試作1--おっさんが幼女を家に連れ帰る話
その村は、住人みんなが顔見知りというくらい小さく、退屈にすら慣れてしまったほど平和で、貨幣などなくとも暮らしていける自給自足と物々交換が経済の根幹、という本当にのどかな場所だった。 人々は日の昇り沈みで一日を計り、暑さ寒さで暦を数える。生活するために生きている、そんな人々だ。大らかで温かく、前向きな生命がそこにある。
そんな村には似つかわしくない、と自分でも思うのだが、俺はもうこの村から離れようとは思えない。都会の、政治的な軍事的なことに嫌気がさして逃げるようにしてきた俺に、この村はまさに安住の地だった。
生活の糧を、俺は物事を教えるという労働の対価として得ていた。この村の人々は生きるために必要なことは誰もが知っているが、それ以上のことは情報が入ってこないためとても遅れている。そこで都会から来た俺が、三日に一度か望まれれば二度、日が暮れてから眠りにつくまでのうちの小一時間を青空教室ならぬ夜空教室とでも言おうか、それに当てている。昼間にやらないのは、明るいうちは人々は畑仕事や家畜の世話、家事などなどがあるためだ。なので、昼間の俺は書を読んだり散策をしたりと、たいそう優雅に過ごしている。
いつもどおりの日だった。秋も深まって風も冷たくなってきたこのごろ、日向はまだ温かく、散歩をするもよし読書をするもよし、と窓から差し込む硝子越しの陽を楽しんでいたとき。その気配を、感じた。
まさか、と思った。
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えぇ、ほんとまさかですよ。戯れにというか思いつきのまま、行き当たりばったりに書いてみたのはいいものの、書き進めていくうちに、家の場所を変えようとか出会った年齢をずらそうとか視点を変えようとかいろいろと…。試作ならではです。
これを書いていたときは、王都のほうで揉め事があった夫妻が娘だけは逃がそうと目的地を定めない転移魔法でどっか飛ばして、飛んできた気配を師匠が感じ取って行ってみたら幼女が。お気にいりのうさぎのぬいぐるみを抱いて呆然としていたので持って帰ったと。
でもなんかちょっと違うかなー? って思ったり。なにがどうっていうのはわからないんですけどね。きっとあらすじとかきちっと考えてからじゃないとだめなんだろうな…。私、あらすじを考え終わった時点で満足して終わっちゃう自信、あります(笑)