いつか別れてしまう君と
僕には年の離れた妹がいる。
父の再婚相手の連れ子だ。
ある日実家に帰省すると
5歳くらいの女の子が
リビングでボール遊びをしていたんだ。
父の付き合っている人の娘。
そう気付いた自分がどんな表情をしたか覚えていなけれど
小さな女の子は一人で寂しそうにビニールのボールをついていた。
まだこんな小さいのに部屋には父も誰もいなくて
「一人なの?」って聞いたら
「うん」と言って
それがあまり寂しそうだったから
一緒に飼い犬の散歩に行くかい?と声を掛けてみたんだ。
庭に出て飼い犬にリードを付けて
うろちょととすばしっこい柴に翻弄されながら
ろくに舗装のされていない田舎道を二人と一匹でてくてく歩いた。
小さな女の子がうつむきながら話してくれた
幼稚園でいじめられるという話を聞いた時の
胸の痛みを今もよく覚えている。
段々と歩幅が小さくなってったから
最後はみんなでかけっこした。
それから帰省するたびに
あの子と顔を合わせていたけれど
年齢が上がるにつれ
笑顔が増えて
僕はそんな変化が嬉しくもあり
いつかを想像して寂しくもなった。
今はもう、あの子もとうに二十歳を超えて
笑顔の似合う女性になった。
先日久しぶりに実家に帰った時
年老いた父と妹と、同じテーブルを囲んだ。
父の再婚相手の淹れてくれたコーヒーを飲みながら
三人の近況なんかをぼんやりと聞いた。
父をはさんだ繋がり。
いつか父がいなくなったら
この子との繋がりは切れてしまうのかな。
そんなことを考えながら少しだけコーヒーを残して。
また顔を見せてね、と手を振る君に
笑顔だけ残して背を向けた。
玄関を出るとその冬初めての雪がちらついていて
寒空を見上げて目を細めた。
僕はコートの襟に顎を埋めると、いつか歩いた田舎道を一人帰った。




