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姫様転生 -運命の歯車をぶち壊せ-  作者: ねこねここねこ
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エドラム街 8本足の悪魔の噂

まずはお互い仲良くなりましょう!すぐには無理だろうけど



 思っていたよりも空気が重いのは何故だろう。

 

 大所帯になれば楽しいかなと安直に感じてました。だって、一人は自ら勝手と懇願してきて、一人は嫌な貴族から逃げたいから助けてあげた。もう一人は完全に身を守る為であるがこうも誰も喋らないし食事も取って頂けないと気まずさで胃がキュッとなる。正直ダラダラと汗も出ているのだが、女性の身の私としては昔のように今日は暑いよな!などと言って服で汗を拭う事など出来ないのである。


 しかたがな、誰も手を付けない料理を頑張って口に入れて美味しいと言って食欲を誘ってみたりもしているのだが無反応である。


 ここは街の奥隅にあった奴隷商から離れたエドラム街のメイン通りにある酒場である。


 まだ太陽が沈む前の青い空が見える時間帯ではあったが、今日から同じ仲間だという事で歓迎会のようなことをしようとしたのだが・・・・

 

 (どうしてこうなった?)


 「ゴクリッ」と唾をのむ音が聞こえたのでそちらを向くとエルフのシルフィ―が物欲しそうにウェルチがポテトを食べるのを黙ってみていた。


  ウェルチは我関せずという感じで一人でポテトを完食していた。私はウェルチを肘で小突くとこの空気は何?と小声で聞く。


 「そう思うなら早く食べてあげなさいよ。」


 「どういう事?」


 「あのね、奴隷が飼い主と一緒に食事を取れるわけがないでしょう?貴方が残すのを待っているのよ。」


 そこまで言われてハッと気づく。王宮ではほとんど一人での食事であったが、一度だけモナを誘った時にメイド長にえらく叱られたことがあったのだ。


 「王族の方と我々のような使用人がご一緒にお食事などなりません。」


 立場は違うがこの場合、「ご主人様と我々のような奴隷がご一緒にお食事などできません。」という事になるのだろう。


 それなのに、「シルフィーは何が食べたい?」とか「エレナは食べれない物あるの?」とか「ルークは好き嫌いあるの?」などと聞いていた。


 そして、今シルフィーが食べたいと言っていたポテトが奴隷はモノ主義のウェルチによって慈悲もなく平らげられてしまったのだ。


 三人の空気が悪くなるのは当然だ。食べたいものを聞いていたのに残す気配もなく美味しいとかいいながら食べているのだ。私が彼らの立場であったのならテーブルでもひっくり返しているだろう。


 「すいません!」


 私は慌ててウェイトレスを呼ぶと平らげてしまったポテトと二人の食べたいと言っていた料理をもう一度頼み、温かい物を用意する。


 料理が届くとわかりやすいのはシルフィーで皿の動きとともに顔が動いている。


 「すいません、気づかなくて。どうぞ遠慮なく一緒に食べてください。」


 私は三人に食べるよう促す。


 「奴隷がご主人様と食事を取るなんて聞いたことがないわ!止めなさいシルフィーさん立場をわきまえなさい。これはきっと試験よ。」


 エレナのテーブルの下に置いてある手がギュッと握られたのが見えた。


 「悪いけど、僕たちはそういう風にあの場所で指導されていたんだ。食べる物も残飯のような物を毎日出される日々。僕の場合は剣士の実力であった為、護衛の人間がやせ細り弱く見えるのは問題だと言われて少しまともな物を貰ってたんだが彼女達は違う。正直に言うとそういう優しい言葉にも疑心暗鬼になっていて何かを試されていて場合によっては呪いを発動されるのではないかと不安なんだよ。」


 ルークがエレナの心情を察してか代弁してくれる。


 「ごめんなさい。私は単純に皆で話をしながら同じ人間として仲間として食事を取りたかったのですが、言葉が足りなかったようですね。改めて言いますが、気にせず一緒に食べてもらえませんか?そして、色々と話を聞かせて貰えないでしょうか?それとこれからは毎日一緒に食事を取りたいと思います。抵抗があるようでしたら慣れるまではこれは、主人からの命令と思って下さっても結構です。」


 私ははっきりと言う。


 「えっと・・・温かいままのコレ、食べていいの?」


 シルフィーがフォークを手に持ちながら恐る恐るポテトを指さす。


 「遠慮なくどうぞ。食べながらでいいのでシルフィーの事を聞かせて貰えない?どんな事でもいいので。」


 比較的抵抗のなさそうなシルフィーに食べてもらい、話をしてもらう事で二人に一緒に食べても問題としない事を知ってもらうようにする。


 「私はここから北にある迷いの森の住人。狩りに出ていた所でエルフ狩りの人間に捕まって売りに出されたの。明日には食料として殺されそうだったから本当に助かりました。」


 「食料?エルフって食べられるの?」


 「ま、まさか!一部の狂った亜神教徒の狂った行動よ!私達なんか食べても長寿にはならないわよ!人魚伝説と勘違いしているのよ!その人魚だってそんな事実はないわ!」


 シルフィーは自分が食料とみなされる可能性があると思ったのか慌てて否定する。


 「それは災難だったね、ちなみに一生私の奴隷になろうと思ったのは何故?」


 「それは一度人間と交わったエルフは人間の匂いが永遠に残り同族から省かれて戻れないから。同じ境遇のエルフを見つけることは絶望的だしね。私達は長命な分人よりも繁殖力が弱く少人数なのよ。だから、頭の固い人が多くて狭い中で他の民族と交流する事を断っているの。自分たちを守るために守りの森からでないようにして。」


 「ん?さっき迷いの森って言ってなかった?」


 「それは人間にとってでしょ?私達はちゃんと木の声や精霊の声を聞いて迷う事は絶対にないもの。」


 なるほど、立場が変われば考え方も名称も変わるわけだ。


 「エレナも食べてください。これ、好きなんでしょ?」


 次はエレナに振る。彼女はプライドが高いようで他の人より先に折れることが嫌なようだがこれだけ普通にシルフィーと話していたのだから大丈夫だろう。


 「・・・・ぷいっ」


 (いや、ぷいって言葉に出してるし。このツン娘、いつかデレさせてやる。)


 私は目標を決めると負けじとエレナに食べるように促す。


 「命令でも聞けないの?」


 「・・・・命令なんて卑怯だわ。」


 しぶしぶと食べ始める。一瞬頬を緩ませかけたが直ぐに不機嫌な顔に戻る。


 元貴族だけあって面が厚いようである・・・使い方あってたっけ?


 「アタシは・・・・」


 「ん?」


 不機嫌な顔は相変わらずだが少し話す気になったらしい。


 「アタシはルディーム家次期当主、エレナ=ルディーム。」


 「元でしょ?」


 ウェルチの一言に目を見開き反論する。


 「アタシがまだ生きている!ルディーム家は途絶えてないわ!」


 そういうと顔を赤くしキラリと光るものが目に入る。


 「えっと・・・・騙されてって確か言ってたけど聞いてもいいのかな?」


 エレナは少し考えた後、ゆっくりと話始める。


 「・・・シュバイン。シュバイン王子は知っているわね?」


 「げ、あの豚王子か。」


 つい反射的に口に出してしまう。その声にエレナとルークが驚いた顔をすると周りを見渡す。


 「ここは、そのシュバイン王子の国に近い。あまり迂闊な事を話さないほうがいい。ご主人様。」


 ルークが小声で注意してくる。


 「・・・むずがゆい。お願いだから三人とも旅の仲間なのだから私の事はマリアと呼んで。」


 言わないなら命令だからと言う。


 「・・・そのシュバイン王子の兄であるフーリン王子にアタシの父は使えていたのよ。」


 そういうとシュバイン王子が自身の兄を暗殺した疑いがあり、父が王に進言したのをきっかけに身に覚えのない噂や容疑がかけられるようになり、ついには罠に屋敷を燃やされたという。


 「必ずいつか国王に直訴して、せめて家を復興させるわ。」


 「もしかして、嫌な買手ってそのシュバイン王子だったわけ?」

 

 「・・・・そうよ。私の事を忘れていたわ。そして侮辱したあげくに自分のモノにしたいといいだしたのよ。」


 そういうと一筋の涙が流れ落ちた。


 「まあ復興の約束は出来ないけれど、シュバイン王子とはそのうち一戦交える予定だったから場合によっては力になるわ。だから、宜しくね。」


 「シュバイン王子と一戦交える!?」


 「詳細はいずれね。でも信じて欲しいかな。」


 信じられないと絶句しているエレナはひとまず置いておく。


 最後の大トリはルークだ。

 エレナとの話を聞きながら少しづつ普通に食べ始めていたルークがタコのソテーにフォークを突き刺すと私に言う。


 「マリアさんとウェルチさんは、8本足の悪魔の噂を知っているか?」








港町の8本と言ったらアレですよね・・・

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