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プロローグ

閲覧有難うございます 初投稿なので拙い文章ですが温く見守ってください

それは唐突だった。


暫くの間仕事に追われ城に籠った後の休日。


「ふぅ……」


あまり朝は強くない私だが、ふと目が覚めてしまった。体を動かしてみたが疲れは完全に抜けたわけでは無さそうだ

二度寝の誘惑もあったが窓からの光を見るに朝は過ぎていそうだった。このまま二度寝を実行したら夜に起きて生活のサイクルが休み明けに乱れたままになる可能性があった。

仕方ない、と着替えを行い食事の準備に取り掛かる。余り物があっただろうか?


「ドンドン! !」「ドンドン! !」


棚に何も残っていのを確認しガクリと肩を落としていた時にその音は聞こえた

あからさまに聞こえるように叩かれる玄関から聞こえる音に若干嫌になりながら仕方無しに向かう


「はいはい、聞こえてますよ。何事ですか、いった……」


文句を言いながら戸を開けた私は最後まで言葉を発する事ができなかった

待ち受けていたのは鎧で固めた兵士が数名


唖然としている私に対し

戸を叩いていたであろう先頭の兵士が無言で紙を渡してきた



《招集状》



その紙にはただ一言。それしか書かれていない

兵士たちは知らされていたのかどうか判らないが、ただ命令に忠実にと言う事なのだろう。私が受け取るのを見るや否や去っていった



とうとう、来る時が着てしまった。

私の頭にあるのはそれだけだった。













身支度を整えゆっくりと歩く。別に急ぐ必要はない。城の門を通る時に兵士に止められることもない。


そして着いた謁見の間には赤い絨毯を間に向かい合わせに幾人もの列が横に並んでいた。賓客を呼ぶわけではあるまい。何でこんなに集まっているのだか不思議だ。


「皆が集まっているのに遅刻とは良い身分だな、フィン」


絨毯を真直ぐ玉座に歩みを進める最中、玉座から届いた声に歩みを止められた。

厳かでもなく、親しみもない、完全に嫌味しか乗っていない声。


「っ……申し訳ありません」


間違いなく私だけに遅れて連絡が来るように仕向けたのだろう

報せが遅かったなどという言い訳は嫌味の後ではかえって逆効果なのは理解していた為、言葉を止め頭を下げる。


「まあ、良い。どうせこれで最後なのだからな」


特に気を悪くするわけでもない声。

辺りからニヤニヤという音でも聞こえてきそうな視線を感じたが、それも気にせず間をおき頭を上げた。


「これで最後とは…どういうことでしょうか?」


つい、声を返してしまった。

この後に繋がる言葉を私は知っているのに


私が昨日までしていた仕事。

宮廷魔術師なのに政治のことまで目を向けざるを得なかった現状。

最近の国の情勢。軍部や他国の外交官との関係。

そして…国の内部腐敗。


裏金横領は当たり前で強盗や密売、ましてや暗殺までもが日常茶飯事。

それらを国の1役人などだったらまだ可愛いものだったが

将軍職の殆どの者や宰相や側近、最後に国王まで関与していると断言できる証拠を私は持っている。


「お前の顔を見ることが、だ。フィン=リテェラ。本日を持ってお前の筆頭宮廷魔術師の任は終る」


やはり。

だが、それだけではないだろう?


「了解しました。では継続の手続きを次期筆頭に行いたいのですが、何方になるのでしょうか?」


「もう、手続きはこちらで済ませている。お前の役目は全て終わっているのだよ」


外野から飛ぶ声。確かこの声は宰相の息子だったか…多少の魔力はあったはずだが魔術師としての才能など欠片も無かった筈だ

呆れてものもいえないという表情を隠すのに失敗した。


「ふん。別にお前のような負け犬にどう思われようが関係ないな、もう」


読み取られたようで…自覚はあるんじゃないか?

と、茶番はここまでにしよう。


「では、役目を終えた私は城を去るとします」


言葉と共に踵を返して謁見の間から出ようと形だけは試みようと。

解ってはいる、彼らの悪事を握っている私を易々と逃すわけがないということを。


「そうはいかん。貴様は事を知りすぎた」


王の声。それはもうかなり知ってるよ、貴方たちの悪事の数々。


「そもそも帰れるという算段ではなかったのだろう?」


宰相の声。帰れたら帰ろうと思ってたよ?


「まあ、瞬間移動も出来なさそうな昨日のお前の魔力を見て決行したのだからな」


次期筆頭の声。あぁ、あの視線はあなただったか。


戯言は聞いているが、私は歩みを止めない。

兵士たちが止めるだろうということも解っているから。


今現在、私に残っている魔力は厳しいといえるほど僅かしかない。次期筆頭よりも低いという情けない値だ

だが、こんな魔力でも出来る事はある


「………」


魔力を練って。発動のキーをオンにするだけ。そんな簡単な作業…準備は全然簡単じゃなかった。

前から自分が使える魔力の総量などの計算や自分が使える魔法の中で最善な物の選択。足りない魔力を補う為の陣の設置…等々。

そして『消えて欲しく無い』『消えるのは勿体無い』『罪が無い』人々の城外への避難指示の確立。これが一番無茶だった…私の言葉を聴かない人は仕方ないと諦めもした。


僅か過ぎる魔力に笑い声が聞こえたが無視。

結局はキー発動に必要な魔力さえ残っていればいいのだから。


と、無言で数名の兵士に止められる。いきなり刺されないだけでも儲けものだ


「ふぅ、私も無様に生きようとは思っていませんが。せめてもの罪滅ぼしをさせて頂きますよ」


最後の言葉として残す言葉がこれで良かったのか?と後で思うかもしれない

仕方ない、時間が無い。昨日までで準備が全て整ったのさえ奇跡に近いのだから


第1キー…発動成功。城のあちこちで魔力が突然生まれることに気付ける人はどのくらいい居るかね?


「って、何だ!? くそっ、お前らそれをさっさと殺せ!!」


ん、次期筆頭は気付いたか…これくらい気付いてもらわないと…なっ!


「…っぐ…」


第2キー…発動。これで第2王子と第2皇女…私が家庭教師をしていた子達の部屋に魔力が生まれる…突然の痛みに耐えながら成功した私を自分で褒めたいと思う。しかし、私の命はもう長くは無いな…後少し…


「……ぁぁ、セラ、後は宜しく……」


第3キーを発動……し。私の意識は消えた。



********



その日、ゼスト王国へと天から光の柱が落ちたという現象が世界のあちこちで観測された

ゼスト王国の民はただ王城が光に包まれたという証言しかなかった


数日後、シヴェニア聖教国が強襲。ゼスト王国が滅んだ際に王城内に一切の人物が消えていたという声明があり、消えたゼスト王国という謎が残る事になった

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