おかえり
社会人になって初めての冬がやってきた。
部屋においてある石油ストーブをつけ部屋を暖める。
しばらくして、部屋が暖まると、俺はテレビをつけて天気予報のニュースを見た。
天気予報では今日の深夜にかけてから雪が降るらしい。
「・・・・・・」
俺はテレビを消してべランドの窓を開け空を見た。
空には厚く暗い雲が覆っていた。
「こりゃあもう少し早めに降るか」
ベランダを閉めキッチンに向かった。
ああ、そうだ。
玄関も閉めとかないとな。
夜は危ないからな。
戸締りをして再びキッチンにもどり遅めの晩飯を作ることにした。
「今日はカレーにするか」
一人暮らしでは給料日前ぐらいしか作らないカレーを作り始めた。
激辛のカレーを。
――― 一時間後 ―――
「よし出来たな」
俺は出来たカレーを味見した。
「・・・上々だな」
鍋に蓋をして時計を見た。
時刻は11時前だった。
カーテンを開けて中から外の様子を見た。
「・・・降ってきたな」
外ではチラチラと雪が降り始めていた。
「・・・あいつもそろそろ来るな」
―――ピンポ~ン―――
その言葉と同時に玄関のチャイムが鳴った。
「・・・・・・」
だが俺は玄関いかない。
―――ピンポ~ン―――
―――ガチャガチャ―――
「・・・・・・」
―――ピンポンピンポン―――
―――ガチャガチャガチャ―――
「・・・・・・・・・」
―――ピンポンピンポンピンポン―――
―――ガチャガチャガチャガチャ―――
「・・・・・・・・・」
―――――――。
「(静かになったな)」
俺は玄関のドアについている小さな穴から覗いた。
「・・・開けてよ~」
外で女がしゃがみ込んでいた。
「・・・涼~。開けてってば~」
俺の名前を呼びながら軽くドアを叩いた。
「寒いの~。お願いだから開けて~」
その姿を見て俺は満足してドア鍵を開けドアを開いた。
「何やってるんだよ雪」
しゃがみ込んでいる女の名前を呼びながら笑顔を向けた。
「・・・・・・」
雪は頬膨らませてた。
「怒ってるのか?」
「・・・氷漬けにしてやる」
「じゃあな」
俺はドアを閉めた。
「ごめん嘘!嘘だから!!だから開けてってば!!」
ドンドンとドアを叩きながら必死に言う雪。
俺はドアを開け
「氷漬けにしないな?」
「・・・はい。しません」
「よし。入っていいぞ」
そう言って雪を部屋に入れた。
「ひどいよ涼ったら。何で玄関閉めたんだよ」
「何となくだよ」
「何となくでしないでよ。寒かったんだから」
そう言って雪はストーブの方に行き体を丸めて温まった。
「・・・お前、雪女の癖してほんと寒さに弱いよな」
「仕方ないでしょ。雪女だからって寒さに強いわけじゃないんだから」
「やれやれだな。ほら、熱いお茶入れたから飲めよ。舌火傷すんなよ」
湯飲みにお茶を煎れて雪に渡した。
「ありがとね~。・・・ップハ~生き返る~」
「そりゃあよかったな」
ああ、言い忘れてたがこいつは雪女の雪。
れっきとした妖怪だ。
ちなみに俺は普通の人間だ。
なぜ妖怪と人間が一緒にいるかだって?
それは俺と雪が恋人同士だからだ。
雪は冬の間だけ俺の家に住んで雪を降らす仕事をしている。
春になると別の所に行って雪を降らす。
だからこの短い冬の期間は俺達にとって貴重な時間なんだ。
「飯食ってないんだろ。カレー作ったけど食うか?」
「ほんと!お腹空いてたんだ!食べる~!!」
「ちょっと待ってろ」
「は~い!」
俺は皿にご飯とカレーを入れてテーブルに置いた。
「相変わらずおいしそうだね」
「おいしそうじゃなくておいしいだ。じゃあ食うか」
「いっただっきま~す!」
雪がカレーを一口食べた。
「・・・・・・」
動きが止まった。
「・・・・・辛~~~~~!!!」
透き通る白い肌が一瞬で真っ赤になった。
見ていて面白い。
「そうか?俺は普通だがな」
「み・・・水ちょう・・・だい」
「はいよ」
水を入れたコップを渡すと雪はぶんどり飲み干した。
「ンクンク・・・ハア・・・ハア・・・」
「温まったか?」
「・・・おかげさまでね」
「そりゃよかった」
「お礼をしてあげるね♪」
雪は席を立った。
「馬鹿!止めろ!!」
しかし遅かった。
雪は雪を部屋中に降らした。
―――。
――――――。
「これに懲りたらもうしないでよね」
「・・・わかったよ」
雪を全部片付け終わり俺と雪は一息入れていた。
「涼って相変わらずだね」
「何がだよ?」
「その性格だよ」
「文句あるのか?」
「ないよ♪」
「ならいいじゃねぇか」
「うん」
その後俺達はくだらない話をしばらくして風呂に入り寝ることにした。
・・・風呂は別々にはいったからな。
「じゃあ俺は床で寝るから。雪はベッド使っていいぞ」
俺はそう言って床に敷いてある布団に入ろうとした。
「・・・どうした?」
雪が俺の服の裾を引っ張ってきた。
「一緒に寝よ」
笑顔で雪は言った。
「・・・・・・」
「恥ずかしいの?」
「そんな事はない」
これは本心だ。
「じゃあ何で?」
「お前冷たいから」
「え~いいじゃん。一緒に寝ようよ~」
駄々をこね始める雪を見て俺は
「・・・わかったから駄々こねるな。これじゃあどっちが年上かわかんねぇな」
「乙女に向かって失礼だな涼ってば!」
「乙女(笑)って悪かったから泣くの止めろ。謝るから!」
「・・・わかった。・・・グスン」
俺は雪と一緒の布団に入った。
「涼って温かいね」
「雪は冷たいな」
「なら温めてよ」
そう言って雪は抱きついてきた。
俺はそれを受け入れた。
その時俺は一つあることを思い出した。
「・・・ああ、そうだ言い忘れた」
「どしたの?」
何なのか聞いてくる雪。
思い出したのは大事な言葉だった。
「おかえり雪」
雪の顔を見て言った。
雪はきょとんとしていたが、すぐに笑った。
それはともて嬉しそうに幸せな笑顔で
「ただいま・・・涼」
そうして俺達は眠りについた。
雪の冷たい体を温めながら。
作者の春です。
この度短編で書いた雪女を長編で書くことにしました。
内容は雪と涼が結婚するまでのお話です。
1話ごとの内容は短めに書くつもりで投稿ペースもどうなるかわかりませんがしっかりと完結させていきます。
感想とかあれば受け付けていますので気軽に書いて下さい。
それではまたいずれ ノシ