表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

現状と把握

1週間開いてしまいました…休みが欲しいです

私は朝に強くはない。猫に成ってからは尚更弱くなっただろう。森の中での生活もそれに拍車をかけてしまっているはずだ

なので朝早く起きることが出来ないのは仕方ない事だと私は思っている。早急の用事がある場合を除いては朝に起きる必要性を前から見出せては居ない


だが、この現状は何を意味するのだろうか


目が覚めた私は身動きが取れないことに訝しんだ。警戒心は決して弱くはない。寝ている間に私に害のある行動をしようとする者が居たら大抵は気付く事ができるはずだ…という事は大抵を超える者に何かをされたのだろう


私は紐でぐるぐる巻きに縛られて宙吊りになっていた。手も足も動かない程に適度に縛られている。食い込むほどではないが抜けることが難しいこの姿にした輩はかなりの強者だろう…誰、とは言わない。現に目の前にいるのだから


「私よりも起きるのが遅い相手に情けは有り得ないわ」


目で訴えて返ってくる言葉がこれだ。何様だ、お前は…言ったところで無駄だから言うまい

。そもそも私は客人ではなかっただろうか


そんな彼女は吊るされた私の前の席で食事を取っていた。相変わらずの草食のようだが、量はきちんと取るようだ。体系維持には肉や魚なども取った方がいいはずだが、肉食は彼女の口には合わないらしい。前に勧めて無理をされて吐かれた記憶もある…嫌な思い出だ


「ご馳走様。じゃ、言い訳を聞きましょうか?」


口を拭き、此方を見据えてくる2つの眼。何でそんなに強く当たられるのかが理解できない。悪いとは思っているが、怒りを買ったのならそもそも屋敷に入れないはずだし、呼ばれても居ないだろう


(『言い訳の前に、ちょっと良いか? 私はあれからどうなっているのか一切知らない。先にそちらを教えてくれると助かる』)


「…………一切知らない? 貴方、あの時魔術で逃げたんじゃないの?」


疑問符を隠すことなく浮かべる彼女。どうやら彼女の中では自分は逃亡生活をしていた事になっているらしい……この姿は変身魔術でも使っていると思われているのだろうか? そんなもの作った記憶すらないが


(『それは、まあ…後で纏めて話そう。しかし、あの時、か。もうかなりの時が経っているような物言いだな』)


「そうよ。貴方が居なくなってからもう10年も経ったわ。王国は貴方の望み通り滅んだわよ…上層部誰一人居なくなるという怪奇現象をおまけに、ね。私が…いや、聖教国が攻めずとも待てばそのうち他国に攻められて亡国となったはずだわ」


唖然としてしまった。10年だと…森に居た期間はそれほど永くは無かったはずだ。女神との準備はそれ程時間が掛かったようには思えないがあの場だけ時の流れが違うとか有り得るかも知れない、仮定でしかないが……結局はいつその時間が過ぎたのか、全く憶えも無く困惑するだけだった


「………どうかしたの?」


ぐるぐる巻きのままだが唖然とした状態に不思議に思ったのだろう、彼女は。彼女の中では私は生きていて逃げる為にこのような姿になっている…そんな所のはずだ。この姿が実際の私そのものだとは思いもしないに違いない


(『……ああ、どうかした。了解だ…説明するからちょっと紐を解いてくれないか。この姿のまま説明はし辛い』)


「ん、仕方ないわね」


どうやら開放されそうだ、と思った矢先いきなり支えていた力が途切れた。彼女は一切動いていない…となると侍女の仕業なのだろう。私は自由になった体で少し回転し体勢を整えるように床へとんと着地する


「……見事ですね」


(『無様な姿を見せられず済まないな。さて、何から言えば良い?』)


残念そうな気配が背後からしたので返してみただけだったのだが、彼女はなぜか笑みを浮かべていた。侍女を試したということは無いだろう…いや、有るのか。どういう主従関係だ


「ん。とりあえず、貴方のその姿は何? それと、何故口で喋らないの?」


「にゃ…にゃ」

(見たとおり猫だが。話すとこのようになる)


通じないのは分かっているが、そのまま話すように口を動かす。愛も変わらずの猫鳴き声しかでない。これで理解できたら天才だな…私なら無理だ


「あぁ、話せないことは理解したわ。で、猫の姿は何なの。誤魔化さない様にね?」


(『…この姿は話せば長いことになるんだが…良いか?』)


私は今までの微かに不真面目な空気を消すように、台の上に飛び乗り。彼女の姿を近くで見える位置で姿勢を正し、座る。あまり茶化す内容ではないからだ

彼女達も私のそういった雰囲気に気づいたのか聴く姿勢になったようだ。有り難い
























「………………」


無言。私が幾つかの内容を省いて掻い摘んだ内容を聴き、彼女達からの返答は一切無い

私が話さなかったことはシルヴィの事と妹女神の事位だ。メリッサのことは伝えた…そうしないと話が合わない内容だからな

はっきり言ってしまえば今の私はイレギュラーの塊のようなものだろう。女神に転生させられて魔獣の姿でここに居る。それだけで絵本の世界だ、話だけなら現実味が無い。だが、私がここに居る時点で現実を認識せざるを得ない

普通は私自身とフィン=リテェラを繋ぐ事はほぼ無理だ。証明する手段が無い…けれど、彼女との間だけには証明手段が存在した


「…………御免なさい。貴方が現実から逃げてどこかで身を隠しているのだと…決め付けていたわ。卑怯者だとも…」


(『構わないさ。私自身も後ろめたさは有る訳だしな…そういえば。森の宰相は休みなのか、今?』)


暗い話になる気配がしたので話題を変えよう。私の事で謝られても私のほうが辛い。質問は尤もな事だしな、宰相という役職は休暇が殆ど取れないはずだったと記憶している


「辞めたのよ。あんな仕事続ける意味が無くなっちゃったわけだしね」


(『…………私の所為か?』)


軽く言われた衝撃発言に私は藪から蛇をつついた気分になった。何故か侍女の視線が鋭いものに変わった気さえする


「違うわよ。私の場合は続ける意味がなくなったのよ…私が続ける意味って、覚えてる?」


ほっとする私は、直ぐにはっとしてしまう。彼女が宰相なんて割に合わない仕事を続けていた理由…


(『聖女、か…亡くなったのか?』)


「亡くなった訳じゃないけど、それに近いわ。今あの子は幽閉されているの、役に立たないからって」


彼女の顔に翳が落ちていく。余り話したくは無いことだろう。けれど、宰相という役職までなって聖女の手助けを選んだ彼女が庇い切れなかった理由が、分からない


「分からないって顔をしてるわね…まあ、隠す事でもないし。あの子…聖女は突然神の声を聴く事が出来なくなったのよ。必死になって調べたけど何が原因かも分からないまま。出来る限り隠そうとしても神の声を伝えていただけの子は誤魔化しなんて出来ない。私がどう見繕ってもね、無理だったのよ。そのうち国の上層部が聖女を信用しなくなって、後は泥沼……辞める前に聖女を幽閉させたの。魔術を仕掛けているから後数年は誰かの手に掛かる事も無いわ…権力争いに利用されるくらいなら遠ざけるわよ、私は!」


(『分かった。分かったからもう言うな』)


激昂した口調とは違い、顔を上げたら彼女の顔は涙を浮かべ…泣く寸前の表情だった。今の私に何が出来るだろう

そんな事を思っていたら勝手に体が動いていた。とてとてと前に進み台に乗っていた白い手…力を入れて握り締めていたのだろう、微かに震える手に。気付いたら前足を乗せていた


「…なによ」


(『今まで心に貯めてた言葉を吐き出したんだろう? 泣きたい時は泣けばいいんじゃないか? 我慢するのは良くないぞ…こういうときの為に親友って居るんだからな』)


「……バカ!!」


私はいつからこんな気障になったのだろうか。猫に成って本能的に近い行動をするようになったのだとしたら最悪だな…まあ、彼女が泣き止むまでは抱かれる人形と化することにしよう


…って、ちょっと? 抱きしめる力が強いのだが…強すぎて て、ちょっとそこは締めてくれるな……く…きゅぅ…

























私が意識を失ったのは僅かな時間だったらしい。抵抗しなかったのは我ながら良く耐えたものだと思う…抵抗して暴れていたら多分私も彼女も酷い事になっていただろうな


「自業自得よね、きっと」


他所を向きながら気まずい空気を隠せないでいる彼女の言葉に苦笑すら漏れる。まあ、彼女らしい…これで謝るくらいならきっと私達は親友といえる仲までは成っていない


(『……そういうことにしておこうか』)


悪態をつきながら体を確かめるように伸びる私だ。寝起きと同じ仕草なのは勘弁してほしい。猫の習慣というものなのだろう


「…そ、それより。貴方がまだ話して無い事があるのは分かっているのよ? 命に係るとかいうなら無理には聞かないわ…だけどね、その、親友に秘密事は無いんじゃない?」


伸びたまま姿勢が止まってしまった。それをここで言うのか…その言葉で

私は少し彼女を甘く見てたのかもしれない。計算して言っているわけではないだろうが、余りにも出来過ぎたタイミングだ。逆に問われるのはまだ先と思っていた私が甘かったのか…誤魔化したつもりだったのだが…目覚めたばかりなのに背中に嫌な汗が流れていそうだ


「貴方は嘘が下手ですね、何かを隠そうとすると手が動くのが解ります。それに、その度に手だけでは無くて尾がちょこちょこと左右に揺れるのに気付かないのはどうなのでしょうか?」


追い討ちをかけるように後ろからの声。何か笑われている気もする…振り向いたら落ち込んでしまいそうだ。そこまで私は駄目な奴なのか…


(『隠しているわけじゃない。言う必要が無いと思っただけだ』)


「それを誤魔化しているというのよ。私は誤魔化さないように、といったはずよ…私を巻き込まないようにとか、私に不利益があるからとかは理由にはならないわ」


どうやら完全に立ち直ってしまったらしい。こうなってしまっては厳しい

言い逃れをするにも、私はそれ程話術が上手いわけじゃない。無い存ぜぬで通せば追求はしないとは思うが、多分彼女との関係は悪くなるだろう

いや、ここは外に逃げるという手もある…いや、無いか。彼女だけなら未だしも侍女と2人掛かりでは逃げられるか怪しい。彼女達を傷つけないようにと考えながらは無理がありすぎる。まして魔力を使ってとなったら暴走との戦いという恐怖しか思い浮かばない…


「考えている事が丸分かりすぎるのでいい加減観念してください。見ていて恥ずかしいですよ」


ふと、私が思考に耽ってしまった中、聞こえた侍女の声は呆れたように聞こえ。途切れた思考のまま見ると彼女の顔はやけににやにやと笑みを浮かべていた


わ、私はそんなに解りやすかったのだろうか…




(『……どうしても言わないと駄目か?』)


「別に無理に言わなくてもいいわよ。その時は私達が無理やり聞きだすことにするから」


もう、彼女の中では私が秘めている内容が命に関るものではないと見抜いているようだった

私も男だ、諦める時はきっぱりと諦めるとしよう…女々しいとか言うな


(『仕方ない。説明するので少し離れていてくれ』)


「……何かするの?」


頭で話すよりも言葉のほうが伝えやすい。猫の姿よりも人の姿の方が彼女に言葉を届けやすい。そう思っただけだったのだが








"ポンッ"









「「え?」」


それは驚くだろう。猫が人に変わるのだ。私だって見たときは驚いたのだからな


「と、済まない。この姿の方が…」


彼女達に伝えようとしたのだが。何だろうか、嫌な予感がする。彼女達の私を見る目が尋常じゃないような…




「「何このかわいい生き物!?」」

















ちょっとまて!?

次回はおかしくなりそうです

でも、長くは続かないと…良いなぁ

人化のほうが動きやすそうだし…迷い中。題名に偽りありになりそう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ