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騒音と侍女

3日開いてしまいました。。。暴風は厳しいです

街の近く、大樹とはいかないまでもそこそこの大きさの樹を宿り場とし、眠りに付いた私だったが、突然の音に目を覚ます事となった


『起きなさい!!』


意図しない目覚めだった所為か宿木の枝から落ちそうになってしまった。猫が樹から滑り落ちたら笑いものだ


『……おかしいわね、寝ていると思ったのに返事がないなんて』


何時もならおかしいのはどっちだ、と突っ込みを入れただろう。ただ、私は眠い。睡眠を守る為なら石にもなろう


『まあ、いいわ。屋敷の場所は変わってないから明日にでも来なさい。これは命令よ』


勝手に命令されてその通りに動く奴がいたらそれは飼い馴らされているのだろう。私は飼い猫じゃないので命令を聞くことはない。そんな事彼女も分かっているだろうに…ふぁ


『じゃ、待ってるわ』


素直じゃない。不機嫌だったり機嫌がいきなり良くなったり、女性の感情は天気よりも予想し辛い……念話はそこで途絶えた為、うつらうつらしていた私は再度の眠りにすとんと落ちた





















再度起きた時には辺りは既に明るかった。木漏れ日が顔を指して若干眩しい…手で目を隠すように体を起こし、背伸びをする。日課みたいなものだ


(しかし、あいつの我侭ぶりは変わらないな…思うと足が遠のきそうだ)


樹から飛び降り、街を城壁を周るように歩く。街の中に用事はない…彼女の屋敷は街の中にあるわけじゃない。少し遠いかもしれないが、一日駆けて辿り着けない距離でもないはずだ


(それも私の記憶が正しければ、だが)


屋敷から近いはずのこの街の記憶が無い理由は、この街の元の姿と今の姿に差が有り過ぎたからだ。街の名前に気付いた時には驚愕した。私の記憶に有るはずのその名前の街は只の宿場町だったはずだ……あの時からどれ程時が経っている? 僅かに不安が過ぎる


人型になり、魔術を使いながら移動したほうが良いだろうか。空間移動は彼女の屋敷には繋いでいない為無理だ。現在位置を見ながらこつこつと行った方が安全ではある



悩んだ末、私が選んだのは猫のまま歩く事だった。1日遅れたところで大したことではないだろう……あの姿に成る事に若干抵抗があるのは否定しない。私は雌になったとはいえ頭は男だからな




















方向感覚に自信は無い。だが、意外と記憶は正しく残っていたようで何とかなるものだと思った。辿り着いたのは夜も更けた頃だったのは仕方ない


私の屋敷のように廃墟になっているわけではないが、しんと静まり返っているその姿は見た目には生命の欠片も感じられなかった


(流石にこの時間では寝ているか)


夜目が利く猫でなければ木々に囲まれた中佇む屋敷を月明かりのみで確認する事は厳しかっただろう。月明かりさえ僅かしか見えないこの状態は猫でさえ余り好ましくは無い


仕方無しに屋敷の入り口に音を立てずに向かう。落ち葉も砂利も無数に見えるが、それらは私の音を立てる材料にはならなかった

入り口の開き戸を見上げてふと違和感に気付く。開けるのは魔力を使うことで何とかなると思っていたのだが、どうも鍵が掛かっている様子が無い。寧ろ隙間が開いているように見える……無用心すぎだな


(彼女らしいといったほうがいいのか?)


まあ、深くは追求すまい。誰にも短所はあるものだ

そして躊躇はすれど歩みを止めることはせず、隙間から入ろうとした


(……罠か、また面倒なものを)


しただけで足は止まった。魔力の糸が隙間の奥に数本張られているのが見えたからだ。普通に戸を開けて入ろうとした所で何かが起こる仕様らしい。隙間からでも同様だ

私の背丈を考えれば気にしなければいけない糸は1つしかない。こんな高さの侵入者を想定はしていないだろう。居たとして精々野生の鼠や猫くらいだ


一番低い位置の魔力の糸を跨ぐように前足を上げ、周囲を確認しつつ越える。他に仕掛けは無さそうだ。重さ関連の罠が仕掛けられていても気付けないのは仕方ない







「…鼠がかかったかと思えば、猫でしたか…珍しい事で。どのような御用ですか?」


ふと、屋敷に明かりが満ちた。声は彼女のものではない、だが、聞き覚えのある声だ。頭を上げてみれば、そこにはエプロンドレスを優雅に着こなした女性が凛とした姿で立っていた

多分入り口の仕掛けは彼女のものだ。あれくらい抜けれる者ではないと入る資格は無いとでも言う事なのだろう


(『セラ付きの侍女だったか。名前は悪いが覚えていない…セラは起きている?』)


覚えのある姿に微かに安堵してしまったのが悪かったのかもしれない。気付いた時には私は首の後ろを掴まれて持ち上げられていた


「私は起きているわよ。誰かさんが来るのが遅いから罠を仕掛けて待っていたというのに待っても待っても待っても来ないし、いい加減寝てしまおうかと思ったところよ」


目の前に見えたのは、少し怒気を含んだ女性の顔だった…間違いなく怒っているな。1日2日待たせたわけじゃないだろうに怒る事も無いだろうとは思っても声には出せない。こういうときには話しを聞くか、話題を変えるかしか逃げ道は無い


(『セラ久しぶり。良くこの姿で私だと分かったな?』)


掴まれたままでは締まりが無いが、どうしようもない。この距離では念話ではなくても意思の疎通は図れるのが救いといえば救いか


「貴方、私を舐めてる? 声くらい聞けば音色が変わっていても分かるわよ。まあ、いいわ…あふぅ。さて、と…今日は眠いから明日には貴方がどういう経緯でそんな姿に成ったのか、今まで何をしていたのか詳しく吐いて貰うわよ」


どうやら彼女の中では睡魔が勝ったようだ。有難い…私も聞きたいことが有るからな


(『了解だ。お休み、セラ』)


「………ん」


…と、ここで寝るのは違うのじゃないか? 流石に侍女の子も困惑して…ないのだな


「あ…私はお嬢様を寝室に運びます。お客様はどうぞお好きになさっていてください」


結構日常茶飯事な風景のようだ。頷きセラを連れて行く侍女の背中を目で追っていたが、直に見えなくなると流石にする事が無くなる


(私も寝たほうが良いか、明日の為に)


明日、セラと持っている情報の交換をすることになるだろう。肉体的にも精神的にも疲労しそうだ…今のうちに回復を図るのは必然だな





















侍女が主を寝室まで案内し戻ってきたときには、ホールの端で丸くなって既に寝ている猫が一匹……侍女は笑みを浮かべ起こさないようにその場を後にした

週2~3話ペースで何とか…ペース落ちは御免なさい

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