魔猫の誕生
文才が欲しいです…どこかに売っていないかなぁ…
自分の声で目を覚ますと言うのも大概ありえないことだと思っていたが、現状を思えばそうでもないらしい
静寂と化した周囲の所為で、一手一足でも音が聞こえそうだ
しかし、大型の魔獣を否定したからとはいえ…
猫になることは無いだろう…?
「にゃぁ……」
暫し時は経つ
この体で何が出来て、何が出来ないのか現状をただ只管確認していた
結論
出来ない事の方が圧倒的に多い
まず、物が持てない。これは手の平を見れば解る…肉球と小さな指しかない手では何も掴む事ができなかった。やはり道具を使うと言うのは人類の専売特許だった
次に、言葉が話せない。独り言でも猫の泣き声変換される為、あまり言葉を発する事がなくなってきた。まあ、話す相手でも居れば違うのかもしれない
そして、一番重要なのが…魔術が使えない。術式を練ることが出来ないのだ…これは物がもてないということに直結したことでもある
逆に魔法を自由に扱えるようになったのには驚きと共に呆れてしまったが
ここで、魔術と魔法の概念についておさらいしておこう
簡単に言えば魔術は術式を使用して効果を生み出すもの。魔法は魔力を使用して効果を発生させるもの、だ
魔術の術式と言うのは方陣や詠唱といった発動式や儀式、魔道具などといった道具式などを使用して行うものの総称を言う。あらかじめ指定されている式は扱いやすく、また調整や改造という工夫も可能。魔力の消費を式で補える為、魔力を工面できれば生前に見せた私のような事も出来る。
こう言ってしまうと完璧じゃないか、と思うのだが…もちろん欠点も存在する
式を扱えないと使えない、事前に決められた効果しか発動しない。発動式は時間を、道具式は費用が掛かる等々…よくよく考えたら扱い辛いな
逆に、魔法は魔力そのものを使用して望んだ効果を発生させる方法をを言う。事前に指定した効果は無く、その時その時で違う効果を引き出す事が出来る…言ってしまえば万能な力だ。
だが、勿論欠点はある。寧ろ欠点しかない
魔力そのものを使うため、魔力が無ければ使用できない。効果に対して必要な魔力が不明の為魔力枯渇を起こしやすい。最たるものが、想像できない効果は発動できないというものがある…これに関しては私は魔術知識との併用で賄える事が判明した
私は黒魔術以外の魔術は一通り学んでいた
時間魔術、空間魔術などの応用から地水火風などの属性魔術まで。伊達に宮廷魔術師筆頭出は無かったんだよ。他の魔術師からは酔狂者と思われていたらしいがね
しかし、黒魔術は好かない。相手を傷つけるだけで終わる、破壊の後に再生が見込めない魔術は邪法でしかない…世間一般で一番使われているのは黒魔術というのは何か間違っているだろう!?
…と、大人気無かった。これ位黒魔術が嫌いだ
だからというか、私は魔術に色を付けた。
火術は赤魔術、水術は青魔術、土術は茶魔術、
風術は緑魔術、光術は黄魔術 時間は金魔術、
空間は銀魔術、創造は紫魔術、対抗は虹魔術、汎用は無魔術
これらと白魔術を足して11種類……広く浅く覚えすぎたとは思う
一応黒魔術に引けを取らない攻防は出来ると思うが…今のこの姿ではな…
という事で私は指が紡げない、声が猫語にしかならない、といった理由により魔術は使うことが出来なかった
その代わりといっては何だが、魔力が途方も無い。目覚めてから魔力を感じようとするたびに木々がざわめくのが煩かったので必死に覚えた記憶がある
さらに、魔力が漏れると時折やって来るのがいて…
「グルルルゥ………」
こんな感じに獲物扱いされたりするのは慣れてしまったな、もう
「グ…ルルルゥァッ……!」
相変わらず単調だ。そして何故群れで来ない…狼といえば群れる獣だろう?
馬鹿な狼が突撃してくるのを見て、とん、と軽く飛び上がる。それだけで終わる
何せ、後ろは湖だ…冷たい水で頭を冷やすんだな
"…ザバンッ!!"
勢いそのままに水の中に飛び込んだ狼を目の端に捕らえながら、ふと考えが過ぎる
そういえば、転生してから腹が減った事がない。水分は湖が満たしてくれる為不足は無いのだが、何故だろう?
考えても答えは出ない。女神でもいれば答えを告げてくれたかもだがもう逢えない相手に多くを望むものじゃない
それに、空気を食べて過ごすことが出来るのなら楽で良い。生肉や生魚は記憶が残っているので元人として避けたい限りだ
と、狼はいつの間にか居なくなった様で静けさの戻った湖面に私の姿が映った
純白の猫。ほのかに水面が光って銀色のようにも見える…我ながら高そうな猫だと思う。愛玩用という名目で売られていても不思議じゃないような猫の姿…尾の数や目の色を見なければ、という注釈はつくが
目が赤く、尾は9本…やはり誰がどう見ても魔獣になっていたよ
魔法の種類については多々あると思います
とりあえず思いついた魔法の種類を挙げてみました
黒魔法があるのなら闇術は何色になるのでしょうか…悩みが尽きません