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瘴気と屋敷

1~2日に1話のペースは守りたいです

森を抜けたら、草原だった

やけに草の高さが高く生い茂っていて私の視界では草草草ばかりしか見えない

草を潜り抜け、幾程歩いただろうか

明るかった陽光は見る影も無く微かな月光が静寂を彩っていた











(………しかし、先が見えないと不安になるな)


鳴声にしかならない姿では声を出そうとも思えない。愚痴みたいだが仕方ない。いい加減歩きつかれてきたのだ


現在の位置がどこか解れば良いのだが…仕方ない、人型になればこの草ばかりの視界は晴れるだろう


(……森を出て余り経たずにまた人型に成る事になるとは…)


力を形作るように動かし。魔力を加えるようなイメージを思い描く。記憶はあの成功した時のように…





"ポンッ"





「余り人に見られたくは無い姿だが……まあ、仕方ない」


案の定同じ姿にしかならなかった。だが、視界は良好。猫のときよりかなり目の高さが上がっている為草原を見渡す事ができた


宵闇の草原の中、見渡すと辺り一面草しか見えない…何だここは?


「私は森から出てきたはずなのだが…?」


来ただろう道を振り返るように後ろを向くが、濃い闇に隠されているのか遠めに見ても猫の目を持ってしても確認する事が出来ない


「………これは、どうしたものか。魔術でも使えればな…」


魔術の中、無魔法に値する中に自分の位置を大まかに認識するというものがあったはずだ。あれは基礎中の基礎だから忘れようが無い…ん?


「いや、今の私なら魔術は使えるのか?」


今、考えてみれば私は人型をしている。指もある。声も出る。魔術施行に必要な要素は揃っている…私は馬鹿のようだな。こんな事を見失っていたとは


「………"探査"」


声と共に指先で方を描く。極単純な形と詠唱で発動する魔術だったはずだ


暫くして私の視界に地図のような絵が浮かび上がってきた。どうやら成功したらしい…さて、私は今どんな場所に居るというのだろうか…?


「……………………………ぉい。これは何の冗談だ?」


私が居る場所。地図が指していたその場所は瘴気の森と呼ばれていた森の中だった

この辺りを見てどこが森なのだろうか?と不思議にしか思えない…が、よくよく考えれば理解できることだった


「……未踏の地、だからか」


瘴気の森、この名前の由来通り森に入ったものを瘴気で侵し狂わせる為帰ってきたという報告が余りにも少なくその報告でさえ僅かな範囲しかないと言われていたはずだ。その記憶通りなら納得が出来る…私が瘴気に対して無事なのは魔獣だからだろう

しかし、今の場所だどこか解った所で何の解決にもならなかった。この草原が瘴気の森とどう繋がるのかさえわからない。ある意味手詰まりだ


「仕方ない。誰も居ないと良いが…」


目を閉じ。手を下に下げ。指だけで何かを紡ぐように。両手から下に放たれた光が地面に複雑な陣を描き始める…


「これで疲れないのだから、呆れたものだ」


元の自分なら陣が完成する前にへとへとで魔具を使わないと厳しいはずだった魔術をこうもあっさりと描いてしまう今の自分には呆れるしかない


「………"瞬移"!」


陣が全て描き終わると同時に詠唱する。この魔術はかなり連動の判定が厳しい。陣と詠唱が僅かにでもずれると飛び先が変わってしまうのだ



………そして、瘴気の森から魔猫は居なくなった























「………っ、酷い有様だ」


飛んだ先にあるのは古い屋敷だった。魔術は成功したようだ…胸を撫で下ろすがその先に見えた有様に唖然としてしまった

この屋敷は私が隠れ家として使用する為に昔購入したもので王国の都から離れた森の中にある。近さといえば聖教国からのほうが近いはずだ。閑静な屋敷としてあったはずなのだが、今見た様子は明らかに廃墟。屋敷の外壁は蔦にほぼ侵食されていて下の色を窺うことすらできない程だった


「一体どれだけ時が過ぎたのやら…と。戻るか」


一々思い出すように言わないと人の姿のまま居そうな気がして怖い。あくまでも今の私は猫魔獣なのだから。それに目の前の屋敷を人の姿で中に入るのは難しいだろうと思う気持ちもある


猫の姿に戻り、入り口に向かう。扉は半壊状態で蔦が幾重にも絡み合い行く手を拒んでいるようだったが蔦の隙間をすり抜けるようにして侵入を果たす私だった。私の家なのだから侵入というのは可笑しいか


(中は意外と…埃がかなり酷いな)


入り口を越え中に入って目にしたのは埃まみれの廊下や階段だった。もう数年以上誰も入ってはいなかったのだろうと現状が伝えてくる

埃の道に足跡をつけながら食堂、広間、居間などを見回ってみるがどこも同じ状況だ


(賊などには入られたことは無さそうか)


埃の積もり方もあるが、棚などが荒らされていた形跡が全く無いのが結論だった。生活していた様子さえ全く無いといえば不安になるが仕方ない

階段を上り、各部屋を回っているうちに最後の部屋になってしまっていた。今迄で得た収穫は余りにも少なかった…が、ここにはきっと何かあるはずだ


(一応私の書斎だったからな)


私が生前に集めた魔術書を集めた書斎。彼等なら、きっとここで学んでいたはず

淡い期待と我侭な願望を胸に抱え書斎の扉を開ける


中は暗闇しかなかった。本を守る為に外気を絶っていたためだ。魔力で部屋全体を明かりで満たす様な想像を作ると部屋は明るくなった。私も魔力の使い方が上手くなってきたようだ


(……本は流石に散らばっているか。まあ…仕方ない…ん?)


あちらこちらに散らばっていた魔術書を目にやり後で片付けるかと思った矢先に目に入った机の上。白い紙が一枚分銅で押さえて置かれていた


『フィン師匠へ。僕達がここに避難させられた後光と共に王宮を貫いたそうです。その後聖教国に攻められ国は滅びました。父には悪いですが悪い噂が絶えなかったこともありこれはこれで仕方ないと思います。フィン師匠は悪くありません。

と、後連絡になってしまいますが僕達は見聞を広げる為旅に出ようと思います。僕も彼女もある程度の魔術を理解できたので心配は要りません。

フィン師匠が死んだとはとても思えません。消えてこっそり椅子に座ってそうな姿が目に浮かびます。今生の間にまた会えることを彼女と共にお待ちしています 

             レイル&ミファ』


(王子もお嬢様も旅に出たのか…良かった)


王子達のことは気掛りの一つだった。宮廷魔術師の傍ら家庭教師をしていた私の教え子だった2人は聡明で思慮もあり、とてもあの王や貴族たちと血が繋がっているようには思えなかった。きっと隔世遺伝だったのだろう。

彼らをここに飛ばしたのは私のエゴだ。決して褒められる事ではない…だが、実際生きていて前向きに動いてくれているというのを感じるとそれだけで救われる気がするのだ


(自己満足でしかない…のは解っている)


自嘲しながらその紙を近くの本に挟むようにして隠すようにする。帰ってきたときに何かがあったことを知らせる為だ。このような廃墟と化した屋敷に戻ってくるとは思いづらいが、石橋は叩いてわたるべきだろう?

しかし、あの2人が旅か…どのような冒険になっているやら、だな










猫は微かにに笑みを浮かべ、隠れ家だった屋敷を後にした

フラグ回収始めました

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