道中
次は港町!
ガルムに揺られるのにも乗るのにも慣れ始めた。
この世界に来て初めての曇りの日。私の心と同じ灰色の空。
明日には王都から東に行ったモナの奴隷契約書を破棄することのできる港町ノートル海港にあるエドグラム街につくらしい。
盗賊のアジトから脱出してまだ5日しか経ってないのだと思うと不思議な時間の流れを感じる。あれだけ毎日が長く感じられた城での生活と比べるとこの7日間はあっという間であった。
あれから数度、エドグラムに向かう街道の近くにある村に寄ったのだがあのホド村がどうなったのか、盗賊団が私を追っているのかといった情報はどこに行っても入ってないようだ。
「心配しなくても大丈夫。助けるのが遅くなったのは、盗賊団がホド村を襲うという情報を手に入れた私が近くにいる冒険者などに情報を流してたから。村長にも話をしたから緊急クエスト扱いになっているはずだからあの程度の盗賊ならすぐに壊滅されたと思う。」
そう言ったウェルチであったが、金髪の少年の話をすると見た事も聞いたことがないらしく、それほどの腕の者を私が知らないなんて・・・そんな目立つ容姿をしている者ならすぐに噂が立つだろうにと何やら考え込んでいた。
あの盗賊のアジトの近くに潜伏をしており、あの洞窟に入る人物や出て行った人物をチェックしていたとの事だ。
「隠し通路でもあったのでしょうか?」
「まあ、いいんじゃない?村が無事なら問題ないよ。」
「そうだといいのですが。」
女だという正体と素性を明かしてからウェルチは少し言動が固くなったような気がする。軽口が減ったのは、周囲を警戒するレベルをあげたからだろう。
「あ、モンスターだ!」
「見たいですね、ガルムどかしなさい。」
「ガルム止って!」
ガルムより小さいが狼の姿をしたモンスターが4対道を塞いでいた。ガルムは私のいう事をきき手前で止まる。
素早くガルムから飛び降りると剣を構える。
「危険なマネは止めてください。」
ウェルチは飛び降りながらガルムに警戒して動きを止めていた一体の狼にナイフを投げ当て瞬殺していた。
(この世界は化物じみた人が多いな。)
今の自分では太刀打ちできそうにない。
「何をしているのですか!危険です。」
ウェルチの忠告を無視して狼にツッコむ。狼は仲間がやられたのを知るとすぐに攻撃態勢へと移行していた。
「いくぞ!」
この5日間、暇さえあれば少年の言っていた魔法の練習をしていた。それによりスムーズに刃に魔力を宿せるようになっていた。
短剣の間合いのギリギリを避け、飛びつこうとしてくるガルムに不意打ちのように伸びた刃が突き刺さる。
(まずは一匹!)
魔力の刃を解くと狼が地面に落ちる。残りは!と横を見るとウェルチが残り2体の狼を素手で倒していた。
(・・・どっちがモンスターなんだか。)
ギロリッと急に睨まれ、一瞬体が硬直してしまう。
ヒュンッ
という音をたて耳の横を何かが通り過ぎるとキャンッという声が背後で聞こえる。
「獣型のモンスターは急所を確実に突くか、首を跳ねるまで油断してはなりません。」
ウェルチが狼を2体持ちながら歩いてくる。両手に狼を持ってどうやってナイフを飛ばしたんだ?
「まったく。なかなか会得した技を試す機会がないのはわかりますが、少しは自重してください。」
しぶしぶガルムに乗りなおす。
(もっともっと実践を経験しないと・・・強くなるために!)
そんな私を見て、ため息をつくウェルチにすら気づかないでいた。
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一方、ホド村にて
「頭目!これで全部みたいですぜ!」
子分の一人が村長宅から金塊を運び出していた。
「そうか。よし村長は始末しておけ、隠されていた金塊はアジトに持ち帰るぞ!」
頭目と呼ばれた男は子分に指示を出していく。
「ねえ、あの娘達はどうしましょう?」
レーレンは怯えている小さい子供たちを指さす。
「そろそろ騎士団の連中も来る頃だろう。その辺に転がっている冒険者と共に一か所に集めてわかりやすくしといてやれ。」
頭目がいうとレーレンは子分たちにその旨を伝えていく。
「お優しい事で。」
「居たのか、カース。」
「ああ、用事は済んだから。」
カースは崩壊しかけた村長宅を見て指をさす。
「なあ、あの紋章旗・・・」
「・・・わかっている。」
頭目は大剣を肩に担ぐと腰を落とし気合を入れる。
「はあ!」
距離があるというのにその大剣の一振りにより紋章旗が切られ形のあった村長宅も完全に崩壊する。
「相変わらずの馬鹿力だね。」
「剣技と言え、カース。」
そこに戻ってきたレーレンがカースを見つけ残念そうにため息をつく。
「ああ、あんたがいるって事は戻ってもあの娘がいないという事よね。そう思うと憂鬱だわ。次に会うのはいつになるのかしら?」
「必ず、会う事になる。その時に我らの味方となるか敵となるかわわからんがな。だが、奴らの思惑を外す為の楔はカースが打ちつけた。」
「毒には毒で・・・剣に興味のある子には剣でね。」
「ああ、すべてはこの世界の為に。」
頭目の男とレーレンが話しているが、カースは密かに口笛をふき別の事を思い描く。
(さて、あのお節介はどちらにとって都合がいい事になるのやら。)




