ先に進めたと正直調子に乗っていたんだろうね。」
ルークは一度上を向くとふーっと大きく息を吐く。
「正直、僕たちは馬鹿だった。丘の上や洞窟と違い海は揺れるし足場も限られている。それこそある程度の大きさの商船を借りたから戦う事は可能だったよ。けど、いざ逃げるとなるとそこは海の上。現れた瞬間に逃げるのなら逃げられただろうけど、僕たちならば問題ないと判断を誤ってしまった。」
そういうと握っていた両手を離し両手を開く。まるで何かが爆発したと言いたいかのように。
「それで負けてパーティーは船と供に・・・・いや、もしかして喰われたのか?」
「・・・ああ、攻撃魔術の得意な昔からの大事な友達と回復魔術得意だった・・・法術師の彼の彼女がね僕の目の前でね。もう一人、弓が得意だった奴がいたんだけどそいつは悪魔の奴に握り潰されて船体に叩きつけられてね。」
(タコが人を食べるね・・・・それは本当にありえるのだろうか。異世界だからあるのかもしれないが危険を感じて攻撃しただけなのでは?攻撃的な性格をしていたはずだよな・・・タコって。)
「・・・・・他の船員は?」
「僕と他の船員は全員無事だった。二人で満足したのか、またはダメージを受けてたから引いたのかはわからないがね。」
「まあ、いいんじゃない?ダメージは与えたんでしょ?ならほっときなよ。オクトパスは普通2年で寿命を迎えるはずでしょ。ダメージを与えている分そいつはもっと早くに・・・」
ウェルチの言葉に首を二度ほど振るとルークは小さく衝撃的な事を口にした。
「9年だ。アイツはすでに9年も生きている。普通のオクトパスじゃない。クエスト扱いになるほどの悪魔なんだ!」
「でも一ヵ月も前ならもう倒されたのでは?貴方達が負けたのならば冒険者ギルドはその危険性を鑑みてクエストランクを上げて、緊急クエスト扱いにしているんじゃない?上級レベルの他の連中か、魔獣は担当じゃないけど私みたいなその道の専門家が出てくるはず。」
ウェルチが言うと、黙ったルークの後ろを通りかかったウェイトレスが振り返り代わりに答えた。
「そのクエストでしたら今もまだ緊急のまま張り出されておりますよ?受けてくださるのですか?」
「まだあるのね。理由は何故かわかる?」
ウェルチは嫌な顔をする。
「ええ、一つはオクトパスを倒そうと思っても船を出してくれる人がいない事。最近魚が減って大変なんですよ。」
ウェイトレスはそういうとため息をつく。
「それに二つ目はやはりルークさんが負けたという事。古参の上級の人と互角に戦った事があるという噂もありますからね。その人が完全に負けた。船の代金を含め払えない状態になり自分を身売りするしかなくなるほどに、そして仲間をも失う程に。おかげで街の活気は落ちて、海路の流通が停滞しているんですよ。」
そんなウェイトレスの話を聞いてウェルチが頭を掻く。
「そして、もっと報酬が跳ねあがるまで人間側の化物たちは胡坐をかいて待つ・・・か。」
「・・・残念ながら。」
ウェイトレスはおっと仕事の途中だったといい情報をくれると他のテーブルへと水を注ぎにいく。
「仲間の敵も討ちたい気持ちは当然ある、でもそれだけじゃなく、この街の皆の平和の為にも僕はどうしてもこのクエストを完遂させたいんだ。」
ルークは椅子から降りると土下座をする。
「マリアさん。奴隷の身で主を危険な目に合わせるならば俺だけでも構わない。どうかもう一度このクエストを受けてはくれないだろうか。」
正義の味方・・・・かね。本来ならばこういう人が勇者とか英雄とかになるのだろう。
「無理でしょうね。船は借りられないのよ?それに・・・」
「待ってウェルチ。8本足の悪魔オクトパスってようはタコだよね?ルーク。」
「確かに見た目はタコだが・・・・けれどあれは悪魔のような化物だ。」
(さて、どうするか。)
私はう~んと唸る。
「一度戦わずに姿を見るだけみて安全に逃げる事は可能だと思う?」
「・・・可能だとは思う。ただし、囮が必要だと思う。例えば・・・・」
そういうとルークは空いた皿の上にタコの切り身を中央に一つ乗せる。そしてポテトを三つ三角形を作るように配置する。
「ちょっと待ってくれないか。先に問わせて欲しいのだけれども、前回の戦いに用意したのは何隻の船だったの?」
ルークは別の皿の中央にもタコを一つ並べてるとポテトを二つ置く。
「・・・・・ちなみに聞くけど。馬鹿正直に二隻だけで全力攻撃を仕掛けたわけ?」
「そうしようとしていた。だが、相手の方が一枚上手だった。 僕たちの船ではなく、後方の船に仕掛けてきたんだ。」
「挟撃のつもりじゃなかったのにいきなり後ろが狙われ形的に挟撃体制になって慌てて全力攻撃を仕掛けたのか・・・敵が後方を襲った理由は?」
「わからない。ただのタコに知識があるとは思えない。アイツだからとしか言えない。」
ルークが悔しそうな表情をしているが、そもそも異世界の知識がある私としてはそこからして間違いなのだと思うのだが、それを伝えようとした時に後方より各テーブルの水を見回ったウェイトレスが戻ってきて話に割り込む。
「えっと、情報があるのですが買いますか?」
タコ焼きが食べたい・・・・ 次はどうするかの方針決定です。




