ホド村 盗賊アジト
「これより、ホド村を襲撃する!」
『ううぉ―!』
空気が震えるような叫び声によって目を覚まさせられる。
何故か固いベッドに寝かされていた。体が痛い。今まで使用した中でもダントツに不快なものである。
(首と腰が特に痛い。)
意識を失う前に受けた衝撃のせいか、もしくはこの固いベッドのせいだろうがとにかく今は起き上がって体をほぐしたい。
けれどもこの騒がしい状況の中では起きるに起きにくい。
ここは人攫いのアジトだろう。寝返りを打つふりをして周りを見る。
「ん?寝返りをうっただけか。よく攫われてこんなに寝られるものだ。」
監視が居たのに気づかず危うく目が合う所であったが大丈夫だったようだ。
(あぶな!)
心臓がバクバクと鳴っている。
目を閉じているとそのあまりの鼓動の強さに相手に聞こえるのではないかとヒヤヒヤとさせられる程で、冷や汗が出ているのが自分でもわかる。
こめかみのあたりから、すうっと落ちてくるその一滴の滴すら起きたことがバレるのではと不安になる。
後ろ姿の盗賊と思われる監視役はやる気がなさそうに3m程先の腰かけるのにちょうどいい盛り上がった岩に座りながら酒を飲んでいる。すると奥の方からこちらに怪しいローブに身を纏った女性がやってくる。魔女というのがこの世界にいるのならば彼女はまさにそれだろう。
「ねえ、貴方その子の様子はどう?目を覚ましたかしら?」
「おっと、なんだー姐さんじゃねーですか。この通りおねんねの真っ最中ですよっと。」
「あらそう、起きていたらご飯でもあげようかと来てみたのだけど。」
ピクリッと耳が反応してしまう。
(そういえばどれくらいの時間がたったのだろう?ウェルチが心配して探してくれてるといいんだが。・・・見捨てないよな?)
不安な気持ちが生まれてくるが突如として起きた音に全てを持っていかれる。
・・・・きゅるるるる!
姐さんという人がご飯なんぞと話をしていたからお腹が反応してしまう。
「・・・ぷっ。」
女性が噴き出す声がすると我慢しきれなくなったようで
「くくくく、ふふふうふふっ、あーはっはっはっは!」
バンバンと何かを叩いているのを感じる。
「本当に最高!この娘ったら・・・くふふふふ。ね?そう思わない?」
「あ、姐さん?痛いっ!痛いっすよ!」
「あー、はーはー。そうね、起きた時の為に持ってきた食事を・・・ふふふっ、ダメ、もうちょっと無理・・・・あっははは!」
「わかりました!わかりましたから。ほら、これ入れましたからって痛いっすよ。姐さん。」
「あーもうダメ。久しぶりにこんなに素で笑ったわ。あの娘が・・・こんなになるとは。」
「姐さん、コイツをどっかで見た事があるんで?にしても攫われたのにいつまでもスヤスヤと寝やがって、しかも寝ながらに腹が減ってると主張するとかこのガキ・・・水でもかけてたたき起こしてやりますか?」
呆れている監視役の男がため息をつきながら何かを手に持つ気配がする。
(恥ずかしすぎる。きっと顔は赤くなっているに違いない。近づかれたら絶対バレるよなコレ。話の流れ的に水でもかけられるのだろうか。)
「ねえ、それはダメよ。その冗談は笑えないわ。そのお酒をあの娘にかけるというのなら、貴方の腕から噴き出す液体で貴方が全身を真っ赤に濡らす事になるわよ。」
「じょっ、冗談きついんですから姐さん!」
「貴方、そろそろ出発よ。ここはいいわ。さっさと行きなさい。」
「みっ、見張りはどうするんで?」
「二度は言わないわよ。ワタクシはお前に行けと命令しているの。」
「わ、わかりやした!」
急ぎ走り去る足音が聞こえてくる。
「名残惜しいけれどもまた今度になるわね・・・またね。」
女がゆっくりと離れていくようだ。
「よし、狙いはホド村村長宅とそのリストにある家だ。他には手を出すな!火を使う事も禁止する!貰う物を貰ったら打ち合わせの場所に集合だ!いいな!」
『おう!』
盗賊達がゾロゾロとここから出ていくようだ。どうやら村を襲撃するらしい。
(だからといって何ができる?ここに閉じ込められてるだけの自分に。)
人の気配がなくなったのを確認して薄く目を開けるがどうやら本当に皆で払ってしまったようだ。
ゆっくりと立ち上がると体が固くなっている為それをほぐす。備え付けのトイレ?と思わしき穴で用を足し、目の前に置かれていた冷めかけのスープとパンを口に運ぶ。
(どうにかして今のうちにこの牢屋からでなければ。)
食べ終わった皿とおぼんを元の位置に戻すとスプーンを取り出し地面を掘ろうとして見る。けれども天然の要塞であるこの洞窟の地面は岩などや見知らぬ鉱石などが多くあるようでスプーンでは削れそうにない。
もっともダメもとでやってみただけなのだが・・・いつか見た映画などで地道に穴を掘って脱出するシーンがあったことを思い出し試してみただけなのだ。
「さてと、物理的に壊すなどは出来ない事がわかったわけだ。」
この時代のカギだ。針金のようなものがあれば開けられるかもしれないがそんなものは身近にない。どうしたら抜け出せるだろうか。
錠には手が届くが、当然鍵がかかっている。壁をペタペタと触ったり叩いたりしてみるがやはり映画のように前に逃げた人が隠した鍵が隠されていたり、秘密の抜け穴が出てきたりという事はないらしい。
あとどれくらいで帰ってくるかはわからないが時間との勝負のはずだ。
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「ダメだ。押しても引いても叩いても蹴っても何をしてもダメだ。」
アイディアも思いつかず最終的には原始的な方法に巻き戻り力業に頼ったのだがやはり無理である。
そもそも何行か前に出来ない事がわかったはずなのだが、焦りは人を単純な思考に陥れる。
「やれやれ、見ていられないな。」
「ウェルチ!」
「よっと。おまたせ!」
「・・・・誰?」
ウェルチが助けに来てくれたと思ったのだが全くの人違いだ。そこには少年がニコニコとした笑顔で立っていた。




