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02

事件です!!


「鬼丸明奈だな……話を少々、したいのだが」


The☆悪役 な格好 をした 闇道 さん が あらわれた !!


父親が逃亡してしまい、フルタイムどころか夜中まで働きだしたお母さんは帰ってくるのが遅い。遅いどころか会わない日だってある。

そのため幼稚園に通っていない私は、河川敷で魔法を練習したり、風華や灯里と戯れたり、ボール蹴っ飛ばしたりして、時間をつぶしていた。


見た目幼女だからね、人目につくところで遅くまで遊んでると補導されちゃうんだよ。だから出来るだけ人がいない場所を探してやってるんですー。まぁ、ほとんど河川敷だけどさ。

家にいても良いんだけど、借金取りが時々来るから、ね。トラブルはお呼びじゃないんです。


なんやかんやでストレスがたまっていたから、これ幸いとばかりに河川敷で思いっきり発散していたんだけど…そのせいで闇道さんに見つかったんだろう。


いつも人がいないところを探してたから、私が今いるところは当然人通りはない。だから、明らかに不審者なサングラスをかけ超ロングなコートを着て話しかけられても目撃者はゼロな訳でして。


こう見えて、私、今すっごい困ってるわけなんですよ。


…似てるだけで、実際には縁もゆかりもないただの変態さんかな、なんて淡い期待を抱いてみたり。

いや変態さんも困るけどさ。そっちは警察に突き出せば終わりになるじゃない?


それに、風華と灯里が今まで見たことないくらい警戒してるんだもん!毛を逆立てていて…うん、かわいい。…いや、違うか。



「えー、と…」

「あぁ、そういえば名前を言っていなかったな。私は闇道武(あんどうたけし)という」


うわぁぁぁぁぁぁ、やっぱ本物だったよおぉぉぉぉ!!

そうだよねそうだよね!あからさまに高そうな車に乗ってきてたもんね!

こんなにTHE☆悪役な格好似合うの闇道さんくらいだよね!


嗚呼、一瞬でも信じたわたしが馬鹿だったよ…


呆然としてる私をよそに、ぺらぺらと話し出している闇道さん。

私の魔力が強く、魔術の上達ペースも高い上、云々。

身体能力も結構高いから、役に立つから私の所に来なさい、云々。


(いやいや、魔法は趣味ですから。体力っていっても、灯里や風華と戯れで100メートルを全力疾走したり、単にストレス発散としてボールにあたった結果木が折れちゃっただけですし。あんたについて行ったって、私はなにも得しないし)


心の中で呟いてみる。しかし、実際に言ったとしても、何の効果もないだろうが。

足元でくつろいでいた風華と灯里を見る。灯里は私の視線に気づくと肩に飛び乗り、風華は私の頭に飛び乗った。

2匹がちゃんと乗ったことが確認できると、私は顔を勢いよく上げ闇道さんをキッと睨みつける。何か感じ取ったのか、面白そうな顔をした闇道さん。


深く息を吸い込む。

「へーそうですかそうなんですか闇道さんっていうんですかそうですか残念ながら名乗られたとしてもどこからどう見ても不審者だし初対面な人とは話しちゃいけないって親に言われてるので!バーイビー☆」


明奈 は 逃げる を つかった!


逆光になってて少し分かりにくいけど、闇道さんは呆然とした表情をしていた。

いや、よく考えてごらん。普通逃げるって。その外見だし。







そして、闇道さんに初めて声を掛けられてから2週間が経った。


「おい、鬼丸明奈」

「だぁーかぁーらぁー!不審者はお呼びじゃないんですって!!」

「そうか…ところで、ここに高級チョコレートがあるのだが?」

「う…」

「………」

「……べ、別に?お菓子につられたわけじゃないけど話してあげても良いよ、うん」

「…釣られているだろう、確実に」

「………」


河川敷や人気のない公園に行く度、しつこく声をかけてるうちに私の性格が分かってきたんだろう。

ここ1週間はやたら高級そうでおいしそうなお土産をもってくるようになりました!餌付けされてる自覚?もちろんあるよ!でも仕方ないよね、だって食べたいんだもん!!

呆れた目で見てくる灯里たちの視線は気にしないよ!


近くにあるベンチに座って、闇道さんからお菓子を受け取った。座った私に対して闇道さんは腕を組んだまま立っている。その様子は無意味に偉そうに見える。いや、実際立場的には偉いんだろうけどさ。


「……ねぇ、どうして私なの?」

包装紙を開けながら、最初に声を掛けられた時から疑問に思っていたことを聞いてみた。

闇道さんが私に提示してきたのは、新しい魔法開発への協力である。

いくら私が魔法が覚醒しある程度使っている様子を見せているとはいえ、まだまだ技術も低ければ年齢も幼いただの子供だ。そこまでして協力を求める必要があるとは思えない。


「ふ、そんなことか」

鼻で笑う影山さん。なんだろう、妙に腹立つ。


「私が今、育てている作品…いや、子供がいる。それがちょうど、お前と同じ年齢だ」


・・・ふーん。なるほどね。


比較的身体が出来あがっている年上の人ができたことを、まだ出来上がっていない子供へ同じことをさせて、身体に負担をかけて調子を崩すようなことがあっては本末転倒だ、と。

事前に、同い年の子供で体への影響とかを確認できるのであれば便利だと、そういうわけか。

一言で言えば、実験台モルモットなわけですな。

腹の立つ話だし理解したくはないが、納得は出来た。


(しかし…私と同年代で、闇道さんのお気に入り…か)

もしかしなくても、私…いや、鬼丸明斗が敵役になっていた、金持ち坊ちゃまのことだろう。名前は確か、神谷玄弥かみたにげんや。2人は犬猿の仲のように描かれていたし、師匠が闇道さんというのは覚えていたが、こんな時から繋がりがあったのか。


唇に手を当てて考え込んでいた私に、何を思ったのか闇道さんは唐突に口を開いた。


「悩む必要はないだろう。お前はただ、私に従えばいい」

「…は?」

「お前が私の望みに応えるならば、私もお前の望みを叶えよう」

「・・・は?」

「契約ということだ。お前が私に従うならば、それ相応の対価を払おう」


そう言いながら渡してきたファイルには、厚いとは言わないが薄いともいえない量の紙が挟まっていた。目線を上げて見やると、闇道さんは先ほどと変わらず静かにこちらを見ていた。見ろ、ということなのだろうか。


ファイルを開くと、最初の数ページは私の家族構成や借金地獄の現状などが記されていた。改めてみるととてつもない額の借金だよなぁ、と思いながら読み進めていった。そして私の名前が書かれたページには、誕生日や血液型、身長や体重と言った情報に、魔法属性 火、風(推定)と記入され、写真もついていた。…隠し撮りですかそうですか。

最後のページには、協力した際の報酬が記されていた。一旦閉じ、もう一度開く。・・・うん、なにこれ。そこには、子供相手に用意する金額じゃない、とツッコミを入れたくなる金額が乗っていた。


「・・・さて、どうする?」

にやり、と笑う闇道さん。


どうする…か。


私は、この人が自身の復讐のためにいろんな悪事に手を出してることは知ってる。そのうち警察のお世話になるということも。それが1度や2度ではない、ということも。


逮捕、脱出、また逮捕…と繰り返し、あの手この手で主人公たちやプレイヤーを苦しめたり困惑させたりした『僕の物語』(この世界)に大きくかかわっている人物。

下手すると、この人が行うことによって、私にまで火花が散ってくるかもしれない。


だけど。


元・父親が残した借金を返すために、そして私を養うために、母さんはひっきりなしに仕事をしている。滅多にきちんと顔を合わせることができないほど、だ。稀に会話を交わすのだが、その時の顔色はいつも悪い。このままでは、何時倒れてもおかしくないと思うほど。


正直な話、生まれる前の記憶をもっているせいか、あまり血のつながりを感じたことは無かった。

だけどそんなこと知る由もない母さんは、不気味なほど早熟な私を、自分のことを省みずに、全力で守ろうとしてくれてる。



だから。


「わかりました。契約します、貴方と」


少しでもあの人に報いたい。

もしも私の能力で叶えられるとられるというのならば、私に出来ることなのならば、なんだってやってみせよう。



「契約成立、だな」

低い声で言う闇道さんの目を見ながら、私はゆっくり頷いた。

幼少期編02 おまけ


もらったチョコを口に入れようとして、灯里がじっとこちらを見ていることに気付く。

明奈「食べる?」

灯里『べ、べつに食べたいわけじゃないけど?』

明奈「じゃあ風華に上げるね」

風華『わーい』

灯里『うわ、風華ずるいぞ!』

明奈「欲しいならいえばいいのに。はい、コレは灯里の分ね」


闇道「(この年で精霊を使役する…か。相当な魔力の持ち主だな)」

明奈「(なんか見られている…チョコほしいのかな?)」


すれ違う2人

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