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教育と罠術

罠術っていいですよね…造語だと思いますけど

私は今、部屋に居る。人化したままだ


人化を解こうとすると何故分かるのか侍女から耳と尾を掴まれるので集中できず失敗に終わってしまう。もう3度目だ


何故彼女かわかるのかと言うと「貴女は分かり易過ぎです」と笑われた。腹芸が苦手よね、とセラにも笑われる始末だ…私は政治家じゃない。腹芸など身につけているわけが無いだろう


ちなみにこの部屋、教育部屋というらしい。屋敷を2人で使うには余っているらしく適当に部屋を改装したのだといわれた


彼女は私を少女に仕上げると言っていたのだが、一体この私がどうやって少女になると言うのだろう?


「そのままで構いませんよ、術式で誤認識させるだけですから。数日どころか数刻も掛かりません、安心設計の自慢の術式です」


しれっという侍女。今までもそうやって来ましたといっているかのようだ…どこかに被験者がいるのだな、これは。被害者でも間違いでは無さそうだ


「いや、不穏な空気満載なんだが。そもそも誤認識といっている時点で精神や体への負担が酷くはないか?」


「精神関与なので身体には負荷はありません。精神面が脆弱な人は発狂するかもしれませんし強過ぎる方には効かないでしょう。貴女ならそこまで弱くも強くもないでしょう?」


聞いて良かったと本当に思う。発狂とかいわれると腰が引ける…信用されているのか分からない。そもそも私は一応魔獣なのだが。精神的な術式が効くものなのか?


「納得はし辛いが我慢した方が良いか…もし拒んだらどうなる?」


「拒んだ場合は術式を使わずに普通のお嬢様教育を施すだけですが…もしや初めからそちらの方をお望みですか?」


意外という表情で見られればそれは不安になる。普通の教育という表現があまり普通ではない気もする。疑いすぎだろうか。


「いや、手間の掛かる事は避けよう。私も行儀作法などを一からというのは勘弁だ」


「……分かりました。勘違いはあるようですが術式で行います。出来る限り抵抗はしないようお願いします」


言葉を切ると彼女は準備を始めた。部屋中に魔力で出来た糸のようなものが張り巡らされる。これが彼女の使用する『陣』なのだろう

眺めながら彼女の言葉を考えていた。僅かな間と勘違い…私のお嬢様と言う認識には彼女達と差があるということなのかもしれない。お嬢様というのは貴族の教養を持った女性という事だと思って居たのだが勘違いと言う事は違うらしい…では、お嬢様に仕立てるというのはどういうことだろう?


「深く考えませんように。貴女が思い描くお嬢様というものは絶滅危惧種のようなものですから」


部屋中に…いや、私の周りにと言った方が正しいのか。魔力の糸が彼女の姿を確認し辛いほどの密度まで張り巡らされていた。まるで昆虫の蛹のようだと思う。羽化したらお嬢様になると言う仕組みなのだろうか…確かに陣の流れと相性は良いと思うが。それよりこれだけの陣を作る技術と魔力に驚くばかりだ


「すまない。ここまでのものとは…私が貴女を甘く見ていたようだ」


「いえ、これくらいはあの人の侍女を努める身でしたら何とでも。甘く見られていたのは分かっていましたのでこれで分かって頂けたなら幸いです」


ふと、あまり表情を変えない彼女が笑みを浮かべた気がした。蛹の中見れるはずがないのは分かっているが…私の驕りもあったのだから機嫌が落ちないのであれば何よりだ


ちなみに今の私では彼女に魔力量では勝てない。尾を1つにしているだけあり元の私と同等か少し多いほどしか魔力は感じない。今行われている彼女の陣及び魔力は優に2倍はあるだろう。今なら人化を解除できるだろうがその場合この陣がどのような作用を起こすか分かったものではない…思考全てを書き換えられることなどなったら目も当てられない


私は流されやすいのだろうな、とは思う。本当に嫌なのなら。殺される寸前などならすぐさま尾を隠すのを止め力尽くで立ち向かうだろう。だが命の危険がない、且つ私を理解している相手の事を無碍には出来ない


「完成しました。身動きが取れないのは申し訳ありませんが暫し…数刻ほど我慢してください」


声が聞こえた。既に糸は私の体にも巻きつき蛹の中で手足を縛られている。そんな状態だ…傍目には囚われのお嬢様に見えるかもしれない。きっとこの格好は彼女の趣味だろうと思うが口には出さない。見られないだけまだ良いと思おう…誰かに見られたらこの姿はきっと恥ずかしい


「…数刻もこの状態なのか?」


「ふぅ、苦しいでしょうがこちらの魔力が厳しいので我慢してください…外から見れるようにしておけばよかったと後悔しています」


見えるわけではないが疲れているのが声で分かる。多分彼女の術式の中でも強力なものなのだろう。実際術式の陣を描く際に一度で描き切れないのは良くあることだ。詠唱とは違い陣の術式の場合は時間は掛かるが中途で止め書き足しながら完成させることができる。止めるには技術も必要だが延々と長い詠唱を続けなければいけないよりは断然楽だ。私はそう思っている…両方併せて使うのが最善だとも


数刻が過ぎただろうか。魔力の糸で縛られる私も疲労が濃くなっている。糸が切れると人形のように座り込んでしまうだろう


「準備が整いました。今から再開します。仕上げ前に声をかけますのでそれまでは耐えてください」


声が聞こえた。彼女の声からは疲労の色は感じない、休憩は程よく取れたのだろう…理不尽だが仕方ない。私の為の術式だ、私が犠牲になるのは仕方がない


それから僅かに時が経ち。蛹内部は形は何も変わった様には見えないが糸から伝わる力が変わったように思えてきた…そろそろなのだろう


「今から、仕上げますので。死なないように全力で耐えてください!」


いや、死なないようにって…安心設計といっていたのは嘘だったのか? そういえば数刻も掛からないといっていたが間違いなく掛かっているだろう…実はかなり大規模な事にこの蛹の外はなっているのだろうか?


「耐えろって、ちょっとま…ゥッッ!?」


講義しようと口を動かした際のことだった。いきなり魔力で作られた蛹が急激に小さくなり体に張り付くように圧迫してきた…身動きが取れないどころか、息をするのも辛くなってきた

さらに、張り付いた蛹から躍動したかのような魔力がどくどくと体の中に押し込まれる…魔力酔いは軽く超えるだろう気持ち悪さも込み上げてくる


今何かを発した途端吐き気が体を支配するだろう事は容易だった。だが、吐き気は起こるも圧迫した蛹が吐かせない。息が止まりそうになると無理やり気管を開かされて声にならない呼吸を続けさせられる…

こんな中魔力を制御できるわけがない。尾を隠す魔力は解け、人化の魔力も解ける…かと思えば蛹がそれを許さない。猫の姿に戻れない。尾は2本までしか戻らない。私は苦しい中余計に困惑していた。もう体も意識も耐えられそうにない


(『何が、どうなって……ぅ』)


「…あ、言っておくのが遅かったでしょうか。その中で人化を解こうとは思わないようにしてくださいね。間違いなく猫の姿にまで魔術が伝わってしまいますから…戻るのは無理でしょうけど」


彼女が告げた言葉が何だったかは私には聞こえなかった。私の意識はその時には混濁した中に落ちていたのだから
































「……っ」


目覚めたらそこはベットの上だった。こんな所に寝たという記憶がない…どうしたことだろうか


「……そうですか」


記憶は物語っていた。あの陣に、あの魔術に私は耐え切れなかったのだろう。抗えなかったのだろう…あれほどの陣を組んだ彼女は落胆しただろうか…申し訳なくなってきた


このままここで寝ているわけには行かないので体を起こそうとした。が、何か違和感がある…見た目は私の体だ…いや、私はこんな服を着ていた覚えがない


着ている服は、なんというか、服といえる代物じゃない。透けているのが目に痛い。自分の体ながらやたら恥ずかしさが込み上げてくる。つい誰に見られているわけではないのに両手で体を隠すように抱く形になってしまう…なんでこんな事に?


「あら、目覚めたようね…結構似合うわね。ふふ、顔赤くしちゃって…恥ずかしいのかしら?」


多分現状の張本人だろう。私の事をまじまじと笑みを浮かべながら見る様は絶対に彼女だと思う


「これ、何なんですか? 私こんな服を着た覚えが……え?」


ちょっとまった。私は一体何を話している?


「うん、上手くいったみたいね。案の定かなり耐えちゃったから強く出てるけれど…あんな長時間耐えたのは貴女が初めてよ。普通は少し経っただけでで崩れ落ちるのに…数刻以上耐えるなんてレミスが逆に心配していたわ」


「ちょ、ちょっときちんと説明して! 私はこんな口調で話していないの!」


彼女が言っている事は大体が理解できる。あれは最後まで耐えるというものではなかったということなのだろう…自分が口を開けるとますます混乱してきた。私は少し黙りなさい


「単純な魔術なのだけどね。話す言葉の口調や動きの仕草に補正をかけているの。男言葉は使用不可。蟹股などの男の仕草もNG。そんな魔術よ…フィンにはある意味呪いに近いかしら?」


「…え。そんなの酷いです……」


呪いだな、確かに。羞恥心が強くなっているのもその影響なのか…昔はここまで恥ずかしいと思っていなかったと思う


「ちなみに今は慣れていないから齟齬が発生しているけれど。そのうち違和感無くなるわよ。普通にその口調で話せるようになるわ…思考は貴方のままよ。そこは心配しないで」


「思考まで持っていかれていたら私はたぶん耐えられません………わかりました」


身から出た錆なのだから、耐えるしかないのは分かっているんだが。まだ思考が私のままなら…救いがそれしかない。迂闊過ぎだ、私は…魔術の前にどういう作用か聞くべきだった


「そうそう、諦めが肝心よ。しかし…ねぇ。可愛くなったものだわ。襲いたくなっちゃいそう」


「………っ!? じょ、冗談でも止してください!」


今思い切り寒気がした。駄目すぎだ、これは…耐性がなさ過ぎる。羞恥心がかなり強化されているのは明らかだ


「ん~。まあ、冗談よ。しっかし強く出たからといって変わりすぎよね…ああ、そうだ。何か欲しいものがあったら持って来るわよ」


「……それなら。まともな服が欲しいです。この姿は流石に駄目です」


「はいはい、了解しました…お・嬢・さ・ま」





























この呪い、どうやれば解けるのだろうか…?

週2を目指して頑張ります…人化は次話も続行状態です

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